嗚呼、コンタミネーション

「山下さん、培養は順調に進んでますか?」

ああ、先生。分かってはいたけど聞かないでほしかった。

「すみません。コンタミしてました」

「そうですか。またやり直して次はうまくいくといいですね」

「頑張ります」

「頑張るのは菌たちです」


・・・一週間後

「山下さん、培養はどうでしょう」

「すみません。またコンタミしちゃったみたいで...」

「分からなかったら長友先輩に手伝ってもらいなさいね」

「はい、私も菌も頑張ります」


・・・さらに一週間後

「山下さん、どうでしょう」

ああ先生。私のテンションの低さから分からないのでしょうか。

「またコンタミです...」

「そうですか。実験計画書も書き換えないといけませんね」

「はい、計画書も完成したら見ていただきたいです」

「もちろんです。頑張ってください」


・・・またまた一週間後

「山下さ」

「すみません。コンタミです」

「そんなに食い気味に言わなくてもいいでしょう」

「次は長友さんに手伝っていただきます」


・・・そのまた一週間後

「山下さん、今回は?」

「長友さんに手伝ってもらってなんとかできました」

「そうですか、良かったです。これで次からは一人でできますね」

「はい、だと思います」


・・・かれこれ一週間後

「先生すみません。一人でやってみたらコンタミしてました」

「はい、分かりました」


それだけ?

もっとアドバイスとか一言を言ってくれてもいいのに。



先生、その不気味な優しさと無言の圧で私の心がコンタミです。

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