第37話 元嫁vs嫁候補

まず動いたのはロモだった。

「にゃ!」


すでに10枚以上の手裏剣が、アカネに向けて放たれていた。


「ふふっ。良い動きね・・・子猫さん。」


「私の動きが見えたのかにゃ!?」


レベルを上げたおかげなのか、ロモの超人的な速さでさえ見切られていた。


アカネはニコリと笑う。

すると地面から鉄の壁が即座に現れ、それを防ぎ切る。

おそらくナノマシンの物質生成機能を利用したのだろう。


その鉄の壁に対してリンが手をかざす。

「閃光魔法!レーザー!」


次の瞬間、厚さ20cmはあるであろう鉄の壁を軽々と切断する。

以前戦った時よりもレーザーは輝きを増し、白く、細くなっていた。

側から見ると白い糸が舞っているようにしか見えない。

「死ぬだろあれ・・・・。」


アカネはそれを読んでいたのかうまく回避する。


「面白いわね。」

「もらいます!」


「!?」


その後、リンのレーザーは斜めに曲がり火花をあげながらアカネの右腕を切断した。


「すいません会長・・・ちょっとやりすぎました・・・。」


「大丈夫よ。リン、その調子で来て頂戴。」


次の瞬間、アカネの腕の切断面から煌く金属粉が放出されて、徐々にアカネの腕の形を成していった。

リンは余りの異様な光景に驚き戸惑う。

「何で!?」


「その程度じゃダメね、ここを狙わないと。」


アカネは挑発するように自分の頭を指差す。


「くっ!流石コウさんの元嫁様ですね・・・」


「次は私の番ね。」

アカネは切断された2つの鉄の壁目掛けてデコピンする。


爆風とともに鉄の壁が4人に向かって勢いよく吹き飛ぶ。


ナシェが杖を取り出し魔法を唱えていた。

「紅炎魔法!プロミネンス!」


爆音と共に炎の渦が出現し、飛ばした鉄の壁とアカネを包む。

「多分、まだ平気だよね・・・。」


すかさずモニカが煙の方に、水魔法で追撃をかける。

「ウォーターカッター!」


リンのレーザーのように圧縮された水流が煙ごとアカネを切り裂く。

「捉えました!!」


当たったであろう箇所から、人間らしからぬ音が響く。

「おい、メキメキいってるぞ・・・」


煙が晴れると余裕の表情のアカネが現れる。

「ふふっ」


「そ、そんな!」


次の瞬間アカネの背後からロモが現れ短刀で斬りかかる。

「これでどうにゃ!」


ロモが斬りかかろうとした瞬間、短刀とアカネのうなじ部分の間に金属の障壁が現れ、金属音と共に防がれた。

「良いコンビネーションね。」


「なら、これでどうにゃ!」


ロモはアカネの壁が発生していない部位を狙って次々と攻撃を繰り出した。

「にゃ!にゃ!にゃ!にゃ!」


しかし攻撃が当たる瞬間に次々と金属の障壁が現れてその攻撃をすべて防ぎきった。

次の瞬間、鉄の壁の隙間からリンのビームがアカネの額に向けて発射され直撃する。

「や、やりました!」


「優秀な後輩を持って嬉しいわ。」


リンはアカネの平気な声に驚く。


「な、なっ!」


直撃したビームの一点から先ほどのおかしな音がしていた。

それはアカネの鉄の壁がビームを防ぎながら消滅している音だった。


「な、ならば!モニカさん!」

「は、はい!」


二人は手をかざし魔力を込める。

「ビーム!」

「ウォーターカッター」


二人は100以上の魔法を複数展開しそれをアカネに向けて発射する。

アカネは手をかざし防ごうとする

「ふふっ・・・・!?」


アカネは痺れて動けなくなっていた、そして腕についた水滴を見てアカネは察する。

「麻痺薬ね!やるじゃない。」


ロモは連続して斬りつけながら、アカネの腕に麻痺薬を垂らしていた。

麻痺状態でも喋れるアカネにロモは驚く

「にゃ!?何で動けるにゃ?」


「ふふっ。深淵魔法、ダークコア!」


アカネの前に黒い球体が現れ、リンとモニカの展開した魔法の全てが次々と吸収されていく。


「あれは闇魔法じゃないですか!使える人は殆どいないのに・・・」


「そろそろ終わりかしら?」


次の瞬間5個の赤い巨大な魔法陣がアカネの周りを取り囲む。


「みんな!避けて!」


「これほどの魔法を展開するなんて・・・あの娘やるわね。」


激しい閃光の後に爆風と振動がコロシアム全体に伝わる。

俺なら当然即死レベルの攻撃を、軽々とやってのける幼馴染に驚く。

「てか・・・ナシェすごいな」


プロミネンスは破壊力重視の魔法で、当然そのリスクとしてイメージ力をごっそり持っていかれるため一つ発動するだけでも至難の技であった。

俺はその魔法を一度試しに使ってみたことがあるが、そもそも発動すらしなかった。


しばらくすると煙が晴れそこには鉄のドームが形成されていた。

そしてドームが崩れアカネが現れる。


リンとモニカは諦めて地面に座り込む。

「ダメですね・・・」

「無理だね・・・」


そしてアカネは呟く。


「久々に楽しませてもらったわ・・・ナノエクスプロージョン」


ボンッ!

4人の額あたりが爆発し寝るように倒れた。


「勝負あ・・り・・・!?」


なんと、次の瞬間アカネがフラフラして倒れた。

「アカネが倒れた!?」


俺はあまりの事態に理解できなかったが、恐らく協力してアカネを倒したのであろう。


「気絶してるのかこれ?」


しばらくして4人が目を覚ます。

起きたナシェとロモは手を握り合っている。

「いてて、やりましたねロモさん」

「にゃ!」


倒れているアカネを見つけリンとモニカは驚く。

「どうなったんですか・・・・えーっ!」


そしてコロシアムの奥の方から誰かが歩いてくる。


「誰にゃ!?」


「さすがね。」


そこには地面に倒れているはずのアカネの姿があった。


4人は何度も倒れている方と現れた方を見ていた。

「会長!?」

「えっ!?どういうことにゃ?」

「これってお化けですか!?」

「ふえええ・・・・」


そして倒れたアカネは砂のように崩れ消えた。


「ナノマシンで作った分身体ってことか。」

「えぇ。」


「二人ともどうやってアカネを倒したんだ?」


「加熱でアカネさんの体温を3度ほど上げたの・・・これならガードされないし・・。」


「私は一応起き上がったときのための保険にゃ!」

ロモは短刀を見せる。


「なるほど、人間って脆いんだな。」


アカネのガードでさえ貫通する魔法加熱は今後の奪取者討伐に有効かもしれないと考えた。


「ナシェちゃんの勝利って事でいいかしら?」


ナシェが何か思いついたようでつぶやく。

「そうだ、みんなの協力で勝てたから・・・当番制にしない?」


「いいのか?ナシェ。」


「うん・・・私だけ・・・なんだか悪いよ。」


やはり幼馴染はできた子であった。


「それがいいにゃ!みんなの協力あってこそだにゃ!」


「はぁ・・・・これから俺の家に誰か一人は来て一緒に寝るってことか?」


アカネがニコニコしながらつぶやく。

「それならいい方法があるのだけど。」

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