第83話 遺跡の探索 #2
83.遺跡の探索 #2
【星石】を手に入れてから3日間、同じ様に【深海の遺跡】を何度も探索してもう一つぐらい【星石】でないかなーっと挑戦していたのだが全くでなかった。
ヘレナに【星石】の価値を聞いてから思い付いたのだがこれをダンジョン協会に売ればかなりの評価になる物ではと。
しかしそうは問屋が卸さないというやつか、2度目の時に出てきた敵は5メートルほどしかなく最初の時と全然大きさが違った。
最初はランダムで敵の大きさが変わるのかな?なんて思って何度か倒したのだがそれ以降もずっと5メートルほどの大きさのしか出てこず最初に出会った10メートルの巨人は出てこなかった。
1回目の宝箱からは石の剣が、2回目は敵として出てきた石像のフィギュアが、3回目は石の塊の素材がそのままゴロンと出てきた。
他にも何度も探索するうちに道中にある宝箱も見つけたのだがそれもマッスルポーズをとった石像のフィギュアだった。
特に必要な物はなかったので全部ダンジョン協会へと売却したのだがこれが意外とお金になった。
石の剣が70万、石の塊の素材が30万、フィギュアがどちらも250万で買い取って貰えた。
フィギュアだけど、何でもダンジョンではこういったフィギュアやミニチュアなどが出る事がありそういったのを専門に集めるコレクターがいるらしく、意外と高く買い取って貰えた。
こんなよくわからない物を集めるなんて俺には理解できない世界だけど世の中色んな人がいるんだなぁと思った。
そんなこんなで何度か周回をした後、もう【星石】は出ないんだろうなって考えて先に進む事にした。
◇ ◇ ◇ ◇
「彫刻の装飾が増えてるな」
中ボス部屋を通り過ぎた先は同じような通路だったのだが少しだけ壁に装飾が増えていた。
花のようなものだったり、なにかの人物だったりと色んな物が彫刻されていた。
「お、早速敵か」
【気配感知】と同時にかすかな振動音で敵が近づいてきているのに気づいた。
「今度のは………同じ石像だけど鎧を着ている?」
現れたのは石像ゴーレムなのだが裸ではなく鎧を着て武器も持っていた。鎧は古代ローマっぽいやつでタンクトップみたいな袖のないやつで頭にはとさかみたいなのがついている。
相手側もこちらに気づいて構えたのを見て【空間庫】からアサルトライフルを取り出し撃っていく。
「む、2マガジンでもダメか」
マガジンを2つ使い切っても石像は倒れることなくこちらへと突っ込んできている、どうやら深く潜る事で敵も強くなってきているようだが当然の事か。
「3マガジンでやっとか」
3つ目のマガジンを撃ち切りやっと石像ゴーレムの顔を破壊できた、ヘレナの操る【赤雷】に足止めをしてもらっていたので楽に倒せたがそろそろ空間拡張マガジンを買うべきか迷うな。
1マガジンに100発はいる空間拡張されたマガジンだが便利な分不安な所もある、それは今自分が何発撃ったかの計算がしづらい所だ。
後は単純にリロードする動作が好きなのでその機会が減るのがちょっと嫌だなって思って今も使えてないのだがこの先も1マガジンで倒せなくなってくるとリロードの隙が怖くもなってくるから悩ましい所だ。
悩みながらも倒した石像をGPへと換えていく。
「23万GPか、ちょっと上がってるな」
鎧分か武器分か強くなっているからか理由は分からないが裸の石像よりは高く売れるようだ。
『マスター』
「ん?何?」
『どうしてアサルトライフルで戦っているのですか?』
「どうしてって………特に理由はないけど?」
『このダンジョンは洞窟型で狭いですしアサルトライフルよりもショットガンの方が効果的そうですがどうですか?』
「ショットガン………あっ完全に存在を忘れてたな」
ヘレナが突然話しかけてきたかと思えばショットガンはどうですか?と言ってきた。
そうだよ、ショットガンだよ。アサルトライフルで何とかなっていたからその存在を完全に忘れていたけどショットガンの方がこういった狭い所では便利じゃん。
【空間庫】から〝ショットガンGolf〟を取り出す。
「そういえばこんな見た目のを買っていたっけ」
一番最初はスタンダードな所謂警官がもっていそうなショットガンを使っていてその次にAA-12というドラムマガジンのフルオートショットガンを使っていた。
そしてGolfシリーズを買う際に何となくショットガンの別の見た目のを見てていいのを見つけたと思って変更したのだ。
それがArmscor VR80というショットガンになる。
