第34話 【ドワーフの鉱山】
34.【ドワーフの鉱山】
「お~めちゃくちゃ景色がいいなここ」
レベル上げに飽きてやってきたのは新しいCランクダンジョン【ドワーフの鉱山】だ。
今いるのは山の頂上あたり、視界にうつるのは沢山の大きな山々。
遮るものが無いので陽の光が直に当たってくる、ダンジョン内のこの光が外と同じなのかはしらないが少なくともこの肌にちょっとピリッと来る感じは外と変わらない。
風が強いのか耳元で音がびゅうびゅうと鳴っている、それに空気が薄いのか少し息がしにくい気もする。
ただその分澄んでいて気持ちがいい。
見える感じでは、山と山が木とロープで出来た橋でつながっておりそこから移動するんだろう、山の下の方には雲が覆って流れておりその先は見えなくなっている。
調べた情報によるとあの雲の先には何もなく落ちたりしたら死ぬことになるだろうと言われている。
なぜだろうと不確かなのか、それは行ったきりで誰戻ってこなかったからだ。なので恐らくそうだろうと言われている。
そしてダンジョン名にもついているドワーフ、ファンタジー物ではほぼ確実に出てくる種族でその扱われ方は様々だが総じて手先が器用で物を作るのが得意といった感じで表現されている。
さてそんなドワーフの名前がついたこのダンジョン、名前についているほどだつまり………
「早速見つけた」
遠く今自分がいる位置より低い所、数百メートル先に見える人影。普通ならこんな距離だと肉眼では見えないはずだがこの間手に入れたスキルリンク【イーグルアイ】の効果でハッキリとその後ろ姿が見える。
その身長は小さく上から押しつぶされたように横に広がった樽みたいな体、その手に大きなつるはしを持っている。
ここまで言われればあれが何か予想がつくだろう。そう、あれがこの【ドワーフの鉱山】に出てくる魔物である『ドワーフ』だ。
魔物、そう魔物なのだ。残念なことにダンジョンに出てきた『ドワーフ』は魔物で敵だった。
ある意味で人と言えるような存在に見える『ドワーフ』そんな相手を倒すのは人を殺すのと変わらないんじゃないか?って思うかもしれないが、それは実際に『ドワーフ』を見てからにしてほしい。
〝アサルトライフルCharlie〟を取り出して岩陰に隠れるようにして構えて狙いを定める。
スナイパーライフルは使わない、単発なのもあれはあれで好きだがなんだかんだアサルトライフルがバランスよくて使いやすい。
それに【イーグルアイ】のおかげかこれだけ距離が離れていてもしっかりとぶれずに狙えている。
息をひそめて狙っていると『ドワーフ』が歩いていた方向を変えてこちらを向く。
その顔は髭もじゃでかなり歳がいっているようにみえる、そしてその眼だ、ここからでもはっきりとわかるぐらい赤く明らかに正気ではなく口からはよだれもこぼれている。
みて貰った通り『ドワーフ』は人型だがあの顔を見て人と同じように扱おうとは思えない。
取り合えず眺めていても仕方ないので倒す事にする、呼吸を落ち着けて1発。
「あ?外した………?」
放たれた弾丸は『ドワーフ』の右横を通り過ぎ近くの地面を弾く結果となった。
攻撃されたことに気づいたのか『ドワーフ』の輪郭が【イーグルアイ】の効果で警戒状態の黄色になっているのが見える、こちらの存在には気づいていないようだ。
「何でだ?」
アサルトライフルを構えたまま考える、距離として確かに遠いが今の俺の器用値なら外す事は無かったはずだ。
今までのダンジョンではなかった要素が絡んでいる?なんだ?う~ん。
「う~ん」
考え込んでいる間も『ドワーフ』は視線をあちこちに向けて何かいないか探しているが俺は岩陰に潜んでいるので発見されることは無いだろう。
風が俺に吹き付けてきて音が少しうるさくうまく集中できない。
ん………?
「風?そうか、風か!」
銃の事を調べたときに情報として覚えていたはずだが、今までのダンジョンは全てここまで強い風が吹いていなかったので気づいていなかったが、そうだ風だ。
弾が風の影響を受けているんだ。
こういった場合ってどうすればいいんだ?んー?
