ぬいぐるみ使いの魔女

黒鉦サクヤ

ぬいぐるみ使いの魔女

 ぬいぐるみ使いの私は、いつもぬいぐるみと一緒。

 私の大切な子たちだから、私はひと針ひと針丁寧に仕上げる。一つとして同じ子はいない。みんな可愛い私の子。

 今日も新しい子を作るために、テーブルの上に材料を並べる。布と綿、目となるボタン。糸と針も必要ね。

 そして、忘れてはいけない大切なものが、魂一つだ。

 一つの人形に一つの魂が入っている。魂の形は材質や色もすべて違うため、探すのも一苦労なの。でも、この過程を怠ると反抗心のある子を選んでしまうから、私はこの選別に一番時間と気力を使う。

 さて、今日はどの魂を使おうかしら。

「そうね、人形作りに興味がありそうなあなたにしましょう」

 私の言葉に反応し、細かな点滅を繰り返す魂を手に取る。この子はとても探究心に溢れていて元気がある。まだ小さい子どもだったのかしら。魂売りのおすすめ品だったけれど、指示も聞かず動き回るだけの子は要らないわ。

 だから、ちょっとした細工を行うの。

 魂に傷をつけ、私に縛り付ける。でも痛みを与えるのは私の主義に反するから、甘い毒を与えるの。私以外、信じられなくなるように、時間をかけて毒を浸透させていく。

 あなたには私だけよ、と深く魂に刻み込ませるの。これが、従順なぬいぐるみを作る秘訣。

 魂が甘い毒に堕ちたら、布で作られたボディに綿と魂を詰める。私の可愛いぬいぐるみがこれでやっと完成する。仕上げに踊ってみてと声をかけると、愛嬌のある顔をしたクマのぬいぐるみは綺麗なワルツを踊った。

 ご褒美に、と私はぬいぐるみを抱きしめる。その間に、周りには羨ましそうに見上げるぬいぐるみたちが集まっていた。皆、私に抱かれるのが好きなのね。

「あら、もちろん皆のことが好きよ」

 優しい笑みと甘い言葉で、今日も私はぬいぐるみたちを手懐ける。

 さてと、と私は一部始終を見ていた、本日二体目となる魂に手をかける。

「さあ、次はあなたの番よ」

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