マヤのお話

「今度はマヤ、キミの事を話してくれよ」

「私は人に話せるような事は何も無いわ」

「じゃぁ、市長、キミのお父様の事を話してよ」

 マヤは真面目な顔をすると、話始めた。

「私はお父様の事を、とても尊敬していますわ!」

「理想の社会を実現する為に、あらゆる努力を惜しまない姿勢は素敵だと思うの!」

「このまま行けば、きっと素敵な社会になるでしょう!」

「レンもそう思わない?」

 マヤは笑顔でレンに問いかけた。レンはぶっきらぼうに答えた。

「まだ、だいぶ先だと思うな」

「今は『白金族』が主導して『玄武族』を従えて改革を行っているが」

「これが『玄武族』と『白金族』が対等に話し合えるようにならないと……」

「まぁ! レンの意地悪!」

 さっきまで笑顔だったマヤが、膨れっ面でレンに向かって拗ねていた。

 真顔になったマヤは、

「お父様のしている事は、確かに素晴らしいわ」

「でもお父様の周りにいる人達は、あまり尊敬できないの……」

「彼らは打算的な日和見主義者で、信頼の置けない人達ですわ」

「いつかその人達によって、お父様が不幸な目に合わないかと心配しているの」

「汚職事件で失脚したのは前市長だけで、贈賄側の企業と収賄側の役人の誰一人も職を失っていないの」

「だから余計に心配してしまうのよ!」

 悲しそうな顔をしてマヤは話していた。

「マヤはお父様がとても大事なんだな」

「そうよ! 私はお父様が大好きなの!」

 これまでに無い素敵な笑顔で、マヤは答えていた。

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