霧の如く 〜誰よりも強くなって好きに生きる〜

みなもとの源氏

第1話 プロローグ

 ≪氷霧こおりぎり


 グオォォ


 と巨大なオーガが肺を凍らされて動きを止める。やがて苦しみ、次第と動きをとめる。


「おっまたレベルが上がったな。しかしレベルに上限ってないのか? もうレベル200ってヤバいよな」


 一流のハンターでもレベル100にもなればS級ハンターとして世界の国から一目置かれるのに、すっかり人外の域まできちゃったようだ。


「あれから10年かぁ~。そろそろ人の食べ物も恋しくなってきたし、そろそろどこかの街にでも出るか。たしか街に入るときにステータス確認されるし忘れないように偽装しとかないとな」


名前:ライム【人間/男】(偽装) 

年齢:18

レベル:200(30)

体力 :30000(1500)

魔力 :150000(2000)

攻撃力:9000(500)

防御力:6000(300)

俊敏性:10000(600)

特殊スキル:霧【霧化・濃霧・氷霧・雷霧】(霧)

通常スキル:鑑定、鑑定偽造、収納、調合、解体(鑑定、収納、調合、解体)

戦闘スキル:魔法【火、風、水、土、無、光、闇、空】(火、風、水、土、無)

      剣術、盾術、威圧、体術、テイム(剣術、体術、テイム)

従魔 :キリングモンキー(キリ)


 家庭教師に聞いた記憶ではレベル30だとこんな感じのステータスだったと思うけど、一般的にはCクラスのハンターの強さってとこだな。

 レベル100を超えた辺りから数値の上がり方が半端ないからインフレ気味だけど、自惚れ抜きにして恐らく最強に近いんじゃないかな。

 なぜこうなったかって? 話すと長いけど‥‥‥。その前に。


「キリ! そこのオーガから魔石抜いて持ってきてくれる?」


 この賢い可愛いお猿さんは俺がテイムした仲間だ。テイムしたからスキルが付いたのか、スキルがあったからテイム出来たのかは、今だにわからん。そんなに頻繁にステータスは確認しないから。

 このキリは、一般的には集団で行動しAランクの危険な魔物と言われてるが、何より賢いし肩の上にのって毛づくろいをしてくれる最高の相棒さ。


「さて、これで1週間分くらいの食料も集まったし、一旦家に帰って日記でも書いてから街に向かおう」


 キキーっと全て言葉を理解してくれたように返事をするキリ。可愛い。


 


 さて、久しぶりに日記を読む。読み返せば読み返す程、現実に起こったことなのか俺自身も疑うくらい信じられないことの連続だった。


 そこまで人を恨んだり嫌ったりしない性格だったが、今世で人間の嫌な部分を見すぎて、すっかり根暗な人間となってしまった。

 この10年で少しはマシになったと思うが、今でも胸が締め付けられる。



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



 俺の前世は、雨隠雷霧あめがくれ らいむとして、日本の忍者が有名な地域に生まれ、普通の両親に育てられ、3流大学を卒業したのち、

思い出したくもないが、親戚の叔父に不意をつかれて‥‥‥。


 普通の家庭と言いたかったが、先祖は本物の忍者の家系のようで幼い時から父親に修行させられていた。にも関わらず殺された。理由は本家と分家の財産争いと。死んでからの事は


 とはいえ、大きな土地と財産を有していた本家である俺の父親とギャンブルで首が回らなくなった分家の叔父がよくケンカしていたことは知っている。

 俺しか子供がいなかった両親からすると跡継ぎがいなくなった雨隠家を存続させるためには弟である叔父に引き渡すしかなくなった訳だ。恐らく計画的な犯行なのだろう。そう思うと本当に申し訳ない気持ちになる。


