右から来た隕石を左に受け流す方法とは

嘉矢獅子 カヤ

第1話少し話をしよう

 空が赤く染め上げた今、私、右空来海は考え続けている。


 『右から来た隕石を左に受け流す方法とは』


 今見ている皆さんには「そんな簡単なことを...」と思っているに違いない。ただ、私にはどうしても難解で、火曜日という高校生には貴重な休日をまるまる使ってしまうほど悩んでいることなのだ。


 みんなも想像してみて欲しい、ここに魔法少女が作った隕石がある。それを受け流せることが出来る人間は果たしてどれだけいるだろうか?私はまず、魔法少女の対義語である加齢臭のおじさんならできるのではないか、と考えた。


 しかし、加齢臭のおじさんは体が衰えてき始めているのだ。果たして、衰えてきた体に仕事や家庭で精神をすり減らした状態の人間が、若くエネルギッシュな魔法少女の隕石を受け流すことが出来るのか.........ここはあえて断言する、無理だろう。


 では、誰が受け流すことが出来るのだろうか?次に私は魔法少女のお母さんならできるのではないか、と考えた。


 確かに、魔法少女のお母さんも若い頃は魔法少女だったし、若い子にとって母という存在は絶対的な存在である。魔法少女が出した隕石に比べると親の癇癪のほうが怖いという人間はいるのではないか。


 いや、違うな。確かに魔法少女が出した隕石と母親の癇癪の威力が同じというところは認めよう。だが、私が求めているのは隕石を受け流す方法である。威力が同じだとよくて相殺されるだけで飛び散った分の後処理が大変になってしまう。


 確かに、相殺して砕け散るようにすれば目下の脅威はなくなるが、砕けた破片がどうなるのか.....工場などに落ちれば見る目も当てられないぐらい被害が出る。私は隕石を右から左へ受け流し被害を0にする方法を探しているのである。


 私の周りを包む影が大きくなり、タイムリミットを知らせてくる。あまり心配させてはいけない。私は頑張った母に電話で一言「ありがとう」と伝える。


 !?


 そもそも前提が違うのか?隕石を作る人は魔法少女だけではないかもしれない。例えば動画でよく隕石を出しているのは日本野球界の英雄サブローさんだ。大人から子供まで大人気ゲームのソケットモンスターなんて技に流星群がある。いっぱい隕石だしてるのである。


 これは一大事だ。隕石を落としている人が誰なのかを考える必要が出てきた。魔法少女が出す隕石はキラキラ型だろう。しかし、サブローさんが出すのはスピードと射程、威力がでかい型だ。ソケットモンスターは”群”つまり複数型と、隕石一つとっても様々な可能性が出てくる。


ああ、ああ......私はあふれてくる涙をこらえながら思考を続ける。


 これまで一からやり直すということはあってもマイナスの方向に進むとは思わなかった。


 では、始めに目の前の隕石を参考にして定義をしよう。大きさは直径で15kmの巨大隕石と仮定しよう。これであればたとえ魔法少女でも、サブローでも、ソケットモンスターが出した想定を考えなくてよいという利点があるぞ。


 ただ、問題なのは右から来た隕石を左に受け流す方法をつけだすことである。これまでの私は隕石を出した相手から対抗策を考えていた。しかし、隕石を出す相手が誰でもいいとなるとどうだろうか?なんと、受け流す方法を探し出すことができないのである!!


 これでは受け流すことが出来ないではないか......私はまだ、前提を間違えているのかもしれない。


ゴオオオオオオ、ゴオオオオオオオと音が大きくなっていく。


 スッーーーー、私はやはり天才だった。何も受け流すのは人ではなくていいのではないか?”受け流す”という言葉は”人”が使う動作のことを指すのが多い。だから私は”受け流す”のは”人”であると考えていた。しかし、現実はそうではない。


 例えば、人以外の動物や植物、そのほかにもモノの動作に対して比喩表現として使われることもある。つまり、ありとあらゆるものが隕石を受け流せるポテンシャルを有しているということである。


 世界よ聞いてるか?私が天才を超えた瞬間を、それはもはや神であるといって差し支えないのではないか。


 そして、私はある崇高な一つ結論を出した。忍者屋敷にある回転扉であれば受け流すことが可能ではないか......と.....。


 回転扉は回転扉にかけられた運動量が右にかけるほうが大きさければ右に回り、左が大きければ左に回る。この様、”受け流し”といっても過言ではないだろう。


 迫りくる隕石にでかい回転扉を用意しよう。そうすると回転扉に当たった瞬間に回転扉が回転し、隕石を受け流すことが出来る。


 うん、我ながらいい答えが出来たのではないだろうか?やはり私は天才だな。これでこの地球を救うことができるだろう。明日に....はノーベルさんが自宅にくるぞ、今からでも遅く....ないか....。




 そろそろ時間だしいくとするか。それではみなさんまた来世で。




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