「ふむ、めんどくさいな。当たるまで撃てばいいや」
少し悩んだが決めた、外したならすぐに修正して何となくで当たるまで撃てばいいんだ。
どうせ向こうがこちらに気づいたとしてもすぐにはやってこない、距離があるからな。それなら話しは早い当たるまで撃てばいいんだよ。
気を取り直してさっきの『ドワーフ』を狙いなおす。時間が少し経ったからか無警戒状態の青色に戻っていた。
今度はすぐに修正して撃てるようによく狙いまずは1発、外れたのを確認してすぐに勘で修正してもう1発。
「いけたな」
『ドワーフ』が倒れたのを確認して潜んでいた岩陰から立ち上がる。
器用値のおかげがわりと勘でもすぐ修正してあてる事ができる。
「これはちょっと練習したほうがよさそうだな」
今のままだと最低でも2発必要になる、まぁ別に弾は今だとそんなに高くないしいいんだけれど………それでもやっぱりちょっと1発で決めれないってのはダサいというか何というか。
「1発で決めれるようにしよう」
◇ ◇ ◇ ◇
パシュっと気の抜けた音が響きそれよりも大きな音を立てて『ドワーフ』が倒れる。
「いい感じになってきたな」
あれから狩り続ける事5時間以上、もはや倒した『ドワーフ』は数えきれずドロップ品もGPへと換えていったのでどんどん増えて行っている。
『ドワーフ』のドロップ品は持っていたつるはしにレアは何かしらの鉱石、まぁほとんどは石炭を落とす。
死体は流石にGPに換える気も起きないので放置だ、なんだか気分的に換えたくない。
何匹も倒す中で少しづつ風を読むのも慣れてきていまではほぼ1発で倒せるようになってきた。
「お、もう1匹」
ドロップ品を拾い顔を上げた瞬間次の『ドワーフ』を見つけたのでこれまでと同じ様に岩陰に伏せて狙いを定める。
「んー?何だこの感じ。何て言うか風が見える………?」
不思議な感覚だった、第六感とでも言えばいいのか?風がどう動いているのか何となくわかる。
「ここだ!」
感覚に従って『ドワーフ』を撃つ、すると見事1発でイメージした通りに当たった。
「何だったんだ?今の」
『新しいスキルを獲得しました』
「お?自然にスキルを覚えた?」
名前:神薙 響 年齢:15
レベル:45 → 48
STR:62
VIT:23 → 25
AGI:60 → 63
DEX:487 → 523
INT:8
MND:7
≪スキル≫
<ユニーク>【GunSHOP】Lv:4
<上級>【空間庫】Lv:3
<スキルリンク>【野営地】Lv:1
<上級>【射撃】Lv:4 → 6
<初級>【銃術】Lv:9
<上級>【堅忍不抜】Lv:─
<中級>【気配感知】Lv:5 → 6
<中級>【遠目】Lv:─
<スキルリンク>【イーグルアイ】Lv:1 → 3
New<ユニーク>【風読み】Lv:─
「おお?何だこれ【風読み】?しかもユニーク?」
<ユニーク>【風読み】Lv:─
<風を感じ、風の流れを読むことが出来るようになる>
「効果が限定的すぎるし特殊すぎるスキルだな………ユニークってこういう形のもあるのか」
しかもどうやらこれアクティブスキルみたいだ、確かに視界に常に風が見えていたら邪魔かもしれない。
「使ってみよう、【風読み】………おお?」
【風読み】を使った瞬間新しい感覚が増えた、なんとも不思議な感じがするがこれが風を読むってことなのかな?
