注文の多い赤ずきん —第六夜—

 六日目。


 とうとう、心臓を食べることが許された!

 しかも、生きたままの心臓だ。


 赤ずきんは例のごとくわざわざ服を切り裂いて、胸元を大きく開く。


 そして、あらわになった美しく柔らかい胸にぶすりとナイフを突き立て、引き下ろす。

「肋骨は噛み千切っちゃだめよ。ちゃんと砕いて。」と言われたので、そこにあったハンマーで丁寧に処理していく——これは食事なのか大工仕事なのか……妙な気分だった。


 やがて遂に、心臓が姿を現した。


 小屋中に、少女の命そのものの臭気が立ち込める。

 素晴らしい熱量と、鼓動。鼻づらで感じているだけで、頭がくらくらしてくる。


 私はそれをナイフでそのまま切り取った。

 にもかかわらず、心臓はいまだに鼓動を続けていた。

 それは私の手の中で湯気を立てながら、どくどく、どくどくと鮮やかな赤色を吐き散らす。


 私はその熟れた果実に、そのまま思い切りかぶりついた。


 うまい。うますぎる——これが、生きたままの心臓か。

 うますぎて、涙が出てきた。


 赤ずきんは、「そんなにおいしいの?」と小馬鹿にするように聞きながらからからと笑った。

 私は無限にあふれ出る血をごくごくと飲みながら、できるだけ時間をかけて心臓を食べた。

 そのせいで、食べ終わった時には体中が真っ赤に染まっていた。当然、湿って重くなった自分の毛をちゅうちゅうと吸い取ることも忘れなかった。


 しばらくしてみると、赤ずきんはもう息をしていなかった。

 死ぬ瞬間を見るのは初めてだった——長くとどまりすぎたようだ。


 明日が、最後の日——思えば今までよく、我慢できたものだ。


 明日が、最後にして、最高。


 期待と名残惜しさが入り混じった奇妙な感情と共に、私は小屋を後にした。

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