第47話 黄金の至宝

 木の香りが優しく鼻を包んでくれる。

 白と黒のドアの部屋。


 中央の植木以外は隅っこに机と椅子が置いてあるだけ。その机と椅子も木で出来ていた。その木の机には、メモが置いてある。

{私の生涯でたった一つのキラキラ光るもの……大切にしたい}

 そう書かれていた。

「木の匂いがとてもいいわ。この部屋にも多分、住人が居そうね。でも、居た……のかも知れない」

 ロッテは木の机の上のメモを読んでいる。

「こっちのドアへと行くのかい。気が付いたんだが特殊な亡霊が出たら、黄金の至宝を捻じって逃げるしかないのかい? おチビちゃん。さすがに俺でも特殊な亡霊は倒せるか解らないからな」

 コルジンが布袋を片手に濃い青いドアを指差した。

「そのようだな。特殊な亡霊に出会わないように祈るしかないよ」

 グッテンが呟く。

「絶対安全なところがあれば。亡霊に出会ったら一目散にその部屋へと移動出来るのに。それでも、亡霊がいなくなるまで、その安全な部屋で立ち往生……うーん」

 僕はこの黄金の至宝で館の亡霊対策を、グッテンとしないといけないことを実感した。

「そうだな。安全な場所……。例えばコルジンの部屋や私の部屋に行って、館の亡霊がどこかに行くのを待つしかないかも知れない」


 グッテンは黄金の至宝からの緊張から解放されだした。慣れてきたのだろう。

「そうだわ! 爆弾があるわ! 父は爆弾を幾つか持っているの!」

 ロッテはニッコリして言った。

「爆弾?」

 僕たちは驚いた。

「館は魔法が掛っているから壊れないし。亡霊だけが吹き飛ぶわ。父は医者だけれど同時に発明家なのよ」

「それは素晴らしい。この原型館の魔法なら耐えうるはず」

 と、グッテン。僕には爆弾がこの館にもあるのが意外なのさ。一体……普段は何に使うのかな?

「亡霊に出会ったら私の部屋へと行きましょう」

「凄いや。ロッテ」

「ヨルダン。爆弾って何だ?」

 雲助は爆弾を知らないようだ。

「簡単に言うと人為的に爆発をする物体だ」

「ふーん。人間は賢い」

 グッテンの説明に雲助は六本足の一本で僕の顔を軽く引っ掻いた。少し感心したようだ。

 僕はもう怖いものなしで旅を楽しめるんだな。そして、館の端っこ。きっとあるはず。そこにはどんなものがあるんだろう。

 僕たちはゆっくりと、大きい水の音がする濃い青いドアを開けた。

「こりゃ」

 コルジンと同じ気持ちに、たちまち僕たちは驚いた。


 目の前には広大な滝があった。滝は大きな部屋の天井から床へと流れて、滝壺を巨大な穴の開いてある床に作っていた。膨大な水飛沫が僕たちを濡らす。その水飛沫は滝の麓に虹を作りだしていた。

「凄いところね」

 ロッテは水飛沫に両手をかざして一時の涼を得る。

「向こうにはベージュ色のドアがあるぞ」

 コルジンも涼を得ながら言った。

「しばらくここで涼しんでいたい」

 ロッテが軽やかな口調でみんなを足止めした。

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