見た目がアサルトライフルみたいにスタイリッシュで完全に見た目だけで選んだショットガンだ。
色は黒でサイレンサーも取り付けて弾は12ゲージのSlug弾、マガジンに入ったやつだ。
対物ライフルにはサイレンサーが取り付けれなかったので音がうるさかったがショットガンなら平気なはずだ、なぜか【GunSHOP】のサイレンサーは消音性が強くその効果が劇的に表れる。
別に対物ライフルにサイレンサーが取り付けれないってわけじゃないのだが何て言うか対物ライフルにはつけたくないっていう謎のこだわりがあるだけだ。
変なこだわりなのは自覚している、うん。
「お、丁度いい所に次の敵が来たな」
Armscor VR80の見た目のショットガンを手に持ち色々と確認し終わった後丁度いい所に【気配感知】に敵が反応した。
通路の奥から現れたのは先ほどと同じ鎧を着てその手には武器をもっているやつが2体だ。
「ヘレナは右側のを任せた」
『はい』
敵との距離は60メートルほど、この距離なら十分射程圏内だ。ショットガンを構えて撃つ。
「おぉ、やっぱ強いなショットガン」
Slug弾はやはり強力で、一撃で石像ゴーレムの顔の半分を吹き飛ばした。だがまだ動いているので追加で撃ちこんでいく。
2発3発と撃ち込むと流石に耐えれなかったのかそのまま石像ゴーレムは崩れ落ちた。
ヘレナの方を見るとそっちも丁度トドメをさす所だったのかうまいこと石像の顔を破壊できている。
動かなくなった石像ゴーレムを回収して1体はGPへ、もう1体はダンジョン協会へと売却する事にする。
ちなみにこいつ1体で状態にもよるがこの頭が無くなったぐらいなら60万ぐらいになる。売却する時に聞いたのだが無傷の完全な状態なら3桁を越えるらしいが石像ゴーレムをどうやって無傷で確保するのかわからなかったので無理だ。
もしかしてそういったスキルがあるんだろうか?傷つけずに倒せる何かが。
そんなこんなでショットガンに持ち替えてから何度か戦闘を繰り返した、そして思ったのは随分と戦闘が楽になったなという事だ、アサルトライフルの時はステータスの力でほぼブレさせることなくフルオートで撃てるとは言っても撃ち切るまでそこそこ時間かかるのでどうしても時間という隙が出来る。
ショットガンに変えてから戦闘時間が短くなったのでその分行動できる時間が増えた。それに弾込めもマガジンのショットガンなので変えるだけで済むのは楽だ。
「これで3体目っと」
奥に進むにつれて同時に出てくる数が増えてきた、今は5体同時に出てきて少し焦ったが割と楽に倒せた。
ヘレナが操る【赤雷】も武装を取り替えてショットガンを1つ積んだのでそのおかげもある。
「さて、次はこの部屋か」
倒した石像ゴーレムを回収して次に進むのは通路で見つけた両開きの石扉だ、さっきはこれを発見したところで敵が出てきたので戦闘中もちょっと気になってた。
扉に装飾はされているが何か魔物の絵が彫られているわけじゃないのでボス部屋ではなさそうだ。
両開きの扉を開けて中へと入っていく。
「ここも広間になっているのか」
扉の奥は中ボスっぽいやつがいた所と同じ様に広い部屋になっているのだが違う所もある。
広い部屋になっていて柱が建っている所までは一緒なのだが壁に石像ゴーレムの彫刻が彫られている、それも沢山、何段にもなって上の方見えないようなところまで全部びっしりと彫刻がされている。
「嫌な予感がするなぁこれ」
映画とかアニメ漫画でよくあるやつだこれ、絶対壁のやつ動くだろ。
まぁそういう予感がしていても行かないという選択肢はないんだけどね。
入口で立ち止まっていたがそこから進み奥へと入っていく。
「やっぱりな」
進んですぐに壁に彫刻されている石像が動き始めた。ひとつひとつの動きだす音は小さい、だがそれも数十か数百かそれだけの数になると音同士が増幅し合いものすごくうるさい。
「音が物凄くうるさいな」
『防具の機能を使えば音を小さくできますがしますか?』
「そんなことできるの?少し聞こえてくる音量を下げてもらえると助かる」
『はい、これぐらいでどうでしょうか』
「完璧」
ヘレナのお陰で先ほどまでの耳元で洗濯機を鳴らされているかのような音が小さくなり普通に聞けるレベルの音になっていった。
防具にそんな機能があったのならもっと早く使えばよかった、対物ライフルを撃つ時とか。でもそうするとこっちの聞こえてくる音が小さくなるだけで結局は発砲音で敵が寄ってくるし意味がないのかな?
