ダンス『ブレイキン』参加と美月を憎む女性


 「亮介先生、美月先生。『ブレイキン』、20人まで参加可能』ってチラシがあるんです」温泉小のカウンセラーでロンドン生まれのジル・ブライト・ミールがチラシを渡してきた。

 「『ブレイキン』?」「音楽に合わせ、色んな動きを入れて踊るダンスです」ジルの弟ジュード・フォレスト・ミールが答え、「ゴルバチョフは7歳でブレイキンのロンドン大会に参加しチャンピオンになりました」と付け加える。

 


 美容院の前に行くと、男子高校生たちが亮介に向かって手を振って来た。『ブレイキン』に入れたい動きについて本番まで全員で案を出し合い、亮介が一番手として踊ることが決まった。音楽に合わせて瞬時に止まる『フリーズ』も使い、床の上で飛び上がる。

 『Young Flowers』の一員で19歳のノーマン・ハイセムズィークにタオルを渡され、「フォー!」と歓声が上がった。



 美月の悲鳴に広場のほうを見ると、割られた花瓶が散乱している。爪と背中まである髪を橙と紫色に染め、金色のドレスを着た50歳の女性『ミーン』が美月の肩をつかんで路地へと向かうのを見たオータムが、亮介を背中に乗せ飛び上がった。

 

 倉庫に入ると、美月が体を起こそうとするのが見えた。床に座り込んだ美月に、優香とラジオ番組好きで17歳の新緑五月が駆け寄る。

 「その睡眠薬は、2錠服用すると激痛が起こる。田舎生まれの日本人め!」『ミーン』が両手に持った花瓶を3人に向かって投げながら大声で笑った。



 「こっちだ!」亮介は3人に向かって大声で呼びかける。倉庫の外で待っていたオータムが亮介と美月を背中に乗せ、カフェ&バー『月明かり』の前に来た。「ありがとう」と言って首をなでると、しっぽを回して亮介の顔をなめてからロンドン警察署へ戻った。



 美月は『カフェ&バー 『月明かり』の2階でシャワーを浴び終え寝息を立てていたが、亮介が丸い椅子に座って本を読んでいると「亮介」と小声で言い体を起こす。 

 湯気の立つミネストローネをカップに入れて美月に渡すと、雪かきを終えた弥生が2階に入って来て美月を抱きしめた。


 「『ミーン』は美月さんを憎み、『日本に帰れ‼』とロンドン警察署前で叫び続けてます。店内から出ないように」小声で亮介と美月に言い、弥生は睦月と通りへ向かった。



 ―――午後4時。積雪で動かなくなった車を、配達員の男性3人が押している。

56歳のサムと41歳のターナー、27歳の『ガラス割り』だ。元宝石強盗とスリ、薬物常習犯で、アニメ映画『Free!‐ the Final Stroke‐後編』(京都アニメーション)を観て更生した。


 5歳と3歳の女の子にフランボワーズのマカロンを渡すと父親と一緒に「Thank you」と手を振り、父親が車内からサムに笑顔を見せた。

 







 

 



 



 



 



 

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