なんていうか、人生、って感じ

彼岸キョウカ

 

 部屋を、片付けようと思う。


 部屋の乱れは心の乱れとよく言うけど、それって部屋が乱れるのが先か、心が乱れるのが先か、どっちなんだろうね。そんなどうでもいいことを考えられるくらいには暇なんだけど、やることはたくさんだ。


 因みにあたしの部屋と心は言うまでもなく、それはもう、ぐちゃぐちゃである。


「あー終わんねぇー」


 最早何から片付けたら良いかわからないくらいに汚い家の中を、ゴミ袋を片手にぶらぶらする。鼻水が染みたティッシュとか、絶対に必要のないであろう広告を拾っては、ゴミ袋に放り投げた。


 29歳。独身。彼氏なし。


 毎日家と会社の往復、寄り道はコンビニ。就職を機に引っ越したので、友達もいない。おまけに趣味もない。家にいる間は適当にテレビをつけて、ぼーっとしている。SNSは疲れるから、ほとんどしていない。何が楽しいんだよ、こんな人生。


「うわ……これって……」


 物の山から、3ヶ月前に別れた彼氏とのツーショット写真がでてきた。別れたらすぐ捨てろよ、気持ち悪い。


 てかなんでこいつと付き合ったんだっけ……。あー、仕事終わりにストレスで頭が爆発したから一人で呑んでたら、声かけられたんだよな。カメラが趣味って言ってて、付き合うまでのデートでは風景をよく撮ってた。でも付き合った途端にあたしの写真をたくさん撮り始めて、しかもそれを自分のSNSにバンバンあげてたんだ。「君が綺麗だから、こんなにいいねがつくよ」って言われて、気持ち悪くなってすぐに別れた。あたしを承認欲求を満たす為に使うなボケ。


 思い出したら腹が立ったので、思わずビリビリに破く。紙屑と化した過去が、床に散らばった。


「サイ、アク……」


 なんでゴミ袋の中で破かなかったのか。誰がこの紙屑拾うと思ってんだよ。あたしだよ。


 あー毎日美味い物食って、気がすむまで寝て、だらだらテレビ見て、可愛くメイクして、疲れない毎日を送りたいわ。


 

 ……猫になりたい、にゃあ。

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