私に似たぬいぐるみ

富升針清

第1話

「よう、兄弟。今からバザーパーリィーでも?」


 期限の過ぎた書類を片手に髭の男が、ウサギやクマの可愛らしいぬいぐるみで溢れかえるダンボールを抱えたシルクハットの男に声をかけた。


「やあ、兄弟。バザーパーリィーは今月末だ。そしてその書類は先月末だ」

「おっと、失礼。その段ボールと私の書類でも入れ替える?」

「担当ではないので、結構だ」

「それは残念。それで、バザーでもしないのにそのぬいぐるみどうしたの?」

「こら、触るな触るな」

「いいじゃない。私、こうみえてもフワフワのぬいぐるみ嫌いじゃないの。私にも劣らないピンクのウサギの可愛さよ。どうだい? 私たち似てるだろ? そういえば、ピンクのウサギなんて人間見たことない癖にウサギにピンク塗りがちなのなんでだろ?」

「可愛いからじゃないか? 子供はウサギでもなんでも可愛いものにピンクを塗りがちだろ。特に女の子は」

「神はフラミンゴが可愛いと思ったてコト?」

「立体が過ぎる。最早職人の領域じゃないか」

「何言ってんの? 彼らがピンクなのはエビとか赤い色素が含まれてる餌を食べるからだよ」

「神の色塗りからの色素の話は振り幅が大き過ぎる。さ、そろそろそのウサギちゃんを返して仕事に戻りたまえよ」

「おや? あんた、今なんだったて? 何にちゃんだって? もう一回行ってみてよ!」

「仕事をしろ、このちゃんちゃらおかしいクソのろま悪魔野郎。君の上司に言いつけてやる」

「そんな事、一言も言ってないだろ!」

「仕事しろの一言は言っただろ」

「違うよ、そこじゃない」

「会社的にはそこだよ」

「会社の話は一度やめよう。考えると辛くなる」

「元カノだったか?」

「まだギリギリ別れずにお金貰ってるから、元じゃない」

「とんだヒモ野郎だ。会社に早く別れろと助言しておくよ」

「そんな簡単な話じゃないよ、恋人たちの別れ話ってのはね。それこそ、私とこのぬいぐるみみたいに離れられない関係なんだ」

「何を言っているんだか。どうでもいいが、早くそのぬいぐるみ返してくれないか? 君と違ってこちらは暇ではないんだよ」

「返したんだけど、このぬいぐるみの山は一体なんなの?」

「ああ、そう言えば言い忘れていたな。このぬいぐるみたちは悪魔召喚のために消費された鶏とか人間の魂を入れてるぬいぐるみだよ。中々嫌がらせみたいな呪物になってきたから、本日廃棄処分だ」

「え? てことは、私の手からこのぬいぐるみがとれないのも?」

「立派な嫌がらせ呪物じゃないか」

「こんな利益も何もない嫌がらせある!?」


 シルクハットの男は少し考えると頷いた。


「ああ、確かに。そんなところが似ているな」

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