第33話 補給実習

アルドリア学園の屋上ベンチ


ナシェやリンたちに邪魔されずにものひろいで手に入れた膨大なアイテムの整理ができるので、最近ではここが俺の定位置だ。


アイテム欄を開き現状把握をしていく。

入手アイテムは50万種類ほどでアイテム総数は億単位となっていた。

無限収納がなければ押しつぶされて、死んでいたに違いない。


アイテムと言っても、この間手に入れたイージス艦などといった乗り物や建造物も含まれており殆ど把握はできていない状態だ。


「はー、今日もやっていきますか」


「知己、取り出しても安全性が高いものをランダムで選択後20個ほど取り出してくれ。」


「はい。承知しました。」


目の前にアイテムがゴロゴロと散らばる。

草から剣、巻物や本様々だ。


「まさに・・・悪しき文化(ガチャ)だな・・・」


一番に禍々しいオーブのようなものが目に飛び込んでくる。

俺はそれを手に取り呟く。

「知己、これは?」


「リッチの心臓ですね。」


「なんという・・・安全性とは・・・」


「効果は・・・・使用者の魂を封じる、となっています。」


「安全性とは!!!!」


「レアリティとしては高位ですが、転生特典ではありません。」


「そうか・・・危険物リストに追加。しまっておいてくれ。」


「はい、承知しました。」


禍々しいオーブが消える。

・・・といった感じで整理していくのだ。


この前はアイテムに擬態するモンスターを取り出してしまい。

それに動揺したナシェがプロミネンスを学園で放つ・・・という展開があり・・・結構大変だった。


安全性とは・・・。


20分後、特に何事もなく取り出したアイテムの整理が終わった。


「ふぅ。次はこっちか。知己、図書リスト表示。」


「はい。」


タブレット端末に保管されている学園の非公開図書500冊のリストが表示される。

その中の一冊・・・


ネコでも分かる製薬技術


前世のプログラミング技術専門書にそういう名前の本があった気がするが、

如何せん大学時代のプログラミング初心者時代に書店で見かけた程度なのではっきりとは覚えていない。


「知己これがそうなのか?」


「はい!513ページの応用編の項目にありました。」


「伝説の秘薬のレシピがいかにも初心者向けの図書の応用ページにねぇ・・・」


「この本の著者はプログラミング経験者と思われます。」


「それは俺も思ってるところだ・・・」


改めてその図書の表紙を見てみる・・・やはり見たことのあるネコがプリントされている。


「なになに・・・これであなたも薬師!ファイナルエリクサーのレシピ・・・エリクサーをベースとして60種類以上の材料がいるのか。」


「そのようです。」


「エリクサーなら、1万本以上在庫があるんだが、ファイナルエリクサーの代わりとして使用できないのか?」


「ファイナルエリクサーはエリクサーの効果と完全再生作用があり、代用は難しいと考えられます。」


「奪取者のときのような傷を止めることはできないということか・・・」


「そのようです。」


テウリアの奪取者との戦闘で心臓を貫かれ死にかけたのである。

そして300個ほどあったファイナルエリクサーの手持ちは現在25個だ。


「手持ちで作れそうか?」


「はい、ですが調合方法が不明です。」


「は?載ってるだろそんなこと・・・」



俺は一通りその図書に目を通してみるがどこにも調合方法が見当たらなかった。


「ネコでもわかるとは一体・・」


初心者入門書じゃないのか、それとも暗黙の了解的なやつか・・・

ならばとゲーム的な感覚でステータス画面を見てみる。

だが、どこにもそういったコマンドが見当たらない。


「ネコ・・・ロモ以下か・・・」


その猫はナシェたちと剣術を特訓していた。

「リン!踏み込みが甘いにゃ!」


「くっ!」


「コウ君どこいったんだろうね・・。」


突然ロモはくしゃみをする。

「にゃ?へっぷしにゃ!」


「ロモさん大丈夫ですか?」


「にゃ!コウのやつが噂してたにゃ!」


「わかるの?」


「乙女の勘にゃ!」


俺はふとあることを思い出す。


「知己、今日のスケジュールは・・・」


「はい、今日は薬学の実習があります。」


「ならなんとかなるかもな」


アルドリア学園ー調合室

前世の学校にある理科室によく似た教室にはフラスコのような道具やら干した薬草などが壁にかかっていた。

中には蛇を液体につけた瓶やら謎の獣の頭骨がありいかにも魔法使いという雰囲気をかもし出していた。

教師が黒板にスラスラと今日のお題を書いていく。


「今日は薬学の基本、回復薬を作ってもらいます。」


教師が見本として低級回復薬を出す。


低級回復薬か・・・手持ちに結構たくさんあった気がする・・・

俺はステータス画面を開き手持ちを確認する。


...

