第14話 マハト
14.マハト
「この場合はの、ここを押して調整するんだ。するとこうなるじゃろ?」
「ふむふむ?」
「んで、こうしてこうだ」
「なるほど、ありがとうお祖父ちゃん」
「うむ」
現在、お祖父ちゃんに畑の世話について教えてもらっている。技術の進歩でドローンを使って畑の世話が出来るようになり、あまり人の手がかからなくなった現代の畑だが。それでもやっぱり要所要所では人力でどうにかしないといけない事が起きる。
そうした事は長年の経験だったり受け継がれてきた知識が必要で、それをお祖父ちゃんに教えてもらっていた。
これから先ずっと畑を世話して暮らしていくかはまだ決めかねているが、それでも覚えておいて損はないとお祖父ちゃんに言われてならっている。
「それで、どうなんじゃ?探索者業のほうは」
「どう………別に普通だよ?」
「ふむ、今どこに行っておるんじゃ?」
「今は【骨骨の洞窟】って所に行ってるよ」
「あそこか………なんでまたそんな人気の無い所に行っておるんだ?スキルの相性か?というか何のスキルを手に入れたんじゃ?」
スキルか………お祖父ちゃんなら別に教えても構わないかな?
「俺が手に入れたのは【GunSHOP】スキルだよ、銃を扱うスキルでさ【骨骨の洞窟】に行っているのは人が少なくて気兼ねなく銃を撃てるからだよ」
「【GunSHOP】スキルのぉ。銃は金がかかると聞いたが大丈夫なのか?」
「うん、魔物の魔石をスキルで売る事が出来てさ。その売ったお金で銃を買う事が出来るから実質タダみたいな感じで使えてるよ」
「そうか、問題ないのならいいんじゃが。もしお金が必要になったら言うんじゃぞ?響はまだまだわしらに甘えてもいいんじゃからの?」
「うん、ありがとうお祖父ちゃん」
「それに、たまにはこっちの家へもこい。ばあさんが寂しがっておったぞ」
「わかった、近いうちにそっち行くよ」
◇ ◇ ◇ ◇
「う~ん、ちょっと飽きてきたな………」
場所は変わって、お祖父ちゃんが家に来た日から数日後。今いるのはいつも通りの【骨骨の洞窟】だ。
目の前には犬スケルトンが3匹と蝙蝠スケルトンと『一角兎』の形をしたスケルトンの残骸が散らばっている。
現在地はボスである5階層を過ぎて7階層目にいる。出てくるのは相変わらず動物型のスケルトンばかりで戦いの変化に乏しくちょっとここで戦うのも飽きてきた。
飽きるのが早いって?だってもうここで3週間も戦ってるんだぞ?それもほぼ毎日。でてくる敵も変わらず何か珍しい物が落ちるわけでもなく。正直飽きてきた、それに苦戦する事もないしね。
余裕になってから安全に進みたいという考えと、余裕すぎてつまらないという欲求、新しい刺激に飢えているのだ。自分でも矛盾しているとは思うがしょうがない、人間だもの。
「もうすぐ探索者交流会だし、きりよく一気に20階まで行って完全に攻略しちゃうか?」
探索者交流会の日まで一週間を切った。このまま過ごしていればあっという間にその日が来るだろう。今から憂鬱な気分になってしまうが行かないといけないので交流会については仕方ない。
探索者交流会が終わった後、またここに戻ってくるのは何となく嫌なので20階層まで行って気分的に終わらせておきたい。
「そうと決まれば準備するかな、流石に今日は無理だし」
20階層を攻略しようとすれば流石に一日では終わらないのでダンジョン内で数日過ごす用意をするしかない。
幸いな事に安全に寝る事の出来る【野営地】というチートスキルがあるので後は何日か分の食料を用意して暇つぶしの道具があればいい感じかな?
あぁ、そういえばこの間頼んでおいた家具の搬入もしないとか。買ったはいいけどまだ【野営地】内に入れずに庭に置きっぱなしなんだよな。
取り合えず今日は帰ったらそれからするかな?
◇ ◇ ◇ ◇
「………と、いうわけでやってきました10階層」
【野営地】内に家具を運んで、数日過ごせるだけの食料を買い込んで。学校に数日休むと連絡を入れてから【骨骨の洞窟】ダンジョンへやって来た。
今日は20層まで攻略するつもりだ、この準備に2日かけた。
ダンジョンが日常になった現代では学校を休む理由にダンジョン探索を使える。さすがに無限に何日もそんな理由では休めないが年に30日ならダンジョン探索を理由に休んでよしと法律で決められている。
因みにダンジョンへ行くと言って行かずに学校を30日間休む事も出来る、グレーな部分で公然の秘密となっているがわりと利用する人は多い。家族との旅行につかったりする。
そんなわけで半日ほどかけて10階層まできた、今日はこのボスを倒したら【野営地】内で休むつもりだ。体力的には夜も探索するだけの元気は残っているが急いでいる訳でもないしゆっくり攻略したいと思う。
事前情報が正しければ10階層はボス犬スケルトンが2匹にお供のスケルトンが5匹ほどらしい。
〝ショットガン〟の装弾数は8発。全て命中させれば問題ないし一発なら外しても大丈夫。
2発以上外すとアウトか。
Slug弾を〝ショットガン〟へ装填して〝ハンドガン〟は太もものホルスターに〝アサルトライフル〟は【空間庫】へ。
「まぁ行けるでしょ」
10階層のボス部屋の扉を開けていく、岩が擦れてゴゴゴと音を立てて扉が開いていく。
中へ入ると情報通りのボス犬スケルトンが2匹にお供が5匹。まだこっちには気づいていないようなので早速〝ショットガン〟を構える。
横を向いていたボス犬スケルトンの一体の頭を吹き飛ばし、もう一体は後ろを向いていたのでそのままお尻から頭まで一気に吹っ飛ばした。
ボスが倒されたことにきづいたお供がこちらを向いて走り出してくる。
「遅い遅い!お?ラッキーショットだ」
〝ショットガン〟から放たれた3発のSlug弾のうち2発がそれぞれお供スケルトンを2匹づつ一気に1発で倒していった。残った一匹は焦ることなくそのまま流れで撃って倒した。
「やっぱりスラグ弾だと威力が強すぎるなぁ、それに前より威力があがっている気がするが気のせいかな………?」
Slug弾が当たったお供の犬スケルトンは拾うところが無いほどバラバラになっている。しかもあの様子だと魔石までバラバラだろう、もったいない事をした。
ぴっ『経験値が一定値に達しました、レベルが10から11に上がりました。新しいスキルを習得しました』
「丁度良くレベルがあがったな、しかもスキルを習得したか!」
久しぶりにライセンスの指輪からの通知を見た気がするが気のせいだろう。それより新しいスキルだ、早速見てみよう。
名前:神薙 響 年齢:15
レベル:10 → 11
STR:18 → 20
VIT:10
AGI:17 → 20
DEX:55 → 95
INT:8
MND:7
≪スキル≫
<ユニーク>【GunSHOP】Lv:2 ▽
<上級>【空間庫】Lv:2
<スキルリンク>【野営地】Lv:1
<初級>【射撃】Lv:5 → 9
NEW<初級>【銃術】Lv:1 ▽
「お?おぉ………めっちゃDEXが伸びている………それに【銃術】か。見てみよう」
<初級>【銃術】Lv:1 ▼
Lv:1 【マハト】<1分間銃の威力が上がる>
「おーバフスキルかこれは使いやすそうだけれど、マハトってなんだ?調べてみるか………」
魔法名やスキル名は必ず何かしらの意味のある言葉で書かれている。どこかの言語をもじったものだったりそのままだったり色々ある。
「ドイツ語で力や威力をそれに女や権力も意味する言葉………か。う~~~~~んこれは痛い」
確かにね?好きだよ?こういったかっこよさげな名称っていうの?名前?言い方?いいんだよ?かっこいいし?好きだし?
けどなぁぁぁぁぁぁぁぁぁこれを使う時はマハトって言わないといけないんだろ?
恥ずかしすぎる。やだなぁ………………
「せっかく【銃術】覚えたのに………これはきつい、慣れるしかないのかなぁ」
まぁ折角手に入れたんだし使うのは使うけどさぁ~~~~~
「あーぁ、寝よ」
宝箱の中身を確認もせずに【空間庫】へ入れてドロップ品も適当に突っ込んでおく。そのままボス部屋を後にして11階層に降りてすぐ【野営地】内へと引っ込んでそのままマットレスベッドで寝た。
◇ ◇ ◇ ◇
昨日はふて寝に近い形で寝たが一日たてば多少スッキリしたのかせっかく覚えたんだしまずは使ってみようという気になった。
それによくよく考えればもっと痛い名前の技の人とかいるし気にするだけ無駄だと悟った。
因みにボスの宝箱の中身はスケルトンダガーが2本だった。地味においしい。
「さてと………何がでるかなぁ」
現在地は11階層。情報によればここから人型のスケルトンが出るらしいけれど。
「きたか、いつもと足音が違うのは人型だからか?」
いつもと聞こえてくる音が違うような気がする、人が歩いているような靴音がダンジョンの奥から聞こえてくる。音だけ聞くと割とホラー感が強いかもしれない。
「やっぱり人型か、それに武器と防具を装備してるのか」
武器と言っても棍棒だし、防具と言っても革鎧だが初めて見た。ただ頭は無防備なので一発撃てば大丈夫そうだ。
「取り合えず試しに一発」
〝ショットガン〟を構えて撃つ。
「ダメか」
いきなり頭を狙うのもどうかと思って胴体を狙ってみたが革鎧でかなり軽減されているのか少し骨が飛び散った程度で全然効いて無さそうに見える。
「【マハト】」
次は覚えたてほやほやのバフスキルを使ってみる、【マハト】を唱えると持っている〝ショットガン〟が一瞬ぽわっと光っておさまると銃がわずかに光って見える状態で落ち着いた。
これがバフがかかっているって状態かな?わかりやすくていいね。
「さて、もう一発………わぉ」
効果は劇的だった。さっきと同じ弾を同じ様に革鎧に向けて撃ったのだが、結果は人型スケルトンが粉になって散って消えた。
「これは………強すぎないか?」
もはやドロップ品が残るとかそういったレベルじゃない塵となって消えるので拾えるのが端っこの方の足とか手だけだ。当然魔石も塵となって消えている。
一分間という短い時間だが【マハト】はかなり強いかもしれない。
「これだけ威力があがるなら〝ハントガン〟か〝アサルトライフル〟のほうがよさそうだな」
後、何回バフが使えるか分からないが。使えるうちは〝ショットガン〟を使わない方がよさそうだ。
【空間庫】へしまっていた〝アサルトライフル〟を取り出して代わりに〝ショットガン〟をしまう。
「んじゃサクッと20階までいくぞー」
銃を持ち直して歩き出す。
◇ ◇ ◇ ◇
「うむ、いい感じ」
チャキンッと音がなりスケルトンが倒れて動かなくなる。
あれ?その音は〝ショットガン〟じゃないかって?〝アサルトライフル〟はどうしたんだよって?