まぁいいや。
パラパラと石像の欠片が落ちてきて、次に石像本体が落ちてきて。広い部屋が石像で埋まっていく。
「ヘレナ、ここなら【不壊】を出せそうだ。素材の事は考えなくていいとにかく倒していってくれ」
『了解』
話している間も次々に敵が増えていく、幸い部屋が思ったよりも広くこれなら【不壊】を呼び出しても十分戦闘する空間はありそうだ。
【格納庫】から【不壊】を呼び出しておく。
【不壊】を呼び出しつつショットガンで近いのから撃って倒していく、ゆっくりしている暇はないので1発1発確実に撃つのではなくひたすら撃てるだけ撃っていく。
これだけの数の敵がいるんだ、狙いが正確でなくて外れたとしても他のやつに流れ弾で当たっていくだろう。
手前、右のやつにショットガンを5発。狙いは頭付近を何となく撃つだけだ。
すぐに弾が尽きてリロードを挟まなければいかなくなるがスキルアーツである【リロード】を使い自動で済ませる、その間に手榴弾を取り出し投げて時間を稼いでおく。
手榴弾を2つも投げればリロードが終わっているのでそのまま射撃を再開する。
今俺の立ち位置は先ほど入った扉を背にして戦っているのだが主に右側を倒していっている。
左側はヘレナ操る【不壊】が盾を構えてそのままひき潰していっている。
背中に取り付けた【多連装ミサイルランチャー】からは時々弾が発射されて石像ゴーレムが派手に吹き飛んでいるのが見える。
今の時点で戦闘時間は10分ほどだろうか、それでもまだ降ってくる石像ゴーレムが止まらない。一体何体いるのか。
ちょっと先行きが不安になる戦闘が始まった。
◇ ◇ ◇ ◇
「はぁ………はぁ、あー疲れた………」
途中何度も戦闘をヘレナに任せて休憩して、そうして何度も何度も同じことを繰り返す事何分だろうか?もはやどれぐらい戦っていたかわからない。
途中でショットガンの弾が切れてマガジンに入れている時間も無く、アサルトライフルに持ち替えてそれでもまたマガジンが切れて、最終的に持っている武器を次々と出して戦っていた。
もしかしたらここって無限湧きなのかも?とか思っていたが次第に降ってくる石像ゴーレムが減っていき最後の方には7メートルぐらいのやつだけになってた。
気付いていなかったがどうやら色んな大きさの石像ゴーレムがいたようだ。最後の最後になって周りを見る余裕ができてから気づいた。
『大丈夫ですか?マスター』
「飲み物が欲しい………」
ずっと動き続けて喉がからからだ、スポーツドリンクとかを一気したい。
防具内で汗がだらだらだ、後で着替えないと。
「取り合えず回収ドローンを出しておこう」
『はい』
形が残っているやつがどれだけ残っているかわからないが一応回収しよう、まぁ当然な話しなんだが敵である石像ゴーレムは倒されていった他の石像ゴーレムの状態など気にしない。
動かないならと踏みつぶして、邪魔なら踏みつぶして、そんな中で戦闘していた。
「そして、当然ながらこういう部屋ならあるよね宝箱」
徒労に終わらなくてよかった、視線の先、広い部屋の一番奥にそこそこ大きな宝箱がいつの間にか出現していた。
これだけ敵を倒したんだ、中身に期待してしまう。
横幅2メートル、縦に1メートルもある宝箱が目の前に鎮座している。装飾も豪華だがこれはイミテーションなんだよな。
箱についている宝石のどれもが偽物で価値がない。
まぁ外箱何てどうでもいいんだ中身だよ中身。
「何だろなーって何だこれ?」
宝箱を開けると中に入っていたのは卵型の石、大理石のようなつるつるの綺麗な石だがなぜ卵型?
装飾も綺麗に彫られているが、これって美術品とかか?大きさは両手で持ってそれでもぎりぎりぐらいのかなりの大きさ。
「美術品とか価値が分かりにくいのくるとリアクションに困る」
何か武器とかスキルオーブとかそういう分かりやすいのならもっと喜べるのに美術品って………何とも言えない。
敵をいっぱい倒して経験値が稼げたと考えればいいか。
「あー、着替えよ」
汗でびしょびしょの服を着替えて飲み物のんでちょっとのあいだ【野営地】でのんびりしよう流石に疲れた。
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