思考。
三愛紫月
ループ
頭の中を整理しようと頑張っても、追い付かないぐらいのスピードで物事が展開する。
昨日、飼っていた犬のルージが亡くなったばかりだというのに、今朝、母から父が亡くなった連絡を受けた。
それだけでも、頭の中がぐちゃぐちゃなのに……。
父の所へ、向かう私に妻の
「これは、今ではないだろう?」
私の言葉に芽衣子は、「今だからです」と答えた。
(ふざけるのもいい加減にしろ、長男の嫁が父の葬儀に妻を連れてこないなどあり得ない事だ!)
喉元まで、出かかった言葉を飲み込んだ。
「お義父さんの葬儀には、きちんと参列しますから」
芽衣子の言葉に、どこか私は安心していた。
「それなら、構わない」
そう言って、私と芽衣子は、新幹線に乗って、父が住む街まで行く。
子宝に恵まれなかった私と芽衣子にとって、愛犬ルージは息子同然だった。芽衣子と私を繋ぎ止めてくれていたのはルージだった。
頭の中を必死で整理しながら、新幹線の窓から流れる景色を見つめていた。
思考は、いまだにぐちゃぐちゃで散らかっているままだった。
(何故、芽衣子は離婚をしたいと?)
芽衣子に突きつけられた離婚届の映像が、頭の中をぐるぐると回り続けている。
新幹線は、トンネルに入る。
外の景色は遮断され、中の景色が窓に映される。
「め、芽衣子」
私は、隣にいるはずの芽衣子を見る。
「どこに行ったのだ?」
父の葬儀に参列すると言った芽衣子の姿がどこにも見当たらないのだ。
「芽衣子、芽衣子」
私は、新幹線の車両をくまなく探したけれど……芽衣子を見つけられなかった。
ボストンバックを取って、新幹線を降りた。
母からのメッセージで、父は自宅に帰宅した事が入っていた。
駅を出ると雨が降っていた。
私は、タクシーに乗って実家に向かう。
タクシーを降りて、実家に入ろうとした、その時だった。
「……。中野芽衣子さん、殺害容疑で逮捕します」
思考。 三愛紫月 @shizuki-r
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます