第45話
「あら、そうそう。みんなお腹が空いているんだったわね。ホクロがいっぱい付いた顔の人。その部屋にはおいしそうなお肉があるのよね。今から食べに行きましょうよ。ホクロの人は死んじゃったから、悲しいけど。あのお肉は貰ってしまいましょうよ」
ロッテの提案に僕も賛同した。だって、リグおじさんから貰った布袋の食糧は最早カラッポだし……。みんなお腹が空いている。
「そいつはいいや。じゃあ、早速黄金の至宝で一っ飛びだ。おチビちゃん、頼むぜ」
「私も黄金の至宝でどこかへと行ってみたいんだ。早速使ってみよう」
コルジンとグッテンは興味津津を顔いっぱいに表した。
僕は大得意に黄金の至宝を両手で捻じる。黄金の至宝はギュッと変形する。と、その前に……。
「雲助? みんなと一緒でも移動出来るの?」
「ああ。それは問題ない。でも、接触しないと駄目」
それを聞いて、グッテンたちが僕の肩へと手を置いた。ロッテも僕の肩へと、その小さい手を置いた。久しぶりに僕の心臓は不思議な栄養を貰い。高鳴りだした。
「じゃあ。行くよ」
僕は黄金の至宝を念じて捻じった。
周囲の館の壁や天井が目に見えて、グニャリとしてきた。僕の気分も何も見えない歪みの中に引きずり込まれて、途方もない興味と好奇心の連続が湧き出。次の瞬間、ドカンと心に穴が開いた。それは今まで体験した時がない爽快な気分だった。
次の瞬間。
「素晴らしい!」
グッテンが空を仰いだ。
目の前には、あのホクロの男性の部屋が現れる。肉の香ばしい匂いはより一層、僕たちの空腹を揺さぶり、みんなが一目散に皿を取って鍋に大きめのスプーンを突っ込む。でも、グッテンだけは上を見つめている。
窮屈なテーブルに座ると、みんながお肉に齧りついた。
数分で食べ終わる。
あれ、グッテンは食べてないぞ。
「黄金の至宝……これほどの物とは……」
グッテンは驚嘆して、僕の持っている黄金の至宝を見つめている。その顔は晴れ晴れとして、僕を暖かい気持ちにさせるものだった。
「グッテンも使ってみたら、気持ちがスッキリするよ。それに今度は食用栽培園へ行こう。グッテンも食べてないんでしょ」
「ああ。でも、今はお腹が空いていない。食欲なんてどこかに吹っ飛んだよ。本当に私が使っても良いのかい? それはヨルダンが見つけた宝物だよ。それに私は何だか緊張してきた。」
「まだ。これからも旅は続くんだよ。食べようよ。ついでに、リグおじさんから野菜を貰おう」
僕は緊張し過ぎのグッテンに黄金の至宝を渡した。
「何だかドキドキするな。こんなに緊張したのは生まれて初めてだ」
グッテンが黄金の至宝を念じて捻じる。
「うわーっ! って、あれ? リスヘルじゃないか!」
目の前にリグおじさんがいた。
リグおじさんはスコップを持って、土を掘っていたようで。今は驚いて立ち上がってスコップを盾のようにして顔を覆っていた。
「リグおじさん。こんにちわ! 僕、野菜がほしいよ」
「こんにちは!」
と、ロッテ。
「素晴らしい!」
グッテン。
「これは気持ちいいな。おチビちゃん」
コルジン。
みんなとくっついてリグおじさんの目の前に現れた僕たち。広大な食用栽培園はいつもと変わらずにあった。
「リスヘル。どうやったんだ」
驚愕な表情で僕を見つめるリグおじさんは目を丸くしたままだ。そんなおじさんに僕はニッコリしていた。
「簡単さ。これが黄金の至宝なのさ。これできっとキャサリンおばさんの火傷を治してあげる事が出来るはずさ。薬草は自力で取りに行かないといけないけど、もう館の亡霊に出会っても大丈夫になったんだ」
黄金の至宝を両手で持って放心状態のグッテンを指差した。おじさんはホッとして、スコップを地面に置いた。
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