第52話 【アルミーシュ】

52.【アルミーシュ】








「なんだか人が少ないなぁ」


神宮寺さんから【ラドナクリスタル】を取ってきて欲しいとの依頼を受けてから2日後、早速俺はBランクダンジョンである【アルミーシュ】へと来ていた。


いつも通りダンジョン協会支部へと入っていき探索登録した後にダンジョンへと入っていくのだが、気付いたことがある。


人が少ないのだ、今まで行ったことあるダンジョンは大体がそれなりの人がいた。パーティでもソロでも人込みで動けないって程ではないが多少人がいて受付に並ばないといけないぐらいのレベルの人数だ。


それに比べて【アルミーシュ】のあるダンジョン協会支部は中も外も人が少なく、両手で数えきれるぐらいしかいない。


Bランクの人数って何人ぐらいいるんだろ?たしかダンジョン協会が毎年ランク別の割合と人数を発表してた気がしたけど、後で調べてみるかな?


そんなことを考えつつ【アルミーシュ】内部へと入っていく、このダンジョンの入り口はちょっと変わっていてエレベーターの形になっている。

これも【アルミーシュ】が荒廃した都市だからなのかな?エレベーター内は10人ぐらいが装備をつけていても同時に乗れるぐらい広くて、ここを1人で使うのはちょっと寂しい気分になる。


エレベーターのボタンは開け閉めの2つと1から50までの数字がボタンになって並んでいる。エレベーター内へ入り扉を閉めると数字のどれかが点灯し押せるようになるという形だ。


「32番か」


エレベーターの扉が閉まり32のボタンがぺかっと光るのでそのまま押す、するとエレベーターがガコンッと音を立てて動き出した。


これで後は到着するまで待つだけだ、その間に装備の再点検をしておこう。


今の装備は更新して見た目が変わった全身防具、前のは硬い金属のような防具でごつごつとしていたが今回のは布地に細かく分かれたパーツがついている感じ。

とはいっても下地が見えるような形ではなく隙間なくパーツがついているので見た目からは分からなくなっている。

関節にもパーツがついているのだがなぜか動きに支障はない不思議素材だ。


防具に続いて武器も更新して〝Foxtrot〟シリーズにしてある、今装備しているのはいつものアサルトライフルにハンドガン。【空間庫】にはいつでも撃てる状態にしたショットガンが置いてある。

