第21話 伊集院博士によるレポート

 私は大江戸島での事例に端を発し、それ以降すぎやまめつこ杉山滅子に関して生物学の観点から色々調べてきた。


 先ず私が驚いたのは、周期的に訪れる彼女の驚異的なその身体能力についてだ。


 普段はどこにでもいるような十代の女子と身体的特徴は変わらない。

 いや、体力面ではそれよりも僅かに劣るだろうか。


 だが花粉が飛び始める春先から初夏までの間に、少女は豹変する。

 身体構造はそのままに、物理法則を無視した怪力を得るのだ。


 そんな彼女の前にはあらゆる兵器も意味をなさず、あらゆる壁は障害になり得ない。

 正に文字通りの無敵と言える。


 次に私が驚いたのは、その精神性である。

 普段の彼女は、可憐な空気を纏った華奢な女の子であり、性格は大人しく、学業に勤しんでいた時期は男性からも行為を持たれることが多かったと聞く。


 そして最近驚くべき事が判明した。

 なんと彼女の身体は、豹変する度に老化がリセットされているのだ。


 厳密には豹変したタイミングでは無く、元の状態に戻った際、若返っている。

 そのメカニズム、原因は全くの不明ではあるものの、憎き人工林を消滅させた事による快感と解放感が起因すると考えるのは、《いささ》些か情に過ぎるだろうか。

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