うん、聞いて欲しいんだけれど。どうやら今の俺には【マハト】は一日に10回ほどしか使えないようだ。つまり一日に10分ほどしか最強になれない。休憩を挟めばまた別だが。
まぁお陰で?【マハト】って言うのに恥ずかしい気持ちを持つことは無くなったが。すくなくとも何時間も使える様な物でもないって事がわかった。
なので今は普通に〝ショットガン〟を使っている。〝ショットガン〟最強だわ。
〝アサルトライフル〟で戦っていると【マハト】毎回使わないといけないし、一日に相手できるのが10グループだけとか稼ぎが少なすぎる。
まぁつまり、せっかく【銃術】を覚えたけど結局は使わないで戦える方法がないとダメって事だ。それでもまぁ今後に期待してちゃんと【マハト】を使っていくつもりだけれど。
スキルレベルが上がるとバフ効果時間が伸びるかもしれないからね。
今いるのは20階層、最後のボス部屋の扉前だ。
道中を省きすぎだろって思うかもしれないけど。ずっと同じ景色で同じ敵で見どころが無いので省略だ。
一応言っておくと15階層のボスは人型の少し大きなスケルトンだった。Slug弾1発で終わりだったけど。
20階層ボスは15階層のよりさらに大きな人型スケルトンらしい。15階層のがスケルトンリーダーだとするなら20階層はスケルトンジェネラル。スケルトン将軍だ。
名前からして強そう。
バフスキルである【マハト】を1回分使えるように少し休憩してから20階層に挑むつもりだ。
どうやって回復したか調べるのかは何となく、としか言えない。感覚でわかるのだ、これ以上使えない、まだ使える、使えるようになったって。
このへんは感覚でしかないので言語化が難しい。
〝ショットガン〟には一応Slug弾を装填しておいて、ここに【マハト】も使って一気に決めるつもりだ。様子見で〝アサルトライフル〟でもいいんじゃないかと思うかもしれないが危ない橋は渡らない。
「む、きたか」
【野営地】内で草原に寝っ転がって休憩していると【マハト】を再び使えるような感覚を感じたので起き上がり準備をして外へ出る。
〝ショットガン〟にSlug弾が装填されている事を確認して20階層のボス部屋の扉を開けて中へ入る。
「でっかぁ………」
大きさは2メートルちょっとぐらい、鉄の鎧をきて片手剣におおきな丸盾まで装備しているからかめちゃくちゃ大きく見える。
入ってきた俺に気づいたのか鎧をガチャガチャさせてこちらを向いてスケルトン将軍が構える。待ちの体勢だ。
「銃相手にそれは悪手だろうに………【マハト】」
考えて行動するほどの知能は無いのだろう、構えたりしているがそれは本能に近いのかもしれない。
【マハト】を唱えてバフがかかった〝ショットガン〟を構えて撃つ。
撃った弾が構えていた丸盾に当たって金属をハンマーで叩いたような音が響きスケルトン将軍の体勢を大きく崩す。Slug弾が当たった丸盾は粉々になって飛んで行った。
「もう一発!」
2発目を正確に頭へと当てると大きな音を立ててスケルトン将軍が倒れた。
「やっぱり〝ショットガン〟最強!」
余裕で倒したように見えるかもしれないがこれはちゃんと準備した結果だ。強い弾を使いバフを使い、そこまでしてやっと余裕で勝てる相手だった。
ドロップ品であるスケルトン将軍の魔石と骨を【空間庫】に入れてから出現していた宝箱へ近づく。
「おーぷん!って鎧………?使わねぇ!」
宝箱から出てきたのはスケルトン将軍が付けていたような鉄の鎧だ。これがあたりかどうか知らないが俺には使えない装備なのでGPいきだな。
「はぁ………今何時だ?15時過ぎか……………ちょっとボス周回するか?」
まだ夜まで時間があるので少し周回してみる事にした、もしかしたら他に当たりがあるかもしれない。
「よっしゃぁやるぞー!」
気合を一つ、さぁ周回しよう!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます