美しいものをぐちゃぐちゃにするって快感…

タルタルソース柱島

エクスタシィィィーーーッ!!!

「ふふ、キミをぐちゃぐちゃにしたいな」

真っ白なシーツ、穢れなきその上で、キミを見下ろしながら僕はつぶやいた。

 月の光が差し込むなか、身動きのできないキミをとても愛おしく思う。

「さあ、僕を愉しませておくれよ」

囁くように雪のような白い表面に舌を這わせる。

 ほんのりスウィーティでひんやりとしている。


 僕の名は、朝倉ダヴィンチ。

 美しいものに目がない、自称“美のコレクターであり伝道師”。

 そして、美しいものをぐちゃぐちゃにしていくことにエクスタシーを感じるクレイジーガイだ。

 友人曰く「とんでもない変態野郎」、妹曰く「外に出したらダメな危険物」。

 とんでもない!

 美しいものを愛でたくなるのは、当然のことではないか?

 あとは、征服欲とでもいうのか? ビューティフルなものが、ぐちゃぐちゃになるのは興奮する。

 うん、僕は正常だ。


 さて、そんなことは置いておこう。

「キミからいい香りがするよ・・・・・・甘酸っぱい、初々しさっていうのかな? ふふふ」

僕の指がキミを撫でる。

 少しだけ弾力のあるそれの表面がうっすらと湿り気を帯びていた。

 早春の果実の香りがほのかにする。


「かわいいね」

僕はキミをなめ回すように見つめながらつぶやいた。

「さあ、そろそろ中を見せてもらおうかなぁ」



 ここからようやく本番だ。

 僕の心が高鳴る。

 秘められし内側が白日のもとにさらされるのだ。

「いやらしい音がするよ?」


 にちゃぁ・・・・・・。


 少し粘り気のある音がする。

 僕は少しだけ低いトーンで語り掛ける。

 きっとすごく気持ちいい顔をしてるのだろう。


 エクスタシー!!


「おや、おやおやおやぁ? 中にはかわいい桃が入っているねぇ」

指で押し広げられたそこには、きれいな桃色の―――。


 そのときだ。


「うっわ、きっも・・・・・・」

部屋の入口が開くと同時に、妹の美空がドン引きして後ずさった。


 ハッと顔を上げ、そちらを見やる。

 美空の栗色の三つ編みが廊下に消えていくところだった。

「ま、待てっ!」

マズいところを見られた!


 ベッドから飛び降りようとして、シーツが足に絡まる。

 プリンパフェが宙を舞った。

 これからぐちゃぐちゃにしようとしていたそれは、ベッドに落下するとストロベリーソースが飛び散る。


 まるで真っ赤な花が咲き、散ったようなありさまだ。

「エレガント!! いたいけな無垢なる花が散らされたような!!」

くう、感じる! 得も言われぬ快感を!


「おかあさーん? またお兄がベッドでスイーツを―――」

「達雄ーーーーーっ!!!!!」

僕の真の名を呼びながら、お母さんが地響きのような音を立て、階段を駆け上る。

 この数分後、僕のほっぺはお母さんの平手打ちでぐちゃぐちゃになるのだった。

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