第3話 学園生活のはじまり

(とうとう俺も異世界チートで夢の、のんびり生活・・・なんて思ってたが現実は甘くないようだ・・・)

 

朝の日差しがまぶたを通過して目へと到達し脳へと起きろと信号を伝える。

俺は子供の体に違和感を覚え目を覚ます。


「待て、転生前よりも体が重いんだが・・・」


手足を少しずつ動かしベッドから脱出、朝食へと向かう。


炊事場では両親が魔法を使って水やら火を生成して炊事をしていた。


「あら、今日は授業でしょ。早く準備しなさい。」


(前世ではその言葉を自分の子供に言う前に死んだから複雑だ・・・)

 

誰もが人生で一度は言われるであろう言葉を久し振りに耳にし、

懐かしさを取り戻しつつも面倒臭そうに準備を行う。


(生活が転生前と変わらないんだが・・・社畜よりマシか・・・)


ーーー木の杖を取得しました。ーーー


「お、木製なら難なく使えそうだな」


準備を終えた頃、昨日一緒に遊んだ幼馴染っぽい女の子が家の前まで来ていた。


「コウくん~。早くー」


玄関を出て外に立っていたのはやはり某アニメのヒロインにそっくりな少女だった。


「おはよう。コウ君。」


「おはよう。しず・・・ナシェ、行こうか。」


「ん?・・・うん!」


少女は背中に杖を背負っておりこれから向かうであろう学園の教育科目を物語っていた。


(今日は魔法の授業かな・・・?)


朝のドタバタの中で持ち物に杖という文字が追加されたのを思い出し、歩きながら確認していく。


 (杖は・・・っと・・・!!)


持ち物

・・・

木の杖x1

ファイアースタッフx1

聖剣x1

・・・


探している文字を忘れさせるような文字がそこにはあった。


(なんぞこれ!?今から魔王倒しに行けってか・・・)


上に中盤で手に入りそうなアイテムもあり、完全に入手確率はレベル制ではなくランダムなことに気がつく。


冷静さを失いつつも、そのおかしな文字を二度見する。

(物語序盤に聖剣ってバランスおかしいだろ・・・・)


とりあえず冷静になりながら木の杖を持ち物から取り出し、何事もなかったように背中に背負い道を歩いて行く。


開けた大きな平野を見守るかのようにして多くの山々が見下していた。

前世の大都会の環境下では希少品であった、春のようにのどかな恵まれた気候の中で大自然を満喫することが出来ていた。


(聖剣は忘れよう!そうだ異世界に転生した目的はこれだったな・・・・。)



そう思っていると近くからスライムのようなモンスターが飛び出した。


(お!?きた・・・試してみるか?)

「モンスターだよ!!」


ナシェがとっさにモンスターから離れ、背中の杖を構え

呪文のようなものを唱える。


「あ・・・・!!」


(仕方ないな・・・)


ナシェは行動こそ早かったものの足元にあった小石で転けて尻もちを付いていた。


「いたーいよー」


少女はその場にしゃがみ大声で泣きわめく。

(ドジっ子属性持ってそうだなぁ・・・)


スライムはその声に驚いたのかどこかへ行ってしまった。


「大丈夫かナシェ。」


「コウ君、ごわがったよー」


ナシェはよほど怖かったのかすぐに抱きついてきた。


子供を慰めるように背中を撫でてやる。

しばらくしてナシェは泣き止んだ。

(これが父親なんだろうなぁ・・・・)


「もう大丈夫だ。ナシェ」


「ありがとう、コウ君・・・」


少し照れながらナシェはお礼を言った。


「行こうか。」


「うん・・・・」


それから少し経って魔法に関してナシェに聞いた。


「ナシェは魔法が使えるの?」


「お母さんに教わったから、火だけ少し使えるよ。」


「へー、教わったら使えるんだ。」

(そんな簡単なのか?)


