第63話 【真・水晶の洞窟】
63.【真・水晶の洞窟】
『目標水晶トカゲ5匹を確認、殲滅します』
ヘレナがそう言うと【赤雷】から銃口が飛び出てきて銃声が5つ聞こえたかと思うと僅かな音を立ててから水晶トカゲが動かなくなる。
トカゲが水晶になるのを見届けてから【格納庫】から回収用ドローンと荷物持ち君を出動させる。
現在地は【水晶の洞窟】の9層で、ここに来るまでずっとヘレナが操る【赤雷】だけが戦闘を行ってきた。
『次は10階層ですか、ボス部屋ですね』
「もうボス部屋か、思ったよりはやかったね」
『はい、ここまで2時間ほどですか。やはり止まることなく進めるのは大きいですね』
【水晶の洞窟】に来てからまだ2時間、たったそれだけで既に次が10層の所まできている、ダンジョンの規模感的にはそんなに狭くないはずなのだが倒したやつをドローンで回収して荷物持ち専用の機体があるおかげで止まることなく進めているのがかなりでかい。
後は多分ヘレナはこのダンジョンの地図をネットで漁っていると思う、進み方に迷いがない。
俺自身的には事前に地図を用意しようがしまいが楽に進めようが苦難の道のりになろうがどちらでもかまわないのでなんでもいい。
現状は【赤雷】の上に乗ってのんびりとしているだけだが結構楽しい。
楽しいが、流石にそろそろ飽きてきたな………
でも、戦闘に参加しないといった手前やっぱり参加したいとは言いずらい。
『マスター、そろそろ戦闘に参加しませんか?』
「ぬ、今回はヘレナに任せるって言ったからなぁ」
『次はボス戦です、雑魚ならいくら来た所で平気ですが流石にボス戦となるとどうなるかわかりません。マスターも戦闘に参加してくれませんか?』
「むむ、ヘレナがそこまで言うなら仕方ないな………次から戦闘に参加するよ」
『はい、ありがとうございます』
「ヘレナが言うから仕方なく戦闘するんだからね!」
『はいはい』
ヘレナにそこまで………そこまでか?まぁいいか。そこまで言われてしまったら仕方ない俺も戦おう。
◇ ◇ ◇ ◇
「これがボスかぁ代り映えしないね」
『仕方がないでしょう、まだ10階層ですし』
10階層のボス、道中に出てきたトカゲが2倍ぐらいに大きくなっただけのやつだった。
大きくなっただけでもそれはそれで脅威なんだけれど、何て言うかもうちょい違うやつも見て見たかったっていうのが本音だ。
ただまぁヘレナの言う通りまだ10階層なのでこの先で多分違う形のが出てくるんだろう、言ってしまえばここはチュートリアルみたいなものなのかな?
全長10メートルほどの大きなボストカゲに道中も出てきた水晶トカゲが10匹ほどの群れだ。
「んじゃ行くか」
『はい、雑魚は任せて下さい』
既に【赤雷】からは降りて戦闘態勢はばっちりだ、後は倒すだけ。事前に決めていたがボスは俺が、雑魚はヘレナが倒す事になっている。
決めた理由は特にない、ただあえて言うならヘレナがあやつる【赤雷】の方が俺より雑魚殲滅スピードが速いだろうなと思ったからだ。
まずは1発先制攻撃を仕掛ける。
「硬いなぁ」
使用したのはいつもの〝アサルトライフルFoxtrot〟に普通の銃弾、取り合えずの1発なのでいつも使用する形の銃と弾で撃ったのだがボストカゲの外皮が硬いのかチュンッと音をたてて逸らされてしまった。
取り合えずの1発が戦闘開始の合図となり敵が一斉に突撃してくる。
「【リロード】【マハト】」
【リロード】で〝徹甲榴弾〟の入ったマガジンへ入れ替えさらに【マハト】で威力を向上させる。
1発、2発。
「今度は威力が大きすぎたか………?」
1発目で頭の下半分が吹き飛び、2発目で残っていた上半分が吹き飛び、頭が完全に吹き飛んで行ってしまった。
スキルアーツを使うと威力の調整が難しいんだよなぁ。
弱すぎると戦闘時間が伸びて危ないし、かと言って今みたいに過剰火力だと素材としての価値がちょっと下がっちゃうし。
何て言うかこう、自動でちょうどいい塩梅の威力になるスキルが欲しい。
『終わりましたか?』
「ん、終わったよ。そっちも終わってたか」
ヘレナの方は瞬殺だったのか雑魚の水晶トカゲ10匹は既に倒されていた。
『はい、これぐらいでしたらまだまだ余裕がありますね』
「10匹でも余裕かぁ」
話しながらも【格納庫】から回収用ドローンと荷物持ち君を呼び出して集めるように指示を出しておく。
思っていたよりもヘレナの戦闘力が高い、ボス戦は結構短時間で終わったと思うのだがその間に10匹の水晶トカゲを倒しきっている事からそれがわかる。
『先に進みましょうか』
「その前にこのボスだけGPに換えておくよ、いくらになるのか気になるし」
『了解』