 ここまで日記を読んで、改めて親不孝な自分を情けなく思い涙すると、キリが優しく抱きしめてくれる。

 しかし、こんな記憶があってまたしても今世でも計略にはまるとは、幼子であったとしても、もう少し警戒すべきだった。

 だからこそ次はない。そう思い研鑽に研鑽を重ね今に至る。

誰にも負けない力を持ち、自らの力で全てを取り戻す。



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


「旦那様!! 待望のご長男がお生まれになりました!!」


「そうか!! 男か?! これで我が領も安泰だ! よくやったリリー」


「ありがとうございます。うっ!!」


「なっ! どうした?! まずい! 教会からヒーラーを呼べ!!」


 本当の母であるリリーは俺を生んでアッサリ亡くなってしまった。

生まれた瞬間から前世の記憶があれば立ち直れなかったかもしれないが、良くも悪くも3歳のスキル覚醒の儀式まで、普通の幼子として生きていた。



「ライム! 今日で3歳となる。知っての通り教会で神よりスキルを覚醒して頂く重要な日となる。陛下より辺境を預かる我がオズワルド家として何としても良いスキルを得るよう願うのだ! 我が先祖のような剣聖であれば英雄となれるかもしれんぞ」


「ふん。わたくしが見たところ難しいと思いますわ」


 そう。早くに妻を亡くした父は部下からの進言で即座に後妻を娶った。

メッキ男爵家の娘で、我がまま放題の浪費家。そして俺に対しては当たりがキツイ。

いや、キツイなんてもんじゃない。それは2つ下の義理の弟が生まれてから、顕著になった。父もそれがわかっているのに、すっかり骨抜きにされているようだった。


「はい。まいにち神しゃまにおねがいしたので、いいスキルをもらえるとおもいましゅ。いってきましゅ」



「では、ライム・オズワルド様。こちらの水晶に手を置いて神に祈ってください」


「あい!」


 教会の部屋内が光に包まれて水晶に文字が浮かびあがる。


「出ました。うん? 霧? 聞いたことが無い特殊スキルですね」


「牧師! キリ? とはもしかすると良いスキルなのか?」


「ダメス様。聞いたことないスキルでございますので、一度広場で使用して頂きましょう」


「うむ。そうしよう。ライム。そのスキルを使ってみよ!」


「あい! きりぃー! うっ!」


 手のひらから少しばかりの≪霧≫が発生した。


 その瞬間、

 

 そこからの記憶はない。次に気づいた時には自室のベッドに寝かされていた。

まずは前世の自分と今の自分の置かれている状況を整理した。


「俺、殺されて転生したのか? くっ! あの叔父め。いやすでに今はライムとなったようだ。これが前世でよく読んだ転生ってことか。特殊スキルが霧。うわーどう考えてもまずいパターンだよな」


 なんて軽く思った事を今となっては、自分で自分を馬鹿だなって思うが‥‥‥


 コンコンっ


「ライム様お気づきになられましたら、ダメス様がお呼びでございます」


 独り言を聞かれたのか、扉越しにメイドが話しかにてくる。


「わかった。顔を洗ってすぐにいく」


 顔を洗うのに鏡を見て我ながら整った顔をしている。

メイドが言うには、金色に整った髪と青みがかかった瞳は母親に似ているようだ。

父親は赤身のかかった茶色と目も黒に近い茶色だ。





 さっきのスキルの事だと思うけど、父さんの執務室に向かう。

なんとか交渉して挽回のチャンスを貰おう。


コンコンッ


「はいれ」


「失礼します。あの。すいません。気絶してしまったようで」


「うん? 急に話し方が大人びたな。まぁいい。それよりお前のスキルで我が家は恥をかいた。ローズに至ってはカンカンに怒っておる。そのスキルは役に立ちそうにない。まだわからんがスキルによっては弟のボンズに領主を任せることになるだろう。せめて家の役に立つように今後は文官となれるよう文学に励め。以上だ」


 それだけ伝えて書類に目を落とし黙々と処理をしている。


「わかりました。失礼します」


 終わった。いやそんなことはない筈だ。

この世界は、3歳で神に与えられる覚醒スキルと通常スキルがある。

通常スキルは研鑽で得られる物と、で得られる物がある。

また、魔法に至っては基本の魔力さえあれば誰でもイメージで使える。

もちろん魔力量とスキル化するには修練が必要だが、流石は辺境伯といったところか、今までは家庭教師から学んで3歳になるまでにそれなりに基本属性は取得出来ている。

とにかく修練を積んで特殊スキルに負けない力を付ければ何とかなる筈だ。



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