やちぐゃちぐ

新吉

第1話

きな粉棒のあたり

つまようじの先っぽが赤いと

もう一本もらえる

アイスの棒

あたりの三文字がみえる


缶コーヒーを飲む

数字が揃わない

また今日も778

昨日は112

おとといは554

ひとつ足りない

ひとつ多い

いっそのことぐちゃぐちゃにしてくれ


スロットも横一列に777

ラッキーセブン

うちのおばあちゃんは、セブンなんたらという

タバコを吸ってた

おばあちゃんちのにおいはセブンなんたら

七夕は7月7日

たなでナナでしちでなのかでセブン

揃えばもちろんいい気分

なかなか揃わない

もう一本はなかなかあたらない

ウルトラマンも助けに来ない


虹の色は三色なんだよ

違うよ虹色だよ

七色じゃない

揃えたいのかバラバラにしたいのか

足並みは呼吸は髪型は服装は

気持ちよく揃っているのは気持ち悪い

ぐちゃぐちゃな世の中は

ちぐはぐであぺとぺなくらいでいい

やちぐゃちぐで大丈夫


あたりが出るまで粘っていた

あたるまで繰り返した

あたまが固まっていた

ぐちゃぐちゃのプライドと

からからの財布と

どろどろのユニフォームと

ぐんぐん沈む夕日と

ぐらぐらな視界と

どんがらがっしゃん

からんからんと鐘が鳴る


当てるのは諦めなよと囁いてくる

ナナメになりながら偏ってくる

揃わないままの子供が僕に聞いた

子供の頃の僕だ

なんにも考えていない

恐ろしいくらいの混沌

ぐちゃくちゃゆえの純粋


どうしてそんなにぐちゃぐちゃが嫌いなの?

このままでいいじゃない

バラバラでパラパラで

ぐちゃぐちゃでクチャクチャで

おんなじになることない

同調することない、同情することない

揃えることは諦めよう


そろえるといいことがある

見映えがよくなる、綺麗になる

なくさないし、みつけやすい

居場所ができる

整っていることはバランスがいいこと

乱れていない


乱れ狂い叫び、しっちゃかめっちゃかの世界

揃えて並べて、きっちりぴったんこの世界


時々整わないと暴れてしまう

時々暴れないと壊れてしまう

たまにぐちゃくちゃになろう


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