ぐちゃぐちゃな部屋を片付けると決めるまで

とりあえず 鳴

第1話

 ぐちゃぐちゃな部屋とはどんな部屋か。


 物が散乱している? 様々な物が大量に置いてある?


 ぐちゃぐちゃの定義は人それぞれだろう。でも、ぐちゃぐちゃな部屋に住んでいる人はみな同じことを言う「どこになにがあるかは分かってる」と。


 かく言う私もそうだ。私にはどこに何があるか分かっている。


 なのに母親には「部屋を片付けろ」と毎日のように言われる。


 ほんとに分かってない。私からしたら片付いているし、それに片付けたとしてもまたすぐにこうなるのだから意味がない。それにやれと言われたらやる気がなくなる。


 そんな私が今していることは、宝探しだ。


 宝というのは明日提出の課題のプリントだ。


 何日か前に机の上に置いたはずなのにどこにもない。


 認めよう。私の机の上は確かにぐちゃぐちゃだ。プリントは乱雑に置かれ、様々な小物も置かれている。


 一番手っ取り早い解決法は机の上の物を全て片付けること。


 ただそれには問題がある。


 めんどくさい。


 何がめんどくさいかと言うと、まず今私は机の前につま先立ちで立っている。


 理由は足元に物が置いてあるから。


 つまり、机の上を片付けるにはまず足元を片付けなければいけない。


「どうしたものか」


 とりあえずつま先立ちに疲れたので、私の部屋で入口以外で唯一物が置いてないベッドに向かう。


「ここで考えてても仕方ないんだよね」


 貰ったその日に机の上に置いたから、もちろん課題は白紙である。


 だから見つけるだけでなく、課題をしなければいけない。


「うん。諦めよう」


 あの時机の上に置いた私を恨んで、諦めることにした。


 別に課題一つ出さなかっただけで死ぬ訳ではない。


「さてさて今日は何をするか、な?」


 私がスマホの画面を覗き込む瞬間に何かが見えた。


 きっと気のせいだ。そうに決まっている。


 私はそう思いつつも、何かが見えた場所に視線を向ける。


「そうか。そうかぁ」


 私が部屋を片付けようと決めた瞬間であった。

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