第32話 さらに強くなる為に

32.さらに強くなる為に








「まずは1匹」


ターンッとやや長く響く銃声を聞きながら照準器からは目を外さない。


1発、2発とボルトハンドルを引いてを繰り返しそのたびに標的を一つずつ倒していく。


今いるのは昨日に引き続き【世界樹の花園】だ。

『幻想鳥』の捕獲依頼は終わったはずなのにどうしてまだいるんだと思われるかもしれないが、理由としてはレベル上げになる。


なぜレベル上げが必要なのか、その説明の前に今現在のステータスを見てみよう。




名前:神薙 響   年齢:15


レベル:30 → 36


STR:50 → 55

VIT:18 → 23

AGI:51 → 55

DEX:335 → 398

INT:8

MND:7


≪スキル≫

<ユニーク>【GunSHOP】Lv:4

<上級>【空間庫】Lv:3

<スキルリンク>【野営地】Lv:1

<中級> → <上級>【射撃】Lv:9 → 2

<初級>【銃術】Lv:6 → 8

<上級>【堅忍不抜】Lv:─

<中級>【気配感知】Lv:3 → 4




まずレベルが36になった順調だと思う、次に【射撃】スキルがランクアップして上級になった事によりさらにDEX値に補正が入る様になったみたいでまたステータスがおかしなことになってきている。


他のステータスについては一応戦闘時にこの間していたように銃を用いた近接戦闘をしてみたりしていたので若干伸びている。

若干っていうかステータスの伸び方としては一番正しいんだけれどDEXに関しては【射撃】のパッシブスキルのせいでおかしなことになっているだけだ。


後は【銃術】スキルが順調に伸びていてもうすぐレベルマックスまで到達する、この後中級にランクアップするかどうかは分からないがまぁ多分するだろうそう思っている。


【気配感知】についてはまた感知範囲が伸びてついに100メートルほどになった、こっちも順調だ。



さてステータスを一通りみて本題に戻ろう、レベル上げをしている理由についてだが。

今後レベルを上げないと高ランクのダンジョンへはいけないからだ。


今いるのはCランクダンジョンこのままいくと次はBランクダンジョンに行くことになるのだが実はここで問題が発生する。



そもそもの話しなのだが今まで俺は好き勝手に色んなランクのダンジョンに入っているが普通に考えてこう思わなかっただろうか、ランクの違うダンジョンへ行くのに許可とか必要ないのか?って。


もちろん許可はいる、けどそれはBランクからになる。なぜBランクからなのか、それには探索者全体の話しをしないといけない。

以前にも話したかもしれないが世界的に探索者が一番多いランク帯はC~Dランクになる。世の中にいる探索者のほとんどの人がこのランクだろう。いわゆる中堅ってやつだ。


そこで考えて欲しいのだがそんな人が一番多いランク帯に到達するまでに試験なりなんなりをしていちいち許可を出していたら事務処理はどうなるだろう?

その仕事量は途轍もない事になるかもしれない。


そこでダンジョン協会が選んだのは探索者として上級者と言われるBランク以上の人達にのみ試験などをして入場許可書、資格を取らせることにしたのだ。


つまり最初にダンジョン入場許可書を貰った後はCランクダンジョンまでは自由に入る事が出来る、しかしそこにはもちろん自己責任という注意書きが必要になってくるが。


ではそんなBランクダンジョンへ入場するための試験を受けるために必要な条件とは何か。


1つ、レベルが50以上であること。

これについてはダンジョン協会にその人のステータスを何となく測る道具があるらしく、それで判別するとのことだ。このへんはネットに情報が転がっていたが実際どういった物かは試験を受ける際に話す事を禁じられているらしく詳しいことはわからなかった。

だから分かるのはその人の力量を測る何かしらの道具があるという事だけ。


なぜ50レベルなのかは知らない、多分それぐらいないとBランクダンジョンでは通用しないという事だとは思うが。実際の強さについてはステータスよりもスキルによる所が大きいと思う派なのでこの考えについてはよくわからない。



2つ、どこかしらのクランに入っている事。

これについてはもし試験を受けて合格した人がその場ではどんな人物かわからず今後どのような行動をするか分からないから一種の足枷としてどこかのクランへ所属

している事が条件になった。

もし何か問題を起こせばクランへとその責が向かうというわけだ。


クラン側のメリットとしては高ランクの探索者が所属しているというアピールになり新規の人を呼び込みやすくなるのと、ダンジョン協会からのいい依頼を受けやすくなるというのがある。

もちろん他にも理由があるんだろうけど詳しい事は知らない。



条件としてはこの2つだけだ、簡単そうな条件に見えるかもしれないが実際はそうでもない。

まずレベル50というのが難しい。

長く探索者をしていればいつかは塵も積もれば何とやらで条件を満たすだろう、だが果たしてそれがいつになるのか10年後か20年後か?それだけ時が経ったときには既に自分の立ち位置が明確になりそして探索者としての知識から現状維持で満足してしまう人も多い。

C~Dランクのダンジョンでも生活して貯金するぐらいには十分に稼げるのだ、そこで満足する人が出てしまうのはしょうがない事だろう。



次にクランへの所属。

そもそもクランへ所属するのに試験がある所もある、どこだってリソースが無限にあるわけでは無いのだ選ぶ権利はある。

大手になればそれだけ試験が難しくなるだろう、逆に誰でも歓迎って所だと満足なサポートを受ける事は出来なくなるだろう、そのためそもそもクランへ所属する意味がない。

なので簡単にクランへの所属と言ってもそもそもそれがひとつの敷居になっているのだ。


つまり高ランク帯のダンジョン入場許可書を貰う試験を受ける為には、若いうちにレベル50以上になりさらに向上心や野心があり、どこかしらのクランへと入っている必要があるわけだ。



俺に向上心や野心があるのかって?もちろんある。


見たことない景色、見たことない魔物。自分は一体どこまで強くなれるのかどこまでいけるのか。

だれしも一度はそう思わなかっただろうか?


俺はやってみたいんだ、どこまでやれるのか。



と、言うわけで俺は現在【世界樹の花園】でレベル上げをしているわけだ。


「よし、これで30匹目」


今しているのは〝スナイパーライフルDelta〟を使った遠距離からの狙撃で安全に倒してレベルアップしようキャンペーン中だ。


倒している魔物は『ピクシー』と呼ばれる妖精だ。

大きさは30センチほど人型でその背中には羽根が生えている。


妖精と言われてファンタジーな可愛い生き物を想像したみなさん、残念なお知らせだが【世界樹の花園】にいる『ピクシー』はそれはもう醜い見た目をしている。

大きく裂けた口にそこから見える鋭い牙、その眼は常ににやついていて気色悪く、肌は青だったり赤だったり様々だ。


昨日はそんな魔物見なかったじゃないかと思ったかもしれないがこれはこの【世界樹の花園】のフィールドが大きい為に起きたことが原因だ。


【世界樹の花園】は1層だけのフィールド型ダンジョンでそのエリアの大きさは途轍もなくでかい。

端から端までただ踏破を目的とした行動をしたとしても1週間はかかると思う。


そんな広いエリアなのでそこへ出現する魔物はおおよそエリアで区切られている。


ダンジョン入口から世界樹までのエリアの『幻想鳥』や『人食い植物』がいる所。


世界樹から90度右へ行った熊や鹿など動物型の魔物がでるエリア。


さっきとは反対に左へいった虫型の魔物が出現するエリア。


そしてダンジョン入口から世界樹を越えてその奥へいった『ピクシー』や『フーア』などの妖精ばかりが出てくるエリア。


そんな感じで大きく4つに分かれている。もちろん全部が全部ちゃんと分かれている訳でもなく混ざって出てくることもあるがおおよそ4つに分けられるって感じだ。

その中の妖精エリアにいるわけだがなぜここを選んだのか、それは『ピクシー』の倒しやすさにある。


まずダンジョン入口の『人食い植物』は待ち伏せ型で見つけにくいし銃では倒しにくいという点、そして『幻想鳥』はその特性上倒しにくいという事。


動物型の魔物が出るエリアは森の中で戦闘しなくてはいけないという関係から却下。


虫型は、虫は苦手なので却下。


必然的に最後に残った妖精エリアになるわけだが、ここは『ピクシー』が草原部分に多く飛んでいるという事、他の妖精型はそれぞれ自分の性質にあった場所でしか出ないので大体の出現場所が絞れるという事。


消去法で妖精エリアになったが残り物には福があるのか結果的にいい狩場になった。


しかも『ピクシー』は1匹で飛んでいるか纏まっていても3匹ぐらいまで、それに現実のスナイパーの不利な点としての狙撃位置がばれて反撃を受けるって事が魔物相手では起こらないという事。


なのでこちらから一方的に攻撃できてめちゃくちゃいい狩場なのだ。

【気配感知】のレベルがあがって敵が近くにくれば分かるようになったしここは見通しがいいので安全だ。


ドロップ品についてはある程度倒したら近くのは拾ってあまりにも遠いものは無視している。


ダンジョン内に残されたドロップ品は時間経過で勝手に消失するので放置しても問題ない。死体も放置でおっけいだ。


そんなGP効率の悪そうなレベル上げでいいのかって思われそうだが、今現在俺は7万GPほど持っている、多少無駄遣いしても問題ないし『ピクシー』のドロップ品を何個かGPに換えれば十分元をとれる。


因みに『ピクシー』のドロップ品はなぜか瓶に入った妖精の粉と羽、後は時々レアドロップでよくわからない物をランダムで落とす。


回復薬だったり、うさぎの角だったり。なぜそんな物がドロップするんだ?って思う物が出てくる。

そのランダムドロップは本当に何が出るかわからず中にはスキルオーブをドロップしたっていう報告まであるほどだ。


まぁ一種のガチャみたいになっているって事だな。


実はワンチャンいい物でないかなって思って狩っている所もある。


そんな面白そうな魔物、他にも狩っている人いそうだけどなって思うけれど周りには人はいない。

何故なのか、それは『ピクシー』のせいだ。


俺は簡単に倒しているがそれは遠距離だから出来る事だ。実際に近距離で剣などで戦おうと思えば『ピクシー』は厄介だ。

小さく素早く飛んでいて、攻撃方法は噛みつきや急所を狙ったいやらしい攻撃ばかり。


なので俺みたいに遠距離から一方的に倒せるぐらいじゃないとうまみが無い。



ぴっ『経験値が一定に達しました、レベルが36から37に上がりました』



「うん、順調だな」


この調子でいけば数日でレベル40を超えるだろう。そしてそのまま狩り続けて1週間か2週間あれば50は超えるかな?


『幻想鳥』は査定がまだ済んでなくてどうなるか結果待ちだし。この狩りに飽きたら別のとこ行ってもいいし依頼を受けてもいいかもな。


何となく新井さんのクランへと参加したが結果的には良かったかもしれない。


「よし、もっと狩るぞー!」






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