第2話 過ちの記録

 第二次世界大戦。

 最悪の戦争事例。

 思い上がった我々ヒトが、みずから犯した罪である。

 そして周知の通り、日本はこの争いに敗退した。


 終戦直後、日本の土地は空襲の影響で焼け野原に……。

 物資もなく、食べ物もない荒廃した風景が広がり、日本には暗いムードが漂っていた。


 当時国を立て直すための建材や物資となる木材の確保は急務であり、政府は農林省と協力し、日本全国にスギを植えた。


 スギは日本固有の種であり、幅広い用途に使える加工しやすい木である。

 更に荒廃した土地に植林する緑化運動や、高度経済成長における住宅建築により、木材の需要は高まった。


 それを受け当時の政府は、有効活用する方法が色々ある上、自然環境に影響を与えないであろうと判断し、戦後である1945年から20年余りの間にスギを全国に植えた。


 そのため日本は森林の約4割が人工林となり、更にその4割はスギとなることに。


 確かに高度経済成長はスギによって支えられた面もあっただろう。

 しかし我々は、花粉症に悩まされる事になった。

 その数は年々増え続け、平成20年度には国民の48%にまで増加。


 それ以後も花粉による被害は留まる事を知らず、更に海外から安い木材を仕入れることでスギの人工林は放置される事に。


 とは言え一気に切れば水害や山地崩落の危険性もあっただろう。

 そのため人工林とはいえ環境に与える負担を考えれば放置せざるを得ない。


 それでも花粉による被害を抑えようと《りんやちょう》林野庁は少花粉スギ146品種、無花粉スギ6品種、少花粉ヒノキ58品種の開発に尽力していた。


 振り返れば、当時の我々は重大な存在を見落としていたのだろう。

 花粉症の割合を数値でしか判断せず、その中に紛れていたヤツの存在に気付けなかったからだ。


 ヤツは、花粉症の根源を日本全土に植え付けた我々に、想像を絶する恐怖を植え付けた。

 その名を記すことにすら、私は恐怖に震えてしまう。


 恐怖の象徴。

 破壊の化身。

 ヤツの名は──《すぎやまめつこ》杉山滅子。


 現在、スギやヒノキは彼女によって、今や滅亡の淵にある。

 2XXX年3月に日本自然保護委員会は緊急事態宣言を発令。

 それを受け、国は防衛費を投じ、【対S特殊捕獲部隊】の設立を余儀なくされる事となる。


 これから書き記すのは、そんな我が国に起こった出来事のインタビュー記録である。

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