前回、ヘレナから忠告されたダンジョン協会へちゃんと倒した魔物を売った方がいいという言葉をうけてから。
今回のダンジョンでは倒したやつの半分をGPに換えている。
正直どれぐらいの数の魔物の素材をダンジョン協会へと売ればいいのか分からないのでわかりやすく倒したやつの半分は残しておこうと決めた。
そうはいってもやっぱりボスはいくらになるのか気になるので1匹だけだとしてもGPに換えておきたい。
「25万GPか、そんなに高くないな」
雑魚の水晶トカゲ2匹分ぐらいしかないボストカゲ、ボスにしてはGPがしょぼい気がするが多分これで満額なんだよなぁ。
最近分かってきたのだ、素材の損傷がどれぐらいまでならGPを満額貰えるのかという事が。
売却対象となる素材の1割から2割いかないぐらいまでならたとえバラバラになっていても一度に売れば満額貰える。
その損傷の1割2割って言うのが結構大雑把なので結局は売る時まで分からないのだが。
他にもこの一度に売ればというのも曲者で、例えば頭だけの水晶トカゲ(A)と頭以外が残っている水晶トカゲ(B)があったとして、二つ合わせれば完全な1体になるが売却時には別々の個体として計算されるのでどっちも満額貰えない場合もあったりする。
今回のボストカゲの場合、頭が無くて損傷が大きく見えるが全体で見るとそんなになので満額貰えたって感じだ。
後は魔石を砕いてしまうと損傷が少なく見えても売却額が低くなることもある。
そんな感じで損傷がひどいとGPがちゃんともらえないがダンジョン協会へ売る分には問題ない、なので売れそうにないやつが出たらダンジョン協会へ積極的に回すつもりだ。
今のところヘレナが綺麗に倒してくれているのでどれを売ってもGPが満額貰えそうだが、この先そういった損傷が激しいのが出たらっていう話だ。
そんなこんなで10階層まででの稼ぎは265万GPになる、ここまでで出会った水晶トカゲは全部で30匹ほどでその内の半分の15匹がダンジョン協会へと行くことになり、今回たおしたボストカゲはGPに、残り10匹の水晶トカゲのうち半分の5匹はダンジョン協会へという事になる。
つまり雑魚の水晶トカゲ20匹とボストカゲ合わせて265万GPである。
何だが結構な稼ぎになった気がするが………新しい機体を作ったり武器を新調したりするとこれでも全然足りないな。
特に最初に作った大きな機体は武器がパイルバンカーだけだしな、遠距離攻撃手段をつけたい。
『マスター、先へ進みますよ』
「了解、行こうか」
GPにする奴は売却を終えて、ダンジョン協会へと売るやつは荷物持ち君に収納して11階層へと降りていく。
「あれ?そういえばボス戦だったのに宝箱が無かったな?」
『宝箱ですか?ここでは出ませんよ』
「えっ出ないとかあるの!?」
『はい、その代わりここではどこかの階層にランダムで宝箱が置いてある確率が他と比べて高いそうです』
「ほーん、じゃぁ宝箱見つけようと思ったら1階層づつ丁寧に探索しないといけないのか」
『まぁそうですね。宝箱欲しいですか?』
「そりゃ欲しいっちゃ欲しいけど、探すのは面倒だなぁ」
『GPがかかりますが手が無い事もないですよ?』
「そうなの?」
『はい、パーツの追加と能力の追加をすれば地形を把握する事のできる反響定位、所謂エコーロケーションと呼ばれる物が出来るのでそれで宝箱の位置を確認できるでしょう』
「へぇ、そんなのがあるんだ。GPはいくらかかるの?」
『50万GPほどですね』
「思ったより安いね、それなら早速つけてみよう」
『はい、【格納庫】へと行きましょうか』
エコーロケーションってあれか眼の見えない人がチッチっと舌打ちで物がどこにあるかとかみたり、動物だと蝙蝠とかイルカなどが使うあれか。
もしかしてそういうスキルもあったりするのかな?どういう風に感じるのか気になる………
◇ ◇ ◇ ◇
と、言うわけで【格納庫】でヘレナが操る機体である【赤雷】へとエコーロケーション能力の追加をしてきたのだが、それよりも気になる事が11階層で出来てしまった。
「何だこれ………これが本当の【水晶の洞窟】って事か?」
目の前に広がるのは半透明な水晶で出来た洞窟。
洞窟に水晶が生えているのではない、洞窟自体それ全てが水晶で出来ている。
ちょっと疑問には思っていた、【水晶の洞窟】という割には水晶感が薄いなと。確かに洞窟内に水晶は生えているし敵が死ぬと水晶になるというのはそれっぽいがそれでもなぁっと思っていたらこれだ。
確かに水晶で出来た洞窟という事なら【水晶の洞窟】という名前がふさわしいな。
「お、早速敵か」
水晶でできた洞窟に圧倒されていると早速敵が【気配感知】にうつった。
今度はどんな敵が出てくるのか、またトカゲなのかな?
