ぐちゃぐちゃがやってきた!

あかつき らいる

ぐちゃぐちゃがやってきた!

 ぐちゃぐちゃがやってきた! つい最近、新発売された「うごくごみ箱」である。商品名は「ぐちゃぐちゃ」という。


 ごみ箱の形は木樽だ。ふたがない木樽には足が二本ついている。


 生ごみを捨てた。

「うーん、デリシャス」

 なんと動くごみ箱ぐちゃぐちゃがしゃべった。


 木くずを捨てた。

「燃やせばいいものを」


 ビニール袋を捨てた。

「えー、もったいない」


 折込のチラシを捨てた。

「ストレス発散にもってこいなのに」


 炭を捨てた。

「焚き火に使えば」


 ――などといろいろしゃべってくれることが分かった。しかも、離れた場所から「ぐちゃぐちゃー!」と呼ぶと「ぐちゃー」と返事をして、小走りに動いてくる。


 穴の開いた靴下を捨てた。

「つくろえばいいのにもったいなーい」


 ストレスを捨てた。

「リラックスできるといいね」


 を捨てた。

「すててどうするのだ」


 割りばしの袋を捨てた。

「資源に還元ー」


 バナナの皮を捨てた。

「土に埋めて大地へ返せばいいのに」


 魚の骨を捨てた。

「焼いてぼりぼりー」


 鶏肉の皮を捨てた。

「あああ。もったいなーい」


 ――理屈的なことも言うが、どうでもいいこともしゃべっている。


 ところでこの「ぐちゃぐちゃ」は、うけているらしい。高さは約45センチの縦型の木樽はペットが飼えない家では、ペットの代わりに一つある。いま、改良型のもあって、それは横型だという。


 卓上用も量産されている。卓上用には足が生えていない代わりに、転がってくるようで、捨てたごみを撒き散らかすのではという心配もあったが、その辺も考えて作られていた。

 

 不思議なことに捨てたごみは、入れてからほんの10秒ぐらいで煙となって消える。どうやって煙になっているのかは不明で、企業秘密らしい。


 不思議な点は他にもある。どこに目がついているんだろう? なぜ、ごみへの感想をしゃべるのだろう? など。


 使用済みティッシュを捨てた。

「ごみ箱へどうぞ。あ、ごみ箱でした」




 

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ぐちゃぐちゃがやってきた! あかつき らいる @yunaki19-rairu

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