第26話
僕はコルジンとの話を頭の中で反芻する。しょうがない。……お金を分けてあげよう。僕はルージーおじさんにお金の話をすることにした。不思議と今のおじさんからは嫌な気分がしなかったのも事実だ。
まるで、嫌な気分だったのが数日前なのに、元気がでてくるし、遠い昔のように感じられた。
「あのね、おじさん。賞金のことだけど、僕はおばさんとペアだったから……つまり、一人じゃ出来なかったし、100万クレジットを半分こしようよ」
僕の少し考えを入れた発言に、
「いや、リスヘル。妻も無事だったし賞金はいらないよ。そのお金は君の自由にしてもらっていい」
ルージーおじさんは両手を摩って優しく言った。
僕はまた考えて言葉を選んだ。
「でも、おばさんは酷い火傷を顔に負ったよ。きっと治療費も必要だよ」
一口飲んだハーブティーが、若い草の匂いと苦みで口を満たす。
「妻はきっと……リスヘル。お金はこの部屋には必要ないんだよ」
ルージーおじさんが急に涙目になって、ちょっとごめんと言った。奥のルージー夫人の部屋へと逃げ込むように急いで歩いて行った。
その姿がどうも可哀そうで仕方が無いといった顔のロッテが、
「ねえ。こうしたら? お金のことをハリーさんに頼んで、つまり、ショーの規則から支払ってもらうのは? 例えば、クイズを解く人が途中で変わると賞金が半分半分になる。という規則をハリーさんにお願いするの」
ロッテは知恵を……僕のために絞ってくれた。
「すごい、君はとても賢いんだね。それなら僕は明日ハリーさんにお願いしてみるよ」
僕はちょっと苦いハーブティーを大口を開けて飲み込んだ。
「そうだ。それと、旅行のことはどうしよう?」
ロッテはまた小首を傾げてから、
「そうね。あなたはどうしたいの。旅行に行きたいの? それとも行きたくないの?」
「勿論。行くとも」
僕は部屋の奥のルージー夫妻も一緒に行くのだろうかと一瞬考えた。どうしても、僕は一人で旅行をしたい。もとい探検だ。
「ああ、ロッテ。旅行は僕一人で行けるようにしたいんだけど……」
ロッテは驚いて、
「この館の亡霊はどうするの。捕まったら殺されてしまうのよ」
「大丈夫さ。僕は死を恐れない」
奥の部屋でルージーおじさんがすすり泣く声が微かに聞こえてきた・・・。
「ふあーあ」
翌日、僕はハリーおじさんの部屋へとコルジンと一緒に出かける。今日は気分も爽やか。色々なことがごっちゃになってグッテンに図書館に案内してもらうのは無理になったのかな。
まあ、館の奥の探検をしてからでもいいか。
100万クレジットと書いてあるビスケットを持った僕は、コルジンと並んで館の迷路を歩く、雲助は何やら呟いていた。
「ごにょごにょ。中の中には入っちゃなんね」
「ここを左に行って。ここで曲がる。解ったかいおチビちゃん」
コルジンは僕に迷路になっている館の通路を教えてくれる。
「なんとか。あ、そこを右に行くのかな」
僕は何日間と歩くうちにおじいちゃんの館の迷路をある程度把握出来た。天使の扉やルージー夫妻の部屋、グッテンとコルジンの部屋へ行くための道を覚えてきた。
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