全焼の行方

不可逆性FIG

第1話 戦え!

 えーと、俺は生ひとつと、お前は? ああ、あとファジーネーブルも。それと、たこわさ、ヤキトリ四種盛り。え、チョレギサラダに、山芋のふんわり焼きも追加で? ええ、以上で、どーも。

 ──さっきから、野菜とか甘いもんばっかで腹ァ膨れてんのかよ。

 ほーん、まあお前が良いなら別にいいんだけどな。俺としちゃ、そんな細っこい身体でちゃんと栄養足りてんのか……って、今じゃセクハラになっちまうな、すまんすまん。


 しかしなんだってまた、キャリア組のお前が巡査あがりのしょぼくれたおっさんと毎度毎度、酒を飲んでるんだか、俺にはさっぱりわかんねえよ。……え、先輩だからってか? そりゃ、二十半ばの子からしたら、親くらいの世代だろうし先輩かもしれんがよぉ。ははん、これは何かウラがあるな、長年培ってきた刑事の勘が囁いてるぜ。

 まあ、そんなん本当はどうでもいいんだけどな。俺はよ、知識や教養なんかはお前に負けてるが、経験だけは無駄に積んできてるから色んな話持ってるんだよ、今日もそういうのが聞きたいんだよな。

 わーったって、そのキラキラした目すんのやめろ。表情の読みやすい刑事がいてどうすんだよ、まったく……。

 じゃあ、今日はちょいと善悪とは何か、市民と街の安全守るってのは何かを考えさせられたあの日のことを話そうかね。忘れたくても忘れられないんだ、ずっと引きずってんだよ、今でもな。

あれはそう、大捕物みたいなこともなく地味で面白くもねえ事件だったがよ────


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る