汚部屋の夢
おくとりょう
おかえり
ガチャン。
玄関扉の閉まる音。乱暴に靴が脱ぎ捨てられて、裸足の足がペタペタ歩く。きっと靴下はまだ靴に残ったまま。
足音が途中でピタッと止まった。短い廊下にかかわらず。同時に何か大きな音が響き渡る。ゴミの山でも崩れたのだろう。そう思って待っていると、居間の扉が軋んで開き、しかめっ面した部屋の
「缶詰タワーがまた崩れた。早く作り直さないと」
そう呟いて、棚の桃缶を乱暴に開けると、彼のスーツもつられて裂けた。真っ白な腹があらわになる。彼はそれを特段、気にもとめずそのまま缶をあおった。
澄んだ蜜が口の端からこぼれ落ちる。首をつたって、胸を流れて、たるんだ肉を
屋根裏ネズミが小さく
「ミルクを買うのを忘れてた」
缶が転んで星が溢れた。無駄毛の芝生を優しく照らす。土の毛穴が小さく震え、フナムシたちが顔を出す。
「
お尻が
「虎の穴はここですか?」
チーズの牛は黄色を舐め舐め、首を傾げる。紫の角がコロンと落ちた。お尻の皮はニチャっと
「父はやっぱり牛がいい」
屋根裏ネズミのしっぽが叫べば、主はようやく靴下を出す。鼻をつまんで、つまみ出す。臭いそれを
主はヨレヨレ上着を羽織って、いつも通り扉を閉めた。ネズミも星も尻もいない。朝日の射し込むワンルーム。
さてさて、僕は誰でしょう。
汚部屋の夢 おくとりょう @n8osoeuta
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