宝探し

ニ光 美徳

第1話

 私の部屋には小人がいるー。


 何故そう思うのか。

 テレビの見過ぎ?映画の影響?UMAを信じてる?実際に見た?


 いいえ、少しは当たりで、ほとんどハズレ。


 日本で部屋の中にいる小人といえば、“借りてく人”か“おじさん”が有名だ。もちろん聞いたことはある。

 でも多分、それではない。


 私が一人暮らしを始めたのは、大学生になってから。始めの頃は気をつけて、部屋の片付けをきちんとしていた。

 でも、バイトを始めて、自由に使えるお金が増えるにつれて、私の部屋の荷物がどんどん増えていく。


 実家にいる時は、お母さんというありがたい存在があり、母の言う通りにさえすれば、自分で考えることもなく、簡単に片付けができていたので、まさか自分がこんなに『片付けられない人』だとは夢にも思ってなかった。

 むしろ私は“綺麗好きで片付け上手”だと自負していた。

 でも違ってたみたい。


 大学は実家からは遠く、お母さんは下の子たちの世話があるからと、私の所へは滅多に来ない。

 彼氏もいない。私の部屋へ遊びに来る友達すらいないので、片付けなくてもそこそこ平気なのだが…。


 最近困ったことに、探しているものが全く見つからない。

 急いでいる時や、それが無いとめっちゃ困る物に限って、絶対と言っていいほど出て来ない。

 探しても見つからず、思い付く限りの場所を何度も探すけど出て来ない。で、必要無くなったときにひょっこり出てきたりする。


 …ここ、探した筈なのになぁ。と思うことがしばしば。


 探している間は焦るし、目の前にあったとしても目に入らない。


 不思議だ…。


 私に霊感というものは全く無いけど、なんか最近感じるのです。


 きっと、ウチの部屋に出没する小人は、私のなのだと。


 ばあちゃんが生きてる頃、毎日のように「遊んだら片付ける!出しっぱなしにしない!元へ戻す!」と言われていた。

 

 実家にいるときはそれなりに出来ていたから近くに来てるなんて思ったこと無かったけど、ここへ来て、あまりにも酷い部屋の状態に、見るに見かねて出てきているのではないかと思う。


 私が慌てて物を探す時、その目標物に透明マントを被せているのだ。そして『片付けろ〜』と私に念を送っているのだ。


 全てが私の想像だけど、間違いではないと思う。


 …そうだね、私もそろそろ片付けなきゃって、毎日思っているよ。


 お母さんが言ってた通り、

①要らないものは処分する。

②同じ種類に分類する。

③置き場所を決める。

④見つけ易く、取り出し易く、しまい易いように工夫する。

ってすればいいんだよね。


でもね、捨てられないの。

私の部屋、ぐちゃぐちゃになってるけどゴミは無いんだ。必要無くなったものもない。

 それにね、たまに『あ!こんなの私持ってたんだ!ラッキー!』って、買ったの忘れてる物を見つけると、得した気分になるんだ。


 探す間も、その時はすごくイライラするけど、見つけたらホッとする瞬間も嫌いじゃない。


 そんな事言ってたらばあちゃんに怒られそうだ。分かってる。

 私は辺りを見回す。


 「ばあちゃん、ここにいるの?」

 誰もいないただの空気に話かけてみる。もちろん反応は無い。

 「ねえばあちゃん、小さい頃はさ、働いてるお母さんに代わっていっぱい遊んでくれたよね。いっぱい怒られもしたけどさ…。」


 そう独り言を言ってると、ばあちゃんとのいろんなことを思い出す。


 -しばらく思い出に耽ったら、私の気持ちが決まった。


「ねえばあちゃん、もう少しばあちゃん主催の宝探しに付き合って

だから、片付けるのやーめた!」


 私は、洗濯を取り込んだ服や脱いだ服、買った袋に入ったまんまの雑貨、雑誌やリモコン、ぐちゃぐちゃに散乱してる荷物の上に大の字になって寝転んだ。


 もう少し遊ぼっか。ねえ、ばあちゃん。


**おしまい**

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宝探し ニ光 美徳 @minori_tmaf

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