食事中にぐちゃぐちゃ言うのやめなさい!

下垣

言うほど食事中にぐちゃぐちゃって音でるか?

「ぐちゃぐちゃ、でさあ、この前、ウチの友達がさ~ぐっちゃぐちゃ」


 目の前にいるこの汚らしい音を立てている奇妙な生物。それは俺の彼女だ。普段はとても可愛い。けれど、食事中のマナーが最底辺だ。


 食事は音を立ててはいけないと教わった俺は、口にものを入れて喋るこいつの神経が信じられない。というか、無理。生理的に無理。けれど、普段の笑顔は滅茶苦茶可愛い! 別れたいけど、別れたくない!


「聞いてる?」


「あ、ああ。すまない。青木まりこ現象の青木まりこって誰だよって話だよな」


 全く聞いてなかった。とりあえず、誤魔化しておくか。


「は? 今、絶対ウチの話聞いてなかったでしょ。それに食事中に便意の話をするなんてサイテー。食欲失せたわ。ぐっちゅぐちゃ」


 食欲失せたとか言いながら、ぐちゃぐちゃ食ってんじゃねえかテメエはよォー! どうしたら、そんな音出せるんだよ。くちゃくちゃならわかる! けれどよ。ぐちゃぐちゃはねえんじゃねえのか!


「それでさ、話を戻すけどさ、バッサバサ。ウチの友達がイナゴの佃煮食べたんだよ。そしたらさ、バッサバサ」


 今度はバッサバサ? どんな効果音してんだ。お前の口は。パッサパサならギリギリ理解できるが、バッサバサってなんだよ! お前の口の中でなにかが羽ばたいているのか? 口からニワトリが出んのかよ。


「ウチがイナゴってどんな味してんの? って聞くじゃん。スフォフォフォフォフォオ。そしたらさ、何て言ったと思う。スフォフォフォフォフォオフォ」


 スフォフォフォフォフォフォって何だよ。効果音が気になって話に集中できないだろ!


「コオロギと同じ味だってさ。ウケるー。お前虫食ったことあんのかよってツッこんじゃった」


「わー、おもしろーい」


 ちなみにイナゴの佃煮の食感と風味はサクラエビに似ているって聞いたことがある。じゃあ、俺はサクラエビ食うわ。


「お待たせしました。こちら蕎麦です」


「あ、はい。ありがとうございます」


 俺が注文した蕎麦が来た。さっそく食べよう。


「ずずずずずず」


「は? 蕎麦啜るのありえなくない? 海外ではそれマナー違反だよ。うわ。このグローバル社会に未だに麺類を啜る中世ジャップランド。滅べ」


 うん、こいつと別れよう。

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