こんな私の近況報告

有宮旭

こんな私の近況報告

…あぁ、待ってくれ、どうせページを開いたんならそのまま閉じないでくれ、「ぐちゃぐちゃ」というタグでの近況報告だ、内容はおおかた外れてないしオチも予想通りのものだろう。知ってるよ自分語りの話は長いって。それでもどうか俺の話を聞いてくれないか。

俺は今アラフォーで、実家に身を寄せている。拘束が昔から厳しかった両親と弟二人、そして発達障害を抱えている娘が一人いる。…そう、いわゆるシングルファーザーというやつだ。


仕事は医療法人の中のショートステイで、名義上は管理者となっている。あくまで名義上で、実際の立ち位置はというと上からは「お前じゃ力不足だ」と言われ続けて早や数年、法人から送り込まれた「副施設長」が取り仕切っている。…まぁその「副施設長」も3代目なのだが。どれだけ法人がブラックなのか言わずもがなである。

…うん、言いたいことはわかる。言いたいことはわかるがあえて言わせてくれ。俺の職場自体がまず「ぐちゃぐちゃ」であり、俺の机の上も書類で「ぐちゃぐちゃ」だ。デスク回りを他のスタッフに勝手に整理されることも数回あったが、自分ではどこに何を置いたかわかってる上での机ぐちゃぐちゃなのであり、勝手に整理されると逆にどこに何が移動したかわからない。「あーもう!」って叫びたいのをぐっとこらえる。


シングルファーザーと前述したが、結婚当時はアパートを職場の近くに借りていた。借りて数年、妻は「障害児をみてられない!」と勝手に家出し、勝手に俺が悪いことにされ、離婚届を書かされた。男手一人で、しかも介護職の中間管理職である。娘は当時保育園に通っていたが、それで生活ができるわけがない。思い出のあるアパートをそのままに、実家に身を寄せたのだ。

…勘のいい子は嫌いだよ。あぁそうさアパートの中が「ぐちゃぐちゃ」さ!実家に身を寄せてからもアパートの契約はそのまま野放しにしていた。毎月6万近くをどぶに捨てるような生活は当然親にとがめられる。とがめられ続けて数年だ。

親から逃げるようにアパートで1~2年は休日を過ごしていたが、それもやめて数年、ようやくアパートを引き払う決心をして片づけ始めた。しかし元妻は自分に都合のいいものだけ持っていき、子どもの遊具や結婚式の思い出まで置いていきやがった。

レンタルボックスを借りて自分の趣味で集めたものをその中にしまい始めたが、これがまたキリがないんだ!どうしてこうオタクって記念に買うだけ買って断捨離ができないかね。それも缶バッジからポスターに至るまで、片づけるジャンルが幅広い。一番多いのがクリアファイルだが、あれの見やすいしまい方がどうしても思いつかない。誰か教授してくれ。


アパートを片づけ始めたきっかけは、今の仕事の休職だ。心療内科に通って十数年、ずっとうつ病の診断をされて薬を何種類も飲んでいる。今年に入ってからは法人のトップから毎週お小言を貰い続けている。俺が3年前に過労でてんかん発作を起こして救急車騒ぎになったことを忘れているんだろうな、その後3か月うつ病診断で休職したことも。っていうか俺がうつ病だって知っててお小言を言ってるからタチが悪い。

心療内科医からは「とにかく休め」と言われているが、人材不足の介護業界で代わりになる人材などいるわけもなく、目からハイライトを消した状態で仕事をしていた。健康診断では高血圧に心電図異常、挙句の果てには血尿と肝機能障害で病院を受診するように言われた。おい原因がどこにあるかわかって言ってるのか。

ところがそれが良い方向に変わった。しょうがない、と休みを削って病院-と言っても医療法人で働いているので自前の病院だが-を受診した時のことだ。医者から言われた。「あなた、肝機能の値がちょっとレベルを超えてる、休んだ方がいい」と。うちの病院は経営と医者は別ベクトルで動いている。医者は経営の、つまり法人のトップのことを差し置いて休んだ方がいいと言ったのだ。

そこから先の行動は早かった。心療内科に無理矢理受診予定を組んでもらい、休職のための診断書を作ってもらった。心療内科医も心療内科医で、「やっと休めるな、休職は何か月でもいいよ」と言うレベルだ。とりあえず2か月、それ以上もありうる、という形を作った。うつ病に肝機能障害までくっついた診断書だ、法人も何も言えない。自業自得だ、ざまぁみろ。頭の中の「ぐちゃぐちゃ」が少しすっきりした。


