優秀な公爵令嬢

@mia

第1話

 今、城で働く文官の指揮系統がぐちゃぐちゃである。

 事の発端は、一か月ほど前の第一王子の病気による廃嫡だった。

 通っていた学院内で第一王子が婚約者ではない男爵令嬢と親しくしていることは、貴族の間ではよく知られていた。

 婚約者の父親である公爵が陛下に苦言を申し立てていたが、陛下の「学生時代だけの付き合いだから」との言葉で引き下がったと言われていた。

 だから健康そのものの王子の廃嫡の本当の理由が分からず、王子と公爵令嬢の婚約に反対していた侯爵は混乱していた。

 王子に別に令嬢を近づけたのは、侯爵の仕組んだことだった。

 公爵が知ることのできないはずの侯爵派の事情をいくつも知っていたと聞いたことも、侯爵が疑心暗鬼になった一因だった。

 公爵に情報を流した裏切り者と見なされて、多くの侯爵派の文官がクビになった。         

 午前中に来た仕事を午後に確認に行ったら、担当者がクビになっていたということもあったほどの急な退職もあった。

 クビになった文官は、自分が無実だと訴えたが取り合ってもらえなかった。

 新しく雇った文官の教育もあり残った文官達も仕事が進まなかったが、救世主が現れた。

 王子の元婚約者の公爵令嬢である。

 優秀だった令嬢は婚約者だった王子の仕事を肩代わりしていたので、「自分のできることなら」と文官の手伝いを申し出た。

 彼女のおかげで仕事はスムーズに進むようになってきた。

 数か月経ちやっと仕事が落ち着いた頃、新しい法律が議論されることになった。

 国王しか認められていないこの国で、女王を認めるという法律だった。

 隣国では女王が認められていたが、現在のこの国の国王には息子だけしかいないので関係のない話だと思われた。しかし、いざという時に混乱しないようにということで話し合われた。

 だがこの法律が制定した瞬間、公爵令嬢より王位継承権の順位が上の人たちの寿命が縮む事に気がついたものはいなかった。

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