第10話 イサカイ【ASMR】/絢辻さんに保健室へ連れ込まれ問い詰められる
○輝日東高校保健室・夕方
#保健室に入るふたりの足音。
詞
「失礼します。……よし、案の定誰もいないわね。」
#扉を閉めて鍵をかける音。
詞
「あたしじゃ満足できない? 棚町さんのどこがいいの? 言って。」
#え? 別にそんなつもりないよ? と主人公。
#ドン! と主人公を壁に押しつける詞。ネクタイを掴み、グッと引っ張る。
詞
「あたし、嘘をつくのは別に嫌いじゃないけど、嘘をつかれるのは大嫌いなの。
「特にあなたには」
#だから嘘じゃないって……と主人公。
詞
「ずいぶんと楽しそうに話すのね、棚町さんとは。
「あたしといるときよりずっと」
#それは違う……と言いかけると、ビンタをされる主人公。
詞
「あたしが話してるの。黙って聞いてなさい。」
「さっきもふたりでずいぶん仲良く話してて。」
「楽しそうね、どうせあたしへの悪口で盛り上がってたんでしょう?」
#だからそれは、と反論しようとする主人公にさらにビンタ。
詞
「うるさいって言ってるでしょう。」
「はっきり言いなさいよ、棚町さんのここがいいって。」
「楽しそうな友達がたくさんいるところとか、気安く話せるところとか。」
「こんな風に叩かれないところとか、正直に。」
「(自嘲気味に)言ってくれれば直すフリぐらいはしてあげるわ。」
「本気でなんてやらないけど。安心して、人を騙すのは得意なの。」
「あなたぐらいすぐにだませるんだから。
「ほら言いなさいよ、あなたが満足するような彼女ゴッコをしてあげるわ。」
#主人公、詞をベッドに押し倒す。ベッドが軋む音。
詞
「……!」
「ベッドに押し倒したりして、タダで済むとは思ってないでしょうね?」
「あたしが大声で悲鳴をあげたら、あなたの人生終わりよ。」
「ほら、どうせ何もできないくせに。」
「黙ってないでなにか言い訳のひとつでもしなさい……んっ。」
#詞の口をキスで塞ぐ主人公。
#詞、口を離してから。
詞
「……どうして、キスなんか。」
「あたしを見ているとドキドキするから……?」
「じゃあ、棚町さん相手だとドキドキしないの?」
「キスもしたくならない?」
#もちろん、と答える主人公。
詞
「嘘。信じない。」
#主人公、詞をハグ。衣擦れの音。
詞
「あのね、急に抱きつかないで。」
「……ね、あなた、すごい鼓動が速いわよ。ちょっと、大丈夫?」
「あたしと抱き合ってるだけで……こんなになるの?」
#詞、主人公の鼓動に耳を傾ける。少しの間。
詞
「心臓、すごい音。うるさいくらい。」
「……それに、この匂い。あなたの匂い、すっかり覚えちゃった。」
「(うれしそうに)やだなぁ、こんなの。」
「でも、おしまい。」
#身体を離す詞。
詞
「なに? そんな切なそうな顔しちゃって。」
「ね、あたしを信じてるなら、目をつむって。」
#素直に応じる主人公。
詞
「あなた本当に単純ね。何かされるとか思わないの?」
#何をされたっていいよ、という主人公。
詞
「《何をされたっていい》か……本当にバカね、あなたって。じゃあ、お望み通りに。」
#詞、キスをする。
詞
「ん……。」
「あなたが本気なのは分かったわ。」
「でも……あたし、負けず嫌いなの。」
「あたしの方がもっと本気だって、分からせてあげる。」
#詞、主人公を押し倒す。ベッドが軋む音。
詞
「何をされてもいいって言ったわよね? ……覚悟なさい。」
《第11話へ続く》
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