「火をイメージして杖先に集中ーってやるとつかえるよ。」


「わからん。」


「えー」



しばらくすると立派な煉瓦造りの学園がみえてきた。

アルドリア王国という王国の領地内にあるアルドリア学園と呼ばれるところらしい。


この学園は魔法に力を入れていて生徒のレベルに応じて初等、中等、高等部に分かれているようだ。


教室に付いてからしばらくして教師が入ってきて講義を始めだした。

何気ない基礎的な授業だったが転生者の俺にとってこれほどありがたいことはない。



俺は初等部で魔法に関して基礎から学ぶようだ。


どうやら今日は魔法実習があるようで、授業の最初に教師が何やら怪しい石を取り出す。


「魔法は個々の適性があります。まずはこの石に触れて適正を調べてください。」


(お決まりの展開ってやつだな・・・)


どうやら魔法の基本は火 水 雷 風 土 光 闇の7種類の属性がありそこから複数の性質に分かれるようだ。


ぞろぞろと生徒が並びだす。

生徒がそれに触れると一瞬光って適性が瞬時に分かるらしい。


火 → 加熱 威力C 範囲D


前に並んでいたナシェは炎属性の中の加熱という特性らしい


待ちに待った俺の番だ。


雷 → 電磁力 威力E 範囲E


という文字が石に浮かび上がる。


(少し期待していたが性能がドジっ子よりも下だし、地味じゃね?)


「おぉ、これは珍しい。電磁力の適正はこの国には5人もいないのです。」


「そうなんですか?」


「えぇ、性能は低いですが能力の有用性を加味すれば貴重なのです。

 もちろん性能は努力によってあげることができます。」



それを聞いて周りがざわめき、人だかりの中からナシェがやってくる。


「すごい!コウ君!」


「ありがとうナシェ。でも性能があまり良くないから特訓しないとな」


「うん。私と一緒に頑張ろう。」


(まぁ元の世界で磁力使った兵器があったっけ。応用次第ってとこか。)


個人的にはあまり目立ちたくはなかったが、魔法適正が知ることができたのは大きかった。


しばらくすると大きなざわめきが上がった。

人集りを見ると教師が驚愕していた。


「これは!すごい才能ですね」


どうやら威力と範囲が最高のSを叩きだした生徒がいるらしい。

石に驚愕の性能が浮かび上がっていた。


 水 → 氷 威力S 範囲S


「威力Sと範囲Sの生徒はめったにいないのです。。」


「ロウウェル君やっぱすごいねー」


周りの女子がざわめきだす。


(過去に一人だけか、となるとあいつは魔法系の特典もらった転生者か?氷って如何にもチートだしな・・・・)


だとしたらロウウェルという生徒を用心しておいたほうがいいだろう。


魔法の適性診断が終わり、教師が教壇で呟く。


「適正と性能がいまいちだった方も落ち込む必要はありません。

努力で違った最高クラスの適正を身に付けた生徒も居たので、がんばりましょう。」


(そういうことも出来るんだな。)


「魔法を発言させるためにはイメージ力が大事になります。よって脳が集中できていないと発動させるのは困難となるでしょう。」


(さらっと超重要なこと言ってねえかこれ・・・)

つまり何らかの方法でイメージさせなければ魔法の発動を止めることが出来るということだ。


「魔法は使えば使うほど性能が良くなります。逆に使わなければ性能は下がってしまいます。」


(なるほど脳を使ってイメージするから仕組みが近いのか・・・)


次に実際に魔法を使って見るようだ。


教師の開始の合図で一斉に生徒が魔法を唱えだす。

俺も持っていた硬貨を手の平で浮かせてみる。


「イメージか・・・」


頭の中で硬貨が浮くイメージをしてみる。

静電気に似た感覚が走り、少し硬貨が動く。


(ショボすぎる。これは訓練あるのみ。)


隣のナシェはコップに入った水を沸騰させていた。


(こんなことも出来るんだな・・・)


母から教わったと聞いたのでおそらく日々使っているのだろう。

感心してその様子を見ていたらナシェがこちらに気がついたようで、俺と視線があった。


俺を意識しだしたのか、少し照れる。

すると、コップの沸騰が少しずつ収まっていく。


「えっ、わわわ・・・」


(なるほど、イメージ力って重要なんだな・・・)


「すごいなナシェは。」


「あ、ありがとう・・・」


問題のロウウェルを見ると周りが凍っているのに気がついた。

ロウウェルは手加減しているのであろう、つまらなさそうな顔をしていた。

(これがSレベルか・・・・性能は明らかだ)


どうやらこの世界には魔法名というものはなく、

適当な言葉とイメージを連結させることで性能の強化を図ることが出来るらしい。

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