ぐちゃぐちゃ闇鍋パーティー!

カエデネコ

ぐちゃぐちゃな日の闇鍋

 私達三人は保育園からの長い付き合い。腐れ縁だ。大学が同じ東京になったことで、さらに縁は続き、今では月に2回集まって、お食事会をしている。


 会社員のアカネ。保育士のミズキ。音楽教室の講師のオトハ。


 今日のメニューは『闇鍋』誰が言い出したんだっけ?誰だっけ?……というくらい適当な三人。


 ミズキが鍋に出汁を入れて、カセットコンロにかけながら愚痴を言い出す。


「彼氏に今週末、また仕事で忙しいって予定キャンセルされてさー」


 オトハはオトハで違う話をする。


「日曜に大雪警報出てたのに、どーしても欲しいお店のセール行ったら、閉まってたのよ」


 アカネも全く関係ないことを言い出す。


「親にさっさと実家へ帰ってこいって、また電話で言われちゃった」


 集まる理由なんてどーでもいいし、話もただ吐き出したいだけだから、どーでもいい。それがわかり合ってる腐れ縁の三人だから、会話がぐちゃぐちゃだろうが、どーでもいいのだ。


「持ち寄ったもの、見せ合おうよ」


 3人のまとめ役のアカネが言うと、机の上に並べだす。


 鶏肉、チーズ、餅、白菜、ニラ、エビ、大豆の水煮、豆腐、バナナ、ヨーグルト、チョコレート、ポテトチップス……!?


「誰よ!?このバナナとヨーグルトとチョコレートとポテトチップスって!?」


 アカネが叫ぶ。


「あっ!ごめーん、家にそれしかなかったんだもーん」


 オトハは悪びれることなく、笑うが、アカネとミズキは沈黙。


(そうだった。こいつはお菓子と酒で生きているんだった)


 二人の思考がハモり、同時に顔を見合わせてハハハ……と力無く笑った。


「でも持ち寄った物を入れるルールでしょ!?いれたらおいしーかも!」


 そう言われては、提案したアカネは反論できない。ミズキは良いわよ!やってみましょう!とヤケクソ気味だ。


 和風だしに溶けていくチョコレート、ヨーグルト……異様な匂いがする。


「食べてみよーっと。意外といけるかもー」


 オトハがデロンとした餅にくっついてきた黒い物体を一口食べる。……沈黙。


「マズイわ。コレ無理」


(誰のせいだろう)


 またアカネとミズキの思考はハモった。


 ぐちゃぐちゃしている鍋に箸を滑り込ませるアカネ。チーズと鶏肉これはいけそうだとミズキとオトハは見守る。


「うっ……汁がマズイ。スッパ甘いわ」


 後ろに倒れた。生きて!と笑いながらオトハがアカネを揺すっている。ミズキもそのリアクションに爆笑している。


「よーーーし!」


 掛け声と共に、ミズキはすくった!ニラとバナナ?ヤバイ組み合わせ。もう見ただけで無理とわかる!口へ入れた!


「…………っ!!」


 飲み込んだ!ビールにすぐ口をつけて流し込んだ!


 アハハ!と大笑いするアカネとオトハ。涙目のミズキ。


 二週目に行く勇気は誰もない。


「仕方ないわね。ぐちゃぐちゃすぎて食べれないわね。食べ物を粗末にしたくないし……」


 ミズキは冷蔵庫からカレールーを持ってきて入れた。部屋に食欲のそそるカレーの香りがしてきた。


「あっ!美味しい!!すごい!!」


 アカネの顔がパッと明るくなった。オトハもこれなら食べれると安心してお酒のつまみにしている。


「ぐちゃぐちゃした闇鍋がカレーの包容力でなんとかなったわね」


 ミズキが額の汗を拭う。


「でもぐちゃぐちゃ考えてた嫌なこと、笑って忘れられたわ!」


 アカネがそう言うと、オトハは二度としたくないけどねと付け足したのだった。


 

 

 

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