運命の先

葉舟

第1話

 光神の使徒がよりよい運命の糸を織れるように、あでもないこうでもないと糸を弄くりまわしていた。

 光神様から勇者が魔王を討伐し、建国するよつに命じら、任された運命の糸。その糸により、織られる世界を美しくしたいと光神の使徒は神経質になっている。


 その結果、運命の糸はぐちゃぐちゃになった。


 小さな瑕疵を気にして、弄くりまわした果てに、こんがらがって解けない大きな塊になっている。

 もはや糸を織るどころではない状態に、邪神の使徒は大爆笑した。


「お腹、痛い」

「お前も魔王の糸を任さられていただろ! 笑っている場合か」

「いや、だって、やらかしたのお前じゃん」


 魔王を誕生させて、勇者が出現する。邪神の使徒に命じられてお仕事はそこで終了しており、この先がどんな結果になっても問題なかった。

 光神の使徒のように美しい織なんて求めていない。だからこそ、光の使徒の好きにさせていた。


「これもうやらかした部分、切るしかないな」


 邪神の使徒が笑い混じりに告げれば、光神の使徒が怒ります。


「できるかー! この中の一本は勇者の糸だぞ」

「でもさー、切らないとムリだろ?」


 ずっと黙っていて糸を織っていた運命の女神の使徒が、笑う使徒と怒る使徒に淡々と告げます。


「切らないと無理なのは確定だ。なので、切るそばから勇者に必要な糸を優先的に繋いでいこう」


 まずは、魔王討伐に必要な糸を繋ぐ。それから、建国に必要な糸を繋ぐ。


「糸が繋がなかったら、勇者の親類縁者は全滅して、いかなる組織にも属せないぞ」


 ぼっちで自給自足の孤独死か、ぼっちで自給自足できなくて餓死が有力だと、運命の女神の使徒は告げる。


 糸を切るのは邪神の使徒、切られた糸を繋ぐのは光神の使徒。逆は光神の使徒が嫌がった。




 使徒たちは、がんばった。


「ふむ、どうにか建国できたな」

「なあ、これ、何もしなくても次の魔王誕生しそうじゃねえ?」


 魔王を討伐した後は白に近い色合いで織られるが、現状暗黒色が中心になっている。


「魔王倒すのに魔術師が必要だからって、王女の糸を使ったのが致命的だったな」

「そのせいで、勇者の嫁が魔王の娘だもんな」


 聖女でもあった王女と魔術師がくっついたせいて、権謀術数に長けた宰相になる予定が宗教のトップ。魔王の娘と建国当初からバチバチやり合うはめになっている。


「次こそは、真っ当な国を作ってみせる!」


 光神の使徒は決意を新たにする。それを、そのこだわりを捨てないと無理と邪神の使徒は笑った。

 

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運命の先 葉舟 @havune

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