第51話
七面鳥をコルジンとたくさん捕まえると、黄金の至宝を使ってマルコイとポルサに渡さないと……。今度はロッテと薬草を探す旅に出る。今度はキャサリンおばさんの火傷を治さないと。
けれど、七面鳥がついばんでいた草が薬草だった。ロッテは驚いて七面鳥をどかして前屈みになった。
「ああ、よかった。これでキャサリンおばさんを治せる薬が作れるわ。ヨルダンありがとう」
ロッテはいっぱい泣いたから青い瞳が真っ赤になっていた。
「僕もうれしいよ。これで、キャサリンおばさんを治せる」
そういえば、ハリーおじさんの事はどうしよう。ハリーおじさんはこの原型館から僕たちを閉じこめるようなことをした。そう……張本人だ。許してあげることは出来ないだろうか?
もし黄金の至宝を見つけられなかったら、きっとロッテやグッテン、そしてコルジンも原型館で死んでいたか暮らさなきゃならなくなっていたはず。うーんと、ことの発端はハリー・ザ・ショーなんだよね。そのショーでキャサリンおばさんが顔を火傷して、僕たちが原型館へと旅立った。それもキャサリンおばさんの火傷を治すためでもあった。そして、可哀そうなルージー夫妻に賞金の半分を渡せる規則を作ることだ。
旅はすごく怖かったけど楽しかった。それにみんな無事に帰れる。
ハリーおじさんの狂気を許す。それとも……?
でも、ハリーおじさんなら笑って済ますだろうか?
それにしても、あの二つのメモは……一体誰のもの?
「よし。これでこの旅行の目的は果たした。後は黄金の至宝で戻るだけとなる。ヨルダンくん。黄金の至宝を……」
グッテンは未だに涙目だが力強い口調だった。
「さあ。とっとと、一っ風呂浴びるか!」
コルジンが僕の手を取って、大浴場へと行く。ここはコルジンの部屋。あの後、僕たちはコルジンの部屋へと黄金の至宝を使って戻り、グッテンはガラス張りの館の端っこのことをポッテンとヘルタンに報告。ロッテは薬草を持ってトーマスおじさんと薬を作りに行った。
何だかんだで、トーマスおじさんは薬を無料で、キャサリンおばさんに処方するみたい。
僕たちの旅は無事に終わって、後はハリーおじさんに黄金の至宝を渡し、賞金の半分をルージー夫妻に支払う規則を作ってもらうことだけとなる。
「そういえば、おチビちゃんは大浴場は初めてなんだよな。泳いでみるかい」
「え。お風呂で泳ぐの?」
「そうだ。大浴場は大きいからな。泳ごうとすれば泳げるのさ。俺も昔は泳いでいたんだ。体を鍛えるためにな。絶対にあの太陽より強くなってみせるさ」
「コルジン……。うん」
僕は泳ぎに少しだけ自信がある。コルジンと競争するのはどうだろう? 大人も泳げるとしたらだけど。
「おチビちゃん。原型館へと行ってから成長したな。なんか大人になったみたいだ」
コルジンが僕の頭に手を置いた。
身長はそのままだけど……。
「そうかな?」
館の迷路を右へ左へ……ずいぶん久しぶりで、すっかり忘れてしまったみたい。もうコルジンの部屋やグッテンの部屋、それからロッテの部屋とかへは自分一人では行けないや。
大浴場は海を思わせる濃厚な青い色のドア。遥か遠くには濃厚な赤の女湯がある。
コルジンが青色のドアを開けると、目の前には幾本もの板で囲まれた川が流れていた。川は百メートルくらいの長さで、それが複雑な機械のある右側から下方へと水が落ちる左側まで八本あった。幅は大人一人は入れる。手前に服を入れる棚が幾つもあった。お風呂特有の湯気と匂いが漂う。こんなへんてこな館なのだから、さもありなんだ。
「これがお風呂?」
川へと入っている人が疎らのお風呂で、僕は首を傾げる。
「わははははは。そうさ。凄いだろう。風呂の流れはそれほどじゃないが、泳ぐときは流れに逆らうんだよ」
コルジンはあっという間に、白い長ズボンと白いワイシャツを脱ぐ。
僕もそれにならった。雲助は棚で待ってもらった。
「おい。ヨルダン。俺にも遊ばせろ」
本当にこの館への興味は尽きることがないんだね。
二人で、川のようなお風呂で流れに逆らって泳いだ。
……いい湯だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます