ぐちゃぐちゃ具茶具茶

三国洋田

第1話 具入りの茶、略して……

 今日は、仕事が休みだ。


 のんびりしよう。


 うーん、なんか喉が渇いてきたなぁ。


 何か飲もうか。


 そういえば、この間、新発売の抹茶を買ったんだったな。


 確か『具茶具茶ぐちゃぐちゃ』とかいう、訳の分からん名前が付けられたヤツ。


 それをれてみようか。



 これは小分けにされた袋の中身をすべて湯のみに入れて、お湯を入れるだけで完成するようだ。


 とても簡単で、素晴らしいな!


 では、淹れてみよう。



 湯のみに具茶具茶ぐちゃぐちゃと、お湯を入れた。


 では、飲もうか。


 俺は具茶具茶ぐちゃぐちゃをひと口飲んだ。



 えっ!?

 な、なんだこの味は!?


 お茶漬けみたいな味がするぞ!?


 これはいったいどういうことなんだ!?


 俺は湯のみの中を見てみた。


 な、なんだとっ!?


 湯のみの中に、海苔のりとあられのようなものが入っているぞ!?


 こ、これはまさか!?


 抹茶ではなく、お茶漬けの素だったのか!?


 ちょっとパッケージを確認してみよう!



 えっ!?

 パッケージに『この商品は抹茶の中に具材が入っています。何が入っているのか、どんな味がするのかは分かりません。お楽しみに』と書いてあるぞ!?


 なんじゃそりゃぁっ!?


 妙なもの買ってしまったもんだな!?


 まあ、今更そんなことを言っても仕方ないか。



 うーむ、それにしても、このお茶漬けっぽいものは、塩辛くて飲む気にならないな。


 こいつは後で白米にかけて食べることにして、もう一杯淹れてみようか。


 俺は別の湯のみを用意し、具茶具茶ぐちゃぐちゃとお湯を入れた。



 はぁっ!?

 な、なんじゃこりゃぁっ!?


 突然、湯のみから、緑色の麺があふれてきたぞ!?


 ナニコレ!?

 こいつの具材は麺なのか!?



 これは食べられるのだろうか?


 食料品売り場で売っていたのだから、食べられるよな?


 どうなんだろう?


 まあ、とりあえず、食べてみるか。


 俺は麺を一本食べてみた。


 抹茶の風味がする蕎麦そばみたいな味がする。


 まあまあ美味しいじゃないか。


 だが、これだけでは、喉は潤わないなぁ。


 麺だけで、つゆはないし。


 仕方ない、もう一杯淹れてみるか。


 俺は別の湯のみを用意し、具茶具茶ぐちゃぐちゃとお湯を入れた。



 ええっ!?


 今度は抹茶色のカップケーキみたいなものになったぞ!?


 焼いてないのに、なんでこんなものができ上がるんだ!?


 謎の技術すぎるぞ!?



 さて、食べてみようか?


 うーん、ちょっと怪しすぎて、食べる気があまり起きないな。


 でも、まったく食べないというのも、なんだかもったいない気がする……


 ひと口くらいは、食べてみようかな。


 俺はカップケーキを食べてみた。


 うん、普通に、抹茶風味のケーキだな。


 ほど良い苦みと甘味で、まあまあ美味しいかな。


 だが、喉は潤わないな。


 仕方ない、もう一杯淹れてみようか。


 俺は別の湯のみを用意し、具茶具茶ぐちゃぐちゃとお湯を入れた。



 ……えっ!?


 今度は普通の抹茶になっただと!?


 具材は見当たらないな。


 どういうことだ?


 具なしもあるのかな?


 まあ、いいか。


 喉が渇いたし、飲んでみよう。


 俺は湯のみを持った。



「愚かだな……」


 ん?

 聞き覚えのない声が聞こえてきたぞ?


 それも湯のみの方から、聞こえてきたような気がする。


 なんだ今のは?


「愚かだな、人間……」


 ま、また湯のみから声が聞こえてきたぞ!?


 こ、これはまさか、具茶具茶ぐちゃぐちゃがしゃべっているのか!?


 そんなバカな!?


「どうやら驚いているようだな、愚かなる人間よ。我が名は『愚茶愚茶ぐちゃぐちゃ』 愚かであると発言する茶である!」


 ヤバい!?

 本当に抹茶がしゃべっているみたいだ!?


 なんだこの訳の分からんものは!?

 メーカーはなんでこんなものを作ったんだ!?


 しかも、名前が愚茶愚茶だと!?


 それって思いっ切り、ダジャレじゃないか!?


 ネーミングセンス最悪だな!?


 誰が名付けたんだよっ!?



 さて、こいつはどうしようか?


 さすがにこれは飲む気にはならないな。


 気持ち悪いし、捨てようか。


 俺は湯のみを持って、台所の流し台に向かった。



「おい、待て!? 貴様、我を捨てようとしているな!?」


「えっ? その通りだけど?」


「な、なんということだ!? 食べ物を大切にしろ!?」


「……君、食べ物なのか!?」


「当然だろ!? まあ、正確には飲み物だろうがな! 理解したのなら、さっさと飲み干せっ!」


「ええ…… 正直、こんな訳の分からないものを飲みたくないぞ……」


「貴様ぁ、何を言っているっ!? 我は見ての通りの美味しい抹茶だろうがぁっ!?」


「いや、どう考えても、しゃべる意味不明な何かだろっ!?」


「な、なんだと!? 許せん! 食べ物の怒りを思い知るが良いっ! 受けろ『超必殺究極奥義スーパーアルティメット爆発オチすぺしゃる』!!!」


「えっ……」


 突然、愚茶愚茶が白く光り出した。


 俺の意識はそこで途絶えた。



 そして、その日、地球は爆発した。

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ぐちゃぐちゃ具茶具茶 三国洋田 @mikuni_youta

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