付喪神の言い訳 作:イト(第4回空色杯応募作品)

江葉内斗

例えば駅前ドラッグストアの倉庫のシャッターに意思が宿るとしたら

 もういやだ!!

 こんな人生(?)もういやだ!!

 毎日毎日、開いたり、閉まったり、開いたり、閉まったり、開いたり閉まったり開いたり閉まったり開いたり閉まったり、おんなじことの繰り返しでもういやだ!!!


 ぼくはシャッター。駅から歩いて五分の所にあるドラッグストアの倉庫のシャッター。

 ただひたすら店員さんに開けられたり、閉められたりするのがぼくの仕事。

 それだけがぼくの人生。

 ぼくはもっと広い世界を見てみたいのに!!

 でも、ぼくシャッターだから、ここから一歩も動けないの。

 ああ……このままぼくは、ずっとここで開いたり閉まったりして一生を過ごすのかな……

 いっそのこと、地震でも起きないかなあ……そしたら楽になれるのに……



 あれ? 僕の足元から子犬の鳴き声が聞こえるぞ?

 こんなところに小さな子犬がいるじゃないか!

 かわいそうに、今夜は雨も降ってるし、寒いだろうね……

 よし、ぼくがなかに入れてあげよう!

 ほら、今開けてあげるから、雨宿りしな。

 勝手に開けたら怒られちゃうかな? ……まあいいか。



 そろそろ朝かな……?

 雨もやんだし、子犬を外に出してあげよう。

 お、元気に出てきたね。もう大丈夫かな?

 またいつでも来てねー!!

 ……ふう、なんか久しぶりにすっきりしたぞ。

 もうちょっとだけ頑張ってみようかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る