銃の見た目はショットガン以外変えていないのでいつも通り使えるはずだ。


ただ今回アサルトライフルには〝グレネードランチャー〟と〝ウェポンライト〟が装着してある。ちょっと銃が重くなったがステータスのおかげで気になるほどではない。


装備の点検を終えるとちょうど着いたのかエレベーターからポーンと音がなり扉が開いていく。


「うわぁすげぇディストピア」


エレベーターが開くと建物内ではなくここは建物の入り口の扉になる位置なのか目の前はいきなり外だった。


なんていう名称かわからないが大きなビルとかによくある入り口前のひさしみたいな物が突き出ていてそれを支える柱が何本かたっている。

その外には崩壊した建物が広がっており所々に緑が見える、地面は全て白い謎の素材タイルで出来ており現実感がない。

こういったところでもここが空想の世界でありそうなディストピアって感じる。


エレベーターから出てダンジョン内を歩く。


「なんの意味があるんだこの川」


建物を出てすぐのところに白いタイルで作られた川が流れていた。幅は2メートル、深さは20センチしかない。


映画とかの未来を想像した描写でよくみる、よくわからない場所に流れている川だ。


「実際に見てもよくわからないけど、景色的にはいいなこれ」


機能とかそういうの関係無しにこういうのってオブジェクトの一種みたいな感じなんだろうな。


なんて景色を楽しんでいると【気配感知】に敵が反応したので物陰へと隠れる。


「あれが『機械種マギア』か、でもなんか様子がおかしい?」


建物の陰から現れたのは細いアームが対になって6本生えている縦に長いロボットで、後ろに何か牽引している。

大きさ的には1メートル30センチの円柱が立っている感じ、後ろに引いている箱は横長でロボットよりも若干大きいかなぐらい。

顔の部分にはモニターが付いておりそこに顔の表情が表示されている。


【イーグルアイ】を使い敵の状態を調べてみるが青色の無警戒状態だった、普通の魔物なら大体が常に黄色の警戒状態なのでちょっと変わってる。

『機械種マギア』だから無警戒なのかどうなのか………


すこし様子を見ていると何か拾っているのがわかる、あれは枯れた葉っぱ?拾った物を牽引している箱へと仕舞っていってる。


あれはもしかしてお掃除ロボット的な奴なのかな?


今までのダンジョンは時間が経つと自然に元の状態へと戻る作用があるのか綺麗になってたけど、ここではその役割があのロボットってことかな?

言われてみればこのダンジョン、葉っぱが生えてるんだから枯れたりしそうなもんだしな。その割には緑の葉っぱばかりで枯れた様子が無かったけどこれで理由がわかったな。


さて、問題はあのお掃除ロボットをどうするかだ。倒すか?見たところ無害っぽいけどハッキリとはわかんないしなぁ、姿を見せた途端襲い掛かってきそうなもんだけど。


ロボットとの距離はまだ48メートルは離れているが少しずつ掃除しながらこっちへと来ている。


試しておくなら十分に距離がある今のうちか。


物陰からゆっくりと出ていき『機械種マギア』のお掃除ロボットっぽいやつが気づきやすい位置まで歩く。

〝アサルトライフルFoxtrot〟を構え安全装置を外しいつでも撃てる状態にしておく。


「ぬ………敵対はしないか」


状態の変化を見れるように【イーグルアイ】を使いながらロボットと相対するがロボットのモニターに表示された顔がこちらに気づいたような表情をした後も変化なくそのまま青の無警戒状態だった。


無害なら無視していいんだけど【気配感知】には引っかかるし邪魔だといえば邪魔だなぁ。


まぁいいか、わざわざ壊すのもなんかなって思うし無視して次行こう。


現在地は少し高い場所になるのかダンジョンの入り口から外にでて川が横切っていてそのさらに向こうは道がなく崖みたいになっていて下が見える。

下の方には白いタイルの地面がありビルもいくつも建っていて同じ様に緑の葉っぱが所々に生えている。


「あ、なんかいる」


下の方にさっきのお掃除ロボットとは違う明らかに攻撃的な見た目をした四つ足のが見える。

あれが襲ってくるタイプの『機械種マギア』かな?

今なら〝スナイパーライフルFoxtrot〟で狙えるが倒したとしても取りに行けないしやめておくか。


それにしてもどうやって下に行くんだろう?どこかにエレベーターでも………ん、あそこに階段が見えるな。


大きなビルに不釣り合いな外階段が何故か取り付けてある、気になるけど分かりやすいからいいか?あそこに行けば降りれるって事だもんな。


景色を眺めながらも進んでいく、今回の目的である【ラドナクリスタル】だが『機械種マギア』のリーダー格が持ってるって話しだからそのレベルの敵が出てくるぐらい奥に行かないといけない。


フィールド型ダンジョンである【アルミーシュ】は大きな都市となっており中心部に向かうほど強敵が出てくる、その為ダンジョンの入り口のほとんどは外縁部にある。

【アルミーシュ】の中心部は分かりやすい事にダンジョンの天井へと繋がっている大きな塔が建っている。

一番上まで登ると何があるかはいまだに判明していない、つまりここは未踏破のダンジョンという事になる。


Aランクパーティでもあの塔の8割ぐらいまでしか攻略できなかったと調べたときに出てきた。


まぁ今回は中心部までは行かないし塔なんてもってのほかなので関係ないが。【ラドナクリスタル】を手に入れるにはそこそこ近づかないといけないはずだ。

中心部までは360キロも離れている、最低でも半分くらいは近づかないといけないだろう。


歩いたとして余裕をみて3~4日ぐらいで半分ぐらい進めたらいい方かな?途中で『機械種マギア』と戦闘になったりするだろうしね。

因みに今回の依頼には一応期限があるが1ヵ月もあるのでよっぽどのことが無ければ余裕で間に合う。

こういう言い方しちゃうとフラグみたいになるけど………ないよね?