「ちょっと見た目が違うけどあれもトカゲか」
今までの水晶トカゲはどちらかというとイモリやヤモリみたいにつるっとした見た目だったが今回のは肌がごつごつしていて中には棘みたいなのが生えているのもある。
トカゲというよりもイグアナとかそっちっぽいけど、正直トカゲとイグアナの違いが分からないので何もわからなかった。
『私が倒しましょうか?』
ヘレナが銃口を展開させてそう聞いてくる。
「いや、俺に任せてもらえるか?」
『了解、待機します』
別にヘレナに任せてもよかったが何となく先ほどのボス戦だけでは撃ち足りないので俺が戦う事にする。
【赤雷】の体の一部を土台にして〝アサルトライフルFoxtrot〟を構える、【マハト】を使い銃弾は普通のにしてある。
大きさは先ほどのボスと同じぐらいで結構でかい、全長8メートルかそこら。
だけど数は2匹なのですぐ終わるだろう。
1発目、狙い通りに先頭のトカゲに当たり一撃で沈む。2発目、仲間がやられたことに気づき、こちらが遠距離攻撃をしていると理解したのか顔をそらされて変な所に当たってしまった。
なのでそのまま3発目を撃ちトドメをさす。
うむ、やっぱり遠距離攻撃って一方的で楽だな。特に今回の敵のように突っ込んでくるしかできないやつはね。
「あれ?色が違う」
倒したトカゲを回収しようとドローンと荷物持ち君を呼んでいると、トカゲが水晶へと変わっていったのだが不透明の白いのではなく色がついた水晶になっていっている。
片方はピンク色にもう片方は黄色っぽい色に。
『ピンクの方がローズクォーツで黄色っぽいのがシトリンと呼ばれる物ですね』
「へぇ、水晶って色があるんだ?」
水晶って白色のだけじゃなかったんだな、知らなかった。
色によって売却額とか変わったりするんだろうか?
「どっちをGPにするか悩むなこれ………」
同じ色のだと悩む必要が無いが色が違うとなると気になってどっちを売るか考えてしまう。
『この後もいっぱい倒すんですしその時にダブったのは売っていけばいいんじゃないでしょうか?』
「確かに、そうするか」
『はい、それよりもマスター。先ほどから新しく追加してもらったエコーロケーションを使用しているのですが早速宝箱を見つけました』
「まじ?はやくない?」
『はい、思ったよりも近くにありまして。すぐにわかりました』
「どこにあるの?」
『そこの水晶の裏です』
そういってヘレナが向いたのは真横に生えていた大きな水晶、彼女が言うにはその裏に隠れているらしい。
「近いな………」
思ってたよりも近くてびっくりした………
まぁ取り合えず見てみよう。
「なるほど、こうなっているのか。これは見つけにくそうだな」
ヘレナが教えてくれた水晶裏へと行くとそこには洞窟になっている水晶と同じ色で出来た宝箱が置いてあった。
近くまで来ると宝箱だと分かるが、遠めだとこれわからないだろうな。
「中身は……いらねぇ何だこれ………」
宝箱を開けて見ると中に入っていたのはローズクォーツで出来た水晶玉、大きさは片手で持てるほどしかない。
『まぁ、何かの魔道具かもしれませんし一応ダンジョン協会へと鑑定に出しますか?』
「そうするか、魔道具じゃなければそのまま売ればいいしな」
『はい』
「んじゃ、気合を入れなおして進むかーどこまで行こうかなぁ」
『【水晶の洞窟】は全50階層なのでこのまま進むとなると夕方までに20階層にたどり着けるぐらいですかね?』
「ふむ、じゃぁ今日はそこを目指そう」
『了解しました、乗りますか?』
「んー、いいや。疲れたら乗るよ」
『はい』
洞窟全体が水晶で出来た今回のダンジョン、水晶には他にも色があるんだろうか?ちょっと楽しみなってきたな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます