ぐちゃぐちゃ

内藤 まさのり

ぐちゃぐちゃ…と言えば…

 私は普通の中年男性で、人並みに出来ることもあるし、人並みに出来ないこともある。ただ人並み外れて出来ない事が一つある…それは部屋の中の衣服の片づけだ。


 綺麗好きな妻が、毎日のように苦言とため息をつきながらも、私の脱ぎ捨てた服を畳んだり仕舞ったりしてくれるので何とかなっている(何から何まで脱ぎっぱなしという訳ではない!…念の為)。この前振りで既にこの後私の書く内容を予測できた読書の方もいらっしゃるだろう。そう、一人暮らし時代の私の部屋の中たるや、今思い返しても〝ぐちゃぐちゃ〟という形容以外思いつかない。そんな部屋の中の脱ぎ散らかしついて、私には忘れられない思い出がある。


 それは大学時代の事だ。その当時は携帯電話などなく、北海道で下宿していた私はあまり東京の実家に公衆電話から電話する事もなく毎日をそれなりに過ごしていた。部屋の中は大学生活を初めて早々服で足の踏み場が無くなった。何故そのような状態になったのか。まず収納があまりなかった。加えて性質として畳んで仕舞うのが面倒臭かった。誰が来るわけでもないので、洗濯をして部屋干しした衣類を床に広げていくうちに足の踏み場が無くなった。

 そのような生活を続ける中、確か大学二年目の春だった。日曜日の昼前だったと思う、誰かが下宿の私の部屋のドアをノックしている。私は所属するクラブの誰かが遊びに来たのかと思いながらドアを開けた。するとそこに立っていたのは東京にいるはずの母だった。母は私の部屋の中を見るなり「なにこの〝ぐちゃぐちゃ〟な部屋の中は!今から一時間以内に片づけなさい!」とそれだけ言って私の部屋を後にした。私はその間びっくりして一言も発する事が出来なかった。それから必死に部屋の中を片付けて一時間後の母の再訪時にはなんとか部屋の片付けを終わらせた。母に聞くとあまりに連絡がない事から心配して急遽札幌まで様子を見に来たそうだ。

 それ以来、私は定期的に、部屋がある程度汚くなると一気に片づけるという事をするようになった。一度あった母の来訪が再度行われる可能性も捨てられなかったし、自分が片づける気になれば、片づけることが出来るという事も自分で確認しておきたかった。


 結婚して以来妻が部屋の片付けについてはサポートしてくれている。しかし実は私は机の上も決して綺麗とは言えない。しかし以前の部屋の片づけからの習慣で、机の上についても、ある程度汚くなるとまとめて片づける日を作って片付けを実践している。


終わり

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ぐちゃぐちゃ 内藤 まさのり @masanori-1001

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