「あ、今度こそ敵か」


【気配感知】に結構なスピードで近づいてくる敵が現れた、さっきのお掃除ロボットとは違うっぽい。

向こうはこっちに気づいているというよりかは探索をしている感じの動き方だ、あっちに行ったりこっちに行ったり時々止まったりしている。


どっちにしろそのうちこっちに来そうなのでさっきと同様に物陰へと隠れる。幸いと言っていいのかどうなのか荒廃した都市なので身を隠せそうな瓦礫がそこそこある。


「うわーあんなのもいるのか」


出てきたのは『機械種マギア』の犬型、それもなぜか1匹だけ。ああいうのって普通は群れてるもんじゃないのか?


それにしてもなんていうかかっこいいな『機械種マギア』の魔物って。メタリックな装甲に機械ゆえなのか目は単眼のモノアイになっている。

モノアイは後ろまで見えるようにか真横まで動ける形になっているのが分かる。


犬型の大きさは体高で90センチ、もし2本足で立ったら2メートルだろうか?かなりでかい。


敵との距離は72メートル〝アサルトライフルFoxtrot〟なら十分射程距離内だ。


隠れていた物陰から少しでて瓦礫を台にして銃を固定してそのまま犬型の頭を狙い撃つ。


「っ!」


金属を撃ち抜く音がして犬型の『機械種マギア』がこちらを向く、一撃では倒せなかったが襲ってくる事は無くモノアイが不気味に点滅している。


「なんだ………?ってまじか!」


睨み合いをしていると【気配感知】に新しい敵影が5体現れた、しかもこっちに向かってきている。


「単体でいたのは仲間を呼び寄せれるからかっ!」


今更遅いのは分かっているが取り合えず目の前の犬型にアサルトライフルを連射して頭を破壊して倒しておく。

ちゃんと考えておくべきだった、機械種って事は通信とかなにかで仲間同士繋がっているのは少し考えればわかりそうな物だった。


急いで場所を移動してこれからくる敵にすぐに発見されないようにしておく、隠れた瞬間ビルの合間から【気配感知】で見ていた敵が姿を見せた。

さっきまでいた場所をしきりに探している、移動しといてよかった。


「ここで使うか」


丁度良く敵がまとまっているので新武器の〝グレネードランチャー〟を試そう。

【空間庫】から弾薬を取り出しリロードする。


瓦礫の周りを嗅覚もないのにクンクンとしている犬型に向けて〝グレネードランチャー〟を撃つ。

ポンッと音がして続いて大きな爆発音が続く。


足が吹き飛び、頭が吹き飛び。5体いた内の4体が〝グレネードランチャー〟で倒せたので残った1匹をアサルトライフルで倒してお終いだ。


「ふぅ、ちょっと焦った」


次からは仲間を呼ばれる前提ですぐに倒しきらないとな。

それにしても結構いいな〝グレネードランチャー〟使いやすい、撃ちやすいし手榴弾とかと違って爆発までのラグが無い。

威力も十分一撃で倒せるぐらいあるみたいだし。


「ただ、これだとまともなGPにはなりそうにないな………」


最初に倒した1匹は1万5千GPになったけど、追加できていた5体は全部まとめても3000GP。爆発物は強いがGPにはならない。


悩みどころだなぁこれ。


取り合えずもうちょっと探索して【野営地】で休憩するか。







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