喜んだのは束の間だった。次の週で肝臓周りを診るための腹部エコーを実施したのだが、時間がやけに長い。その結果をもとに医者から言われた言葉に、思わず耳を疑った。「あなた、尿管結石で腎臓が膨れてる、泌尿器科の病院に診断書を書くから受けてきなさい」と言われたのだ。あ、ちなみに肝臓は中程度の脂肪肝だって軽く言われた。

いやいや、そんなのは望んでない。望んでないが紹介状を書かれるくらいのレベルなのだ、受けないわけにはいかない。紹介状を持って別の病院に行き、CTやレントゲンを撮影した結果、泌尿器科医に言われたのは「1cmくらいの結石だね、入院してレーザー手術が必要だね」という言葉だ。

いやいやいやいや、血尿がここに繋がってくるのか。確かに過去に尿管結石で病院に運ばれたことはある。腰を襲う激痛は、出産時の痛みよりも強いらしい、声も出ずただただ激痛にもだえ苦しむしかないのだ。それでも、最終的には膀胱を通じて先っぽからコロンと出てきた。なんの先っぽとか言わせるな、セクハラだぞ。

ただ、大きさが1cmとなると話は別だ。そんなものが先っぽから出てこれるわけがない。今までのは数mmだったから出てこれたのだ。もうあんな激痛は経験したくない。今日、入院と手術の同意書を書いてきた。

脊髄麻酔で下半身を麻痺させる手術らしい。麻酔を打たれた経験はあるだろうか。俺は高校生の頃に人差し指を複雑骨折をして、整形外科で肩に麻酔を打たれたことがある。激痛だ。痛みのあまりうめき声しか出ない。それを10本も打たれたのを覚えている。今度はそれを背中から脊髄に打つというのだ。考えると涙が出てきた。考えないことにしよう。

ということで、頭の中だけでなくおなか周りの内臓も「ぐちゃぐちゃ」という話だ。


…で終わらないから困る。おい2600文字とか言ってるぞ、多分大半の読者の方々は離れたに違いない、違いないけどどうせなら最後の「ぐちゃぐちゃ」を言わせてくれ、俺と心中してくれ。

3人兄弟、という話を冒頭にした。先月のある日、仕事から帰ってくると末弟が居なかった。恥ずかしながら、3人兄弟で働いているのは俺だけだ。下の2人は自宅警備員をしている。なんなら両親がまだパートで働いて収入を得ている。父親なんか俺と同じくらいの給料を持ってくる。70超えたのになんだそれ。

閑話休題。末弟が居ないことを家族に聞くと、なんと入院したらしい。いや、朝まで普通にいたやんけ。…いや、昼夜逆転してる生活を送ってるのが末弟なので、正確には前夜だが。それも市内の一番大きい病院だ。何が何やらさっぱりわからぬ。

数日経って末弟は退院してきた。どうやら病院が満床だからと追い出したらしい。まぁそれほどの軽症なのだろう、病気は知らんけど、と思っていた俺の耳に意外な言葉が入ってきた。

直腸がんの疑い。おいおいアラサーで直腸がんとかあるのかよ。若くしてどうのこうのなんて対岸の火事だと思ってたよ。なんでこんな身近で起こるんだよ。…ま、まぁ、それでも退院したんだ、大したことはないだろう。そう自分に言い聞かせてはいたが、母親はがんの疑いと聞いて親戚中に相談の電話をかけまくったようだ。これだから女性は電話が好きで困る、今どきはメールだろメール。

そして数週間、末弟の病気の検査結果が出た。直腸がんステージⅢ。知らない人もいるだろうから補足しておくと、がんのステージの最大値はIVだ。つまり最大値の一歩手前。病院は単に満床だからというだけで追い出しただけでなく、手に負えないというレベルと知って追い出したのだ。

もう家庭内が「ぐちゃぐちゃ」どころかしっちゃかめっちゃかである。明日は国立病院でセカンドオピニオンを受ける予定らしいが、どちらにせよ手術が可能なのは来月になるらしいとは親の話。当の本人はポーカーフェイスだから困惑してるのかもわからない。むしろ本人の口から痛いって話すら聞いたことがない。…いや普段から無口だっけあいつ。


おつかれさまでした、これで自分語りは終わりです。ここまで到達した人がいるなら褒めてあげたい。よくこんな駄文に付き合ってくれたものだ。約3500文字という数を見て、冒頭から読むのを自ら諦めた。文章全体が「ぐちゃぐちゃ」というお話でした。お後がよろしいようで。


…え、よろしくない?知らんがな、今カウンターが3600って数を刻んだんだ。

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