ぐちゃぐちゃに溶けても君が好き
華川とうふ
ファミレスにて
えっ、話ですか。
僕の罪について?
いいでしょう。
ここにいてもどうしようもできないですからね。
お話しましょう。少しだけ。
最初に出会ったときはとっても綺麗だったんですよ。
女の子なら一度は憧れる姿だったと思います。
透明感があって気高くて、でも可愛らしい誰もが憧れて恋焦がれる……そんな存在だったと思います。
だけれど、時間がたつにつれてそのきらめきが消えていくというか。
どちらかというとシャープで洗練された印象だったのに、その輪郭があやふやになって溶けだして。
今となっては元の美しさも分からないくらいぐちゃぐちゃだけど。
確かほら……みてくださいよ。この写真。
とってもきれいだったんですよ。
彼女が僕の目の前に現れたときは本当に芸術品かと思いました。
でも、ほら……今となってはこの通り。
溶けてぐちゃぐちゃで何がなんだか分からないような見た目になってしまって……。
あの綺麗だったころのことを思い出すとちょっとだけ胸が痛みますね。
自分のせいでこんな姿になっちゃたなんて。
あっ、ちょっとまってください。
さっきお見せしたのは僕が写真にとったものですけど。
今度は販促ようにプロが撮影したものの写真もありました。
やっぱりとても綺麗ですよね。
どこか儚げだけれど、華があるというか。
見た人に希望とか羨望とかそういうなんというかどうしようもないようなあこがれを持たせる姿をしてますよね。
女の子らしさと女性らしさ両方を兼ね備えた魅力といいますか。
だけれど、それが今ではこんなぐちゃぐちゃなんてね。
本当に儚いものですよ。
こんなにぐちゃぐちゃになってしまって。
僕のところに来なければこんなことにならなかったんだけどね。
でも、あまりにも綺麗だったからどうしようもなかったんです。
はじめはその出会ったままの姿で残しておきたい。そう思っていたのですが、どうにも人目があるので無理でした。
美しくて口をつけることもかなわず、こんなことになってしまったのです。
こんなぐちゃぐちゃで無残な姿を人にさらすなんて生まれたときは想像もしなかったでしょうね。
えっ、なんの話って。刑事さん、そりゃあパフェですよ。
あんまり綺麗で美味しそうだから食べられなくてこんなぐちゃぐちゃに。
ああ、屋上の水のタンクから発見された女の死体。
いや……知らないですね。
どうして女だって知っているのかって、まだ検視も終わってなくて、ぐちゃぐちゃにとけて分からないって?
ぐちゃぐちゃに溶けても君が好き 華川とうふ @hayakawa5
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます