みんなと違って

月簡

みんなと違って

 赤色と白色。これを合わせればピンク色になる。


 赤色と青色を合わせれば、紫色になる。


 けれど、茶色と黒色を合わせれば?


 黒だ。


 全ての色をぐちゃぐちゃに混ぜてできるのは?


 黒だ。




 私はぐちゃぐちゃな存在だと思う。常に心の中には感情という感情が入り交じっている。複雑な心境、と言うやつだ。


 ネットを見ていると、たまに「あなたの色診断」のようなものが出てくる時がある。やってみると、大抵黒色だ。


 腹黒いのだろうか。


 母に、「なぜ自分は多くと違って、ぐちゃぐちゃなのか」と聞いたことがあった。


 その時の母の回答は、至って単純だった。


「みんなそれぞれ個性があるんだよ」


 その時はそれで納得した。


 自分がパソコンをいじっていると、「何してるの?」と言われたことがある。見ればわかるだろうに。


 パソコンをやっているという趣旨を伝えると、疑問を顔にうかべながら「そうなんだ」と言われる。




 人間より大きい生物は、ほとんどいないと思う。だから、安心して暮らせる。稀に小さいのに人間よりも強い生物もいるが。


 そう考えると、大きさと強さは自然界では直結するのではないか、と思う。


 実際は分からないが、そんな気がする。


 今日、家の隅の方にいると、妹が「外食に行こう」と言い出した。普段は妹と喋らない。話しかけてくれたのは嬉しい。


 勇気をだして、妹と外に出た。陽の光が眩しい。痛い、とも言える。


 ずっと外に出ず、母が持ってきてくれたご飯を食べていたのだから、陽の光に耐性が着いていなくても、当然なのだろう。


 久しぶりの外食は、実際に美味しいのかは分からなかった。けれど、少なくとも、気分だけはいいものになった。


 妹に感謝する。


 だが、当の妹は「別に」というだけだった。


 帰り道を歩いていると、妹の上に、大きな影が現れた。何かがおかしい。


 そう思った時には、体が動いていた。


 妹を突き飛ばし、身代わりとなる。


 骨がミシミシ言い、激痛で意識が朦朧とする中、頭上から声が聞こえた。


「うわー、ゴキブリ踏んじゃったよ。最悪。靴に着いてぐちゃぐちゃだし」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

みんなと違って 月簡 @nanasi_1

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説