エリート冒険者のヒ・ミ・ツ
夕奈木 静月
第1話
「今何か隠したよな、お前? またラブレターか!? いいよなあ~モテる男はよ!」
違う。ラブレターならまだいいんだ。
俺がこの脳筋冒険者仲間に隠し通さなければならないものとは……、ぴよ子ちゃんって呼んでる……このひよこのぬいぐるみなんだよっ!
ぴよ子ちゃんとは、生まれた時から一緒なんだっ! 魔法科幼稚園に通ってた時も武術小学校に行ってた時も、ずっとずっと同じ時を過ごしてきたんだ。
「さっきから何を小声でブツブツ言ってんだ、お前? 熱でもあるんじゃないのか?」
や、やめろ、やめれ! 近づくんじゃない! ぴよ子ちゃんが汚れるっ。この子は穢れなき天使なんだ!
はあ~、どうして今朝に限ってこいつは俺の部屋にわざわざ起こしに来たのか。
今からぴよ子ちゃんをお風呂に入れてあげようと思ってたのにぃ~。待っててね、ぴよ子ちゃん? 今この邪魔者を駆逐するから。
「なあ、やっぱりお前おかしいぞ……。ニヤニヤしてさあ……」
「そ、そんなことはない。エリート冒険者として当たり前の朝の修行の一環だ」
「自分でエリート言うなよ……。そんなだからお前、彼女できないんだぞ」
「こ、このラブレターの山を見ろっ!」
「ああ、確かにな。お前はモテる。でもそれは付き合うまでの話だろ? 実際付き合って一週間続いた女の子なんて一人もいなかったろ?」
「ぐう……。こ、これからどうなるか分からないだろっ!?」
「なあ、まずは隠し事をやめろよ。俺たちもう何年も同じパーティーでやってんだ。俺を信用しろよ。お前がどんな趣味を持ってようと、受け入れてやるからさ。さあ、何隠してるんだ。吐いちまえよ」
「うう……。ぴよ子ちゃん……こいつに君のこと紹介していいかな?」
「ぴよ子ちゃん?」
「こっ……このぬいぐるみの事だよっ!! 文句あるか!? 俺はぴよ子ちゃんが大好きなんだっ!」
翌日、宿屋で目を覚ますと、俺のパーティーメンバーは全員消えていた。
エリート冒険者のヒ・ミ・ツ 夕奈木 静月 @s-yu-nagi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます