第30話 

 僕はシチューは熱々で美味しかったことに喜んだ。そして、何と雲助もテーブルに降りて来てシチューの野菜に手を着けた。

「コルジン。美味いぞ」

 大きめのニンジンに噛り付きながら雲助が言った。

「私もこんなに美味しい野菜は初めてだ」

 そう言うグッテンの隣で雲助は食べていた……。

 さほど空腹ではなかったけれど、あっという間の食事を終えた。


 グッテンが一息吐いて、

「悪いね。図書館の案内はまた今度だ。それより、何時頃ハリーの旅行に行くのだい?」

「うーんと、すぐに行きたいから……明日にしようかな。明日は何かある?」

「何もない。いつも代わり映えしない館の研究だけさ。私が旅行へと行っても後の二人がやってくれるさ」

 僕はそういえばグッテンの他に二人いる学者が居たのを思い出した。

「そりゃよかったよ。俺も行ってみたいが……仕方が無いか」

 コルジンはせせこましい部屋で、食器を片づけながらこっちに声を発した。

「じゃあ。明日でいいんだね」

 グッテンは少しウキウキしている声を発し、部屋へと帰った。


 次の日。

 気分的に雲一つない大空が広がった。

「よお、おチビちゃん。朝だよ」

 タオルケットをどこかに蹴飛ばし、コルジンが僕を起こしてくれる。

「ふあ」

 僕は早速、ベットの布団の上の雲助を肩に乗せた。

 今日は旅行の日。

 一体どんな探検が出来るのだろう。どんなことが起きるのだろう。黄金の至宝とはどんなものだろう。

「朝食を作るよ」

 コルジンの声も耳に入らなかった。僕は旅行のことで頭がいっぱい・・・。

 朝食のハムサンドバーガーを食べたら、さあハリーの部屋へと出発だ。

 

 道中、三人とも緑のジャージ姿のグッテンたちに出会い一緒になる。

「研究の事はあの二人に任せたよ」

「任せて下さい。グッテンさん。」

 早口言葉の小太りが言った。

「彼の名前はポッテン。従兄弟だ。そして、もう一人はヘルタン。……従兄弟だ」

 ヘルタンと呼ばれた人物はどうやら必要なことしか言わない性格らしい。僕に「どうも」とだけ言った。その声も消え入りそうな声だった。

「きっと、もっとたくさんの人がくる。それだけ旅行は珍しいのだよ」

 グッテンが僕の脇へと歩いて来て言った。

「旅行から帰ったらたっぷりと土産話を聞かせてくれよ」

 コルジンが僕にウインクをした。

 

 僕は高なる胸の鼓動を聞きながら、通路を高揚した気持ちで歩いていると、黄色いドアからこっそりと、ピンクのワンピースといった服装のロッテが出てきた。

「父があなたと一緒に行った方がいいと言ったわ。館の奥から薬草を取りに行ってくれといったの。キャサリンさんはこの館では珍しい火傷を負ったから、その薬のために薬草がどうしても必要なの」

「え。そうなんだ」

 僕は耳を疑った。火傷が珍しいのは置いておいて、

「一緒に行っても良い」

「え。うん」

 素っ頓狂な声を出して頷くと胸の高鳴りは最高潮になっていく。

 ロッテと一緒に旅行に行けるなんて……夢みたいだ。

 

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