低級回復薬x879097

中級回復薬x560341

上級回復薬x234032

...



どれだけあるんだか、これ使いきれないだろ・・・


見ているうちに低級回復薬のカウントが3ぐらい上がった。

まぁ作り方が知りたいだけだからいいか・・・。

回復薬は俺とモニカを含めた5人の班で作成するようだ。


「よろしくなモニカ」


モニカは俺を見て微笑みながら呟く。

「は、はい。よろしくお願いしますコウさん」


俺は気になった蛇を液体につけた瓶やら謎の獣の頭骨を見ながらつぶやく。


「それにしてもあんな物も薬の材料になるんだな。」


「あれはただのお守りですよ?」


「え?薬の材料じゃないのか?」


「いえ、あれは昔から伝わる調合が成功しやすくなるお守りですよ?」


「マジか・・」


「昔の転生者様が世界中に伝えたそうです。」


それ胡散臭いな・・・


俺が考えていると唐突に教師がつぶやく。


「それではみなさん材料の薬草を出してください。」


(まじか・・・)


いきなりの指示で俺は少し焦ったが急いで手持ちから薬草を取り出す。

取り出した薬草を見てモニカがつぶやく。


「コウさん。そ、それをどこで?」


「え?もらった普通の薬草だが?」


俺は手に取って見てみる。

なんて事ない、モニカが用意した薬草よりも少し青々しいぐらいだ・・


「それ、良等級の薬草ですよ!」


モニカがすごく目をキラキラさせて見てくる。

あの地味な感じのキャラとは別人のようだった。


「そうなのか、良等級ってなんだ?」


「薬草には並、良、優があってそれぞれ作れる回復薬が違うんですよ。」


「なるほど、良だと何が作れるんだ?」


「中級回復薬ですね。」


「モニカはよく知ってるな。」


モニカが笑顔で照れる。


「えへへへー」


遠くからリンとナシェがこちらに視線を送って来ているが気にしないでおこう。


「これからどうするんだ?」


「まず薬草を細かく彫んで、すり鉢で潰してください。」


俺は包丁で薬草を彫み、すり鉢で潰していく。


「出来たぞ」


「終ったらこちらへ持って来てください。」


「あぁ」


モニカは水の魔法を唱え、すり鉢に少しずく加えていく。


「これは何をやってるんだ?」


「魔力が入った水を加えてるんですよ。」


どうやら薬草に魔力を加えることによって回復作用をあげることができるらしい。


「魔法水と呼ばれる物もありますが水魔法が使える人はこうやって仕上げるんですよ。」


「なるほどなー」



俺が感心して作業しているモニカの方を見ていると、モニカが照れ出す。

「そ、そんなに見られると恥ずかしいです・・・」


「頑張ってる姿も可愛いって思ってな。」


「う、うぅ・・・」


ガッシャン!


リンの班の方から何かが落ちる音が聞こえたが気にしないでおこう。



作業が終わると次は混ぜ合わせたものをビーカーで加熱するらしい、幸い各班に火特性の使い手がいる為問題ないようだ。

何となくだがコーヒーのドリップまでの作業に似ている。

20分ほどじっくりと加熱するようだ。


その待ち時間で俺は思い出したようにモニカに声をかける。


「モニカは薬学に詳しいな。勉強する機会があるのか?」


「はい。実家が薬屋をやっておりまして・・」


「なるほど。(であれば・・・)頼みがあるんだが・・・」


「は、はい。私でよければ!」


「俺(の薬製作)に付き合ってくれないか?」


モニカの顔が急に赤くなる。

「えっ!そ、そういう事ですよね?」


「??あぁそうだが・・・」


「わ、私頑張ります。」


「ありがとう。今日からお願い出来るか?」


「き、今日からですか!?ナシェさんやリンさん、じゃダメなんですか?」


「モニカにしか出来ない事なんだ。できれば早いほうがいい。」

なぜナシェやリンが出て来たのかが不明だが・・・まぁいいだろう。


「わ、わかりました。」


「じゃぁ今日モニカの家に行ってもいいか?」


「家で、ですか!?・・・は、はい!」



ボンッ!


次はナシェの班の方から爆発音が聞こえたが・・・・気にしないでおこう。

「け、煙が出てるぞー!」

「水魔法を頼む!」


しばらくして加熱していた水は深い緑色に染まっており、そこからペーパーフィルターを使って抽出する。

やはりドリップの作業に近い。

「なるほどなー」


「色からして中級回復薬ですね。」


さすが家が薬屋のことだけはあるようだ・・・・

そして無事回復薬作成は終わった。


作業の後半からロモがジト目でこちらを見ていたが・・・それも気にしないでおこう!

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