第33話
「お帰りなさいませ! 坊ちゃま! 本日も大量の魔石、ありがとうございます!」
魔石を売る為、ギルドに入ると、ご機嫌なアイザックが出迎えてくれた。
「随分とご機嫌ですな、アイザック殿」
「そりゃあそうですよ! あなた様方をBランクに特例で昇格させましたが、此方は気が気でなかったんですから! しかし! 今では、あの隻眼の狼の三倍の魔石を納めてもらっています! いくら外に魔物が居ようとも、それを狩れる人が居なければ宝の持ち腐れ! 本当にもうフィンゼル様と親衛隊のおかげでこのギルドは回っているようなものですから!」
フィンゼル様と親衛隊というのは俺たちのパーティー名だ。
ネーミングセンスの欠片もない名前だが、マリアに任せたらこうなったのだからしょうがない。
「それでアイザック。頼んでいた物は見つかったか?」
「いえ、申し訳ございません。今、私の情報網をフル活用し探してはいるのですが……まだ網には引っかからず……」
「そうか。また何か分かったらすぐに知らせてくれ」
「畏まりました!」
俺たちは魔石を換金するとギルドを後にした。
「やはり、天剣ともなるとそう簡単には見つかりませんね」
「ああ。アイザックの情報網に引っかからないとなると、この国にはないかもな」
マリアはしょんぼりしている。
しかし、今はどこにあるかも分からない天剣より目の前の天剣だ。
俺はこの一年でE級まで階級を上げていた。あと2つ合格すれば光剣ライトセイバーは俺の物。
ちなみにマリアはD級だが明らかに手を抜いている。俺と手合わせする時は互角に振る舞っているが、魔物と戦うときの実力と完全に乖離している。
多分俺より先にCに階級を上げないようにしているのだろうが、俺に合わせなくてもいいぞと言っているのに聞かないのだからしょうがない。
ま、いいメイドを持ったという事にしておこう。
洋風の屋敷に着くと使用人とこの町を管理している騎士たちが出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ。フィンゼル様。今日もお手柄だったそうですね」
にこやかに話しかけてきたこいつはユージン・デフォー15歳。広間でギュンターを糾弾した女騎士イザベル・デフォーの息子だ。そんなデフォー一家は、アバディンとこの屋敷を管理する騎士だったりする。
その女騎士は奥で俺を、いやギュンターを睨んでいるが、どういう訳かユージンは俺たちに対して友好的だ。まぁ、ギュンターを責めること自体がお角違いだからギュンターを恨んでもしょうがないけど。
「ああ。ありがとう」
俺は軽くお礼を言うと。自室に向かう。
「今日はお疲れでしょう。自室でお休みになられますか?」
今日の予定はもうないし、いまから剣術の稽古というのも面倒くさい。
マリアにもう休むと返事をしようとすると―――。
「そういえば坊ちゃま。例の物が出来たと鍛冶屋のトルキンから連絡が入っているみたいですが」
「おお! そうか! 意外とは早かったな! よし。着替えて鍛冶屋に行くぞ」
ギュンターから連絡を受けた俺は、途端に気分が変わり、急いで着替えを終わらせ、マリアとルーナを引き連れ鍛冶屋に向かった。
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