変えたい自分

狐付き

合戦部

 高校入学したら何かを変えよう。そう思ってわざわざ遠くの学校でひとり暮らしを始めた。

 部活も入ろうと思った。中学のときはなにもしていなかったし、大体面倒だった。

 そういうのもやめようと思う。なにか熱中してみるのも悪くない。


 でも運動部は厳しい。あいつらは基本、小学生のころからやっているだろうから、今からどうにかできるとは思えない。努力すればとか言ったって、あいつらだって努力しているんだから、追いつけるとは思えない。だからといってずっとベンチというのも嫌だ。折角だからレギュラーとして戦いたい。


 同じ理由で吹奏楽とかもきついな。あれは文化部という名の体育会系だ。

「どっかいい部活ないかなぁ」

 思わず口から出てしまった言葉。すると隣の席の短髪が目を輝かせてこっちを見る。

「部活探してんのか!? じゃあ俺と合戦部に入らねえか!?」

 なんだこいつは。そして物騒だな。

「嫌だよ、なんか怖い」

「運動部だったら怪我くらい普通だし、まあ一度見てみようぜ」

「具体的にどんなか教えてくれないか?」

「ことの起こりは10年前、学校の敷地縮小の問題が出た」

「ふむふむ」

「そこで、無駄に敷地が広い乗馬部と弓道部が目を付けられた」

「なるほど」

「両方の部活は勝負して決めようとなった。そして流鏑馬部が出来た」

「何故」

 いやわからんでもないが、普通に合併したとかじゃないのか。

「そんなあるとき、部室を巡って剣道部と槍道部が争いを始めた」

 なんだ槍道部って。薙刀部じゃないのか。

「そこへ流鏑馬部の矢が飛んできて、剣道部のヤツに当たった」

「酷い被害だな」

「矢じりはついてなかったから軽傷だったんだけどな、それで怒った剣道部のヤツらが、槍道部と結託して流鏑馬部に殴り込んだ」

「めちゃくちゃだな」

「そうなると黙っていられないのが武将部の連中だ。軍配を持って乱入してきた」

「ちょっと待て」

 武将部ってなんだよ。

「こうなったらもう合戦部を作るしかないだろ?」

 だろ? とか言われてもわかんねえよ。ぐちゃぐちゃだ。

「そんな部、漢なら入るしかねぇだろ?」

「入りたくねえよ」

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変えたい自分 狐付き @kitsunetsuki

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