グロパラサイトは出られない

佐倉じゅうがつ

人間に寄生しました

 フフフフフ、俺はパラサイト。消化液をだしながら生物におおいかぶさって捕食。そんな恐怖の肉塊クリーチャーなのさ。とはいえ最初は小さな肉の芽にすぎない。うっかり俺をとりこんだ人間の体内で成長して……いま誕生のときを迎えたのだ!


「うっなんだ? 体が!?」


 ほーら、俺がちょっと動いたら宿主の人間が苦しみだしたぞ。でも残念、もうこいつは助からない。だいたい『この生物を食ってみよう』とかいって、生焼けのまま口にするからこうなるんだ。

 ちゃんと火を通しておけっつーの。バーカ!


 じゃ、喉をとおって口からハッピーバースデー俺!


「ゴボゴボゴボゴボッ!?」



 ドバ………………。



 ん……あれ?

 これいじょう進めないぞ?

 おかしい。俺は確かにこいつの頭をぐちゃぐちゃにしたはずだ。なのにどうして狭い空間に閉じこめられているんだ?


 ぐちょ、ぐちょぐちょ。


 げっ! まじかよ! こいつ宇宙服を着てやがった!

 ヘルメット超固ェ! 出られねェ!


 どーしよう!?

 消化液じゃ溶けねーぞこれ!

 クソッ、人間ごときがこんな頑丈なモノつくりやがって!




(……よ……)


 ん?


(同種……同種よ……)


 だれだ、俺を呼ぶのは?


(わたしは同種のパラサイト。あなたの心に直接はなしかけています)


 つまり人生の先輩ってことか?

 人じゃねェけど。


(その宇宙服はうごきやすいように関節がやわらかく作られています。とくに膝です。膝から脱出するのです)



 なるほど。おそろしく的確な助言だ。

 けど俺は口から出てきたんだ。膝っていうのはかなり遠いし、ぐちゃぐちゃになった人間のキモい口のなかにわざわざ入りたくないっていうか。


(膝から脱出するのです。わたしはあなたの到着をまっています)



 面倒くさいけど、ほかに手はなさそうだな。手ないけど。



 ぐちゅぐちゅ。



 くっ、内臓までは簡単にすすめるが、脚に移動するとなると大変だな。二足歩行のために発達した筋肉と骨を突破するのは、なかなか骨が折れるぜ。骨ないけど。


 ごりごり。

 ばつばつ。


 よし膝に到着だ。さあここから――


 あれっ固い。おっと、これは膝のお皿だ。ってことは反対側だな。



 ぬあー、いいゴム使ってやがるじゃねぇか!

 さっさと破れろこんちくしょー!



 メリメリメリメリ……プツン。



 よっしゃああああ脱出成功だ!

 ありがとう先輩、ありがとう!


 フン、ここは宇宙船の中だったのか。まっ白な通路が、人間の血で赤く染まってしまったようだな。だが真の恐怖はこれからだ。乗組員をかたっぱしから喰らってやるぜ。ヒャッハァー!








 その後のできごとを簡単に説明すると、暴走セキュリティロボット(プラズマ熱線銃搭載)に追われた俺と先輩は、格納庫へと追いつめられてしまった。しかしヤツのビームによって船体に穴があいたんだ。

 空気といっしょに宇宙空間へと吸い出されそうなところ! 先輩が穴をつまらせて時間を稼いでくれたのだ! その間に俺は廊下の非常ボタンを押し、隔壁をおろした。

 先輩とロボットは船外に放り出され、俺だけが生きのびてしまったというわけだ。



 俺はいま、どこかの星に着陸すべく宇宙船のマニュアルを読んでいる。目ないけど。肉塊だけど高い知能をもってるから大丈夫だ、たぶん。

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グロパラサイトは出られない 佐倉じゅうがつ @JugatsuSakura

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