何ていえばいいのか、風がどう吹いているのかが分かる。しかも目の前だけじゃなくて見える範囲全てでだ。
「問題は見えた所でこれを使って慣れないと意味がないって所だな」
面白いスキルだがまた慣れるために狩り続けないと。
◇ ◇ ◇ ◇
「こりゃ楽だなぁ」
【風読み】スキルを手に入れてから1時間ほど『ドワーフ』を狩り続けてこのスキルにもだいぶ慣れてきて今では百発百中になったんじゃないだろうか。
スキルを覚えるまでは器用値頼りの勘だったがそれが【風読み】スキルのおかげでしっかりとした狙いを付けれるようになった。
結局は狙う際に器用値頼りになるが100%勘で撃ってた時に比べたらすごくいい感じだ。
「ふぅ、満足満足………あっ目的忘れてた」
今更だけど今回【ドワーフの鉱山】にきた目的を思い出した。
今回ここに来たのは鉱石掘りの為だ、どうして鉱石何かって思うかもしれないがこれには理由がある。
ここで採れるミスリルを使って新井さんに装備をプレゼントするつもりだ。
これから正式にクランを設立してお世話になるし、実はもうすぐ新井さんの誕生日らしい。これは花井さん情報だ。
なのでダンジョン探索に役立つミスリルを使用した何かしらの装備を送ろうとおもって採りに来たのだ。
作る物は特に決まっていないがそこは花井さんと相談していくつもり。
そんなミスリルだがこの【ドワーフの鉱山】の奥まで行かないと採取ポイントが無い。なので今回は数日かけての探索になる。
来週には止まっていた学校も再開するし今のうち時間がかかるのを行っておきたいってのもある。
「えーっとたしかここの進み方は………途中で鉱山内を通らないといけないのか」
事前に携帯へとダウンロードして用意しておいた【ドワーフの鉱山】の地図を取り出す、これによるとミスリルの採れる位置にいくにはそれなりの長い道のりになるみたいだ。
まずは山同士を繋いでいる木で出来た橋を渡っていく、グラグラと揺れる橋にいつ切れるかわからないロープが絶妙に怖い。
渡っている間も警戒はおこたらない、ここでは橋から落とそうとする鳥がいるらしい。
「って考えていると来るんだよな」
もう少しで橋を渡りきるってあたりで考えていた魔物がやってきた。
鈍器のように発達した嘴に大きな体、成人男性と同じぐらいの大きさはあるんじゃないだろうか?
あれが橋を渡っている際に注意しなくてはいけない【ハンマー鳥】だ。
ふざけた名前だがその厄介さはおそろしい、その大きな体を使いスピードを出しそのままハンマーのようになった嘴で突撃してくるのだ。
もし当たれば1発で橋から落とされるだろう。
〝アサルトライフルCharlie〟を構えて速攻で撃っていく、今回は1発で決めるとか言ってられないので何発も【ハンマー鳥】が落ちるまで撃ち続ける。
5~10発ほどだろうか、撃ち続けていると魔物は雲の下へと落ちていった。
「これが言われてたやつかぁ………回収できねぇ」
雲の下へと落ちていったのでその死体もドロップ品も拾えない、これが【ハンマー鳥】の一番いやらしい所だ。
突撃されたら危険だし、かといって遠距離で倒すとドロップ品が拾えない。むかつく。
「もういや、サッサと行こ」
過ぎたことを考えても仕方ない、今回はミスリルが目的なんだあれはそういう罠だと思って考えないようにしよう。
橋を渡りきりさらに進む、すると坑道と思われる木で補強された洞窟が見えてきた。
「ここを進むのか………」
幸いな事に?坑道内は『ドワーフ』が設置したのかランタンの様な物が一定の間隔で置いてあるので視界の確保は容易だ。
それにダンジョンの入り口に近いここは色んな他の探索者が既に探索済みなので次の場所に繋がる地図が完全な形である。
ただし常に『ドワーフ』が新しい道を作っているらしく奥の方では地図にない場所もある。そういったところの方がむしろレアな物がありそうだが未知の場所になるのでその危険度は跳ね上がる。
「む、『ドワーフ』が来たか」
【気配探知】に『ドワーフ』がこちらに近づいてきているのを確認した。広い場所ではあまり役に立たないスキルだが、こういった狭い場所だと一気に最強スキルになる。
〝アサルトライフルCharlie〟を構えて【気配探知】で常に敵を確認しつつ待つ。
曲がり角から現れた『ドワーフ』を確認した瞬間1発で倒す。
「うむ、こんだけ近ければ1発余裕だな。この調子でいこう」
風を読む必要もないし、いつもの距離なので余裕だった。
「ん?戦闘音?」
誰かの戦闘音が聞こえる、剣戟の音、恐らく探索者だろう。
実は今までも他のダンジョンでそれなりに探索者に会う事はあった、だけどお互いに軽く挨拶をしてその後は関わらないようにしていた。
事前に【気配探知】で人がいる事が分かれば避けていたほどだ。
ではなぜ今回は気になるのか、それは戦闘音が長引いているからだ。これは新井さんとの出会いを思い出す。
「新井さん2号か………」
本当なら関わり合いたくないが死なれても目覚めが悪い、気になるし。結局は自分自身の為だが見に行くだけ見に行こう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
あとがき
いつも読んでくださりありがとうございます。
この度初めてギフトなる物を貰いました、励みになります!
ギフトの存在は知っていましたがまさか自分が貰うとは思っていなかったので慌てて色々設定しました………
これからものんびり書いていくので良ければ読んでください。
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