ぐちゃぐちゃだ

三夏ふみ

ぐちゃぐちゃだ

。かき混ぜたプリンを一口ほうばる。


そうだ、アイツが悪いんだ。


無意識にもう一度かき回して、流し込む。


そうだ、そうに決まってる。アイツが悪い。


2つ目のプリン。蓋を剥がすと、またかき混ぜる。


アイツが悪いんだ。



その光景を見た時、世界が固まった。その世界を2人だけが笑いながら歩いていく、色彩鮮やかに。他はすべて灰色に染まって崩れ溶ける、私も。


3つ目のプリンを胃に流し込む。


なんだよ、なんなんだよ。よりにもよってなんで佳奈なんだよ。


アイツの横で笑う、幼友達の横顔も灰色の世界に溶け出す。


どいつも、こいつも、ふざけやがって。なにが応援するだよ。どこをどう応援するつもりだよ。


菓子箱を取ると乱暴に開けて中身をむさぼる。ベッド前のお菓子の山が崩れ落ちる。


どうせ、アイツが言い寄ったんだ。確かに私より綺麗で、頭がよくて、皆に人気で、自慢の親友だよバカヤロ。


次々と開封されていく罪なきお菓子達。


しかもなんで、なんで誕生日の前日に私の周りをウロウロしてんだよ。当てつけか?自慢か?宣言か?なんなんだよ、ひっそりしてろよ。


特大のポテチ袋を手に取り左右に引っ張る、が、硬い守り。


テストの点が悪かったのも、犬に吠えられたのも、自販機にお金が吸い込まれたのも、階段でコケたのも、お気に入りのマグカップを落として割ったのも、弟のおできが酷くなったのも、お母さんのプチ整形が微妙に終わったのも、お父さんが禿げてるのも、このポテチの袋が開かないのも。全部。全部。全部。


ぜんぶ、アイツが悪いんだ!!!


破裂音がポテチを嘘みたいに舞い上がらせ、スローモーションでベッドに降り落ちる。



ばかみたいだ。


窓を開け、大量に降り注いだポテチを布団から払い落とす。


ほんと、ばかみたいだ。


ぱらぱら落ちる、ポテチ。ぽとぽと落ちる、涙。


「……」


春の夜風に顔を上げて、鼻水をすする。



「おーい、笠原。おーい」


まぼろしみたいにアイツが、大きく右手を振っている。後ろ手には晴れやかな色と紙袋。


「おーい。おーい」


両手で大袈裟に顔を拭うと、確認もしないで部屋を飛び出る。後ろからはアイツの呼ぶ声がまだ聞こえてる。私は一足飛びで階段を駆け下りる。


ほんとうに、ばかみたい。



淡い月明かりが照らす春の夜に、はにかむ笑い声。

私達はいつだって、

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ぐちゃぐちゃだ 三夏ふみ @BUNZI

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