絶望の果てに永遠を。

プロローグ

　あなたの言う通り、絶望を抱えて死にました。

　確かに数日前まで普通に過ごしていたんです。けれど絶望とかそういうものは、不意に後ろから突如としてやってくるものだと思うのです。構えることなんてできず絶望に捕らわれて、死んだ。

　死ぬことを決して恐れてはいけません。なぜなら人はいずれ死にます。

　死とは何かといったその問いに答えるならば、そうですね。どんな偉人も。どんな阿呆も。この世界で息をしたのなら、息を引き取るのが我々に与えられた平等。ただ時間が違うだけで。十年生きるか百年生きるか。それは誰にも分からない。

　だからこそ、人は死に恐怖する。

　矛盾していますか。ええ、そうでしょうね。恐れてはいけないものを恐れてしまうのは、人間の性なのでしょう。

　自分ではなく他人が死んでも人は恐怖する。事故。事件。病気。様々なものに対して。あるいは、死んだ者に対して。

　死後の世界があるとはいえ、それはあちらとは違う世界。転生があっても、もう二度と同じことは繰り返せない。今日と同じ日は何をしてでも体験はできません。

　人間は愚か。実に傲慢です。時を戻したくとも、蘇らせたくともそれは私利私欲のもの。他の人間のことなど考えておりません。人間は、人のことを考えているようで結局は我が身が一番。信じていた者など簡単に裏切れる。

　失礼。話が逸れてしまいました。

　死んだらもう元には戻れません。何をしても。死ななかったことにはできません。受け入れるしかないのです。

　私は受け入れました。全てを。人が犯した罪も全て許します。もう死んでしまったのです。何もならない。

　答えを出すのが遅くなってすみません。気持ちの整理がつきました。その話、引き受けましょう。絶望がこの世界を囲う前に。私に絶望を与えた世界を救うその話に。

　私の名前は──。ああ、もう、過去には戻れないんでしたね。新しい名前をください。新たに、私が